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【パパ研究レビュー⑤】ポストコロナこそパパの「働き方改革」

こんにちは!高橋あいです。

noteで男性の子育て記事をよく読むようになり、興味がわいたので「パパの子育て」に関連する調査や論文のレビューをすることにしました。興味深い知見について、【パパの子育て・研究レビュー】と題して、noteに書いています。

今日はパート⑤「ポストコロナこそパパの働き方改革」です。

最近では、仕事と同じように育児を大切にしたい、という男性が増えています。にもかかわらず、パパたちの育休取得率の低迷や、長時間労働問題など、理想と現実のギャップはなかなか埋まっていきません。

ただ、コロナの影響で多くの企業が在宅ワークやオンラインツールの導入などを急激に進めた(進めている)今、パパたちの働き方がここから変わっていくのではないか?!と思うのです。そんなわけで、今回は「パパの働き方改革」をテーマに書くことにしました。

もしよろしければ、
パート①「パパ特有の育児ストレス
パート②「父親アイデンティティの危機
パート③「シングルパパの嘆きと悟り
パート④「パパの幸福感を左右するのは仕事?家庭?
こちらも、ご覧ください!

※【パパ研究レビュー】は、5本書くことを目標にしていたので、ひとまず今回で一区切りにして、今後は不定期に書こうと思っています。
これまで読んでくださった方、ありがとうございます!

パパたちのワークライフバランスの実態

いま日本では、共働きで子育てをする家庭の増加や、親の介護問題などにより、働く人がそれぞれの事情に応じて多様な働き方ができるようになることが強く望まれています。
実際に、正社員で働く人の約6割は「今よりも働く時間を短くしたい」と考えています⑴。

長時間労働の是正は「働き方改革」の最重要課題でもあり、国や企業等で様々な施策・取り組みがされてきたことから、長時間労働の人の割合は、近年徐々に減りつつあります。

ただし、30代と40代の子育て真っ盛りの男性に注目すると、週60時間以上働く人の割合が全体の2割弱を占めており、依然として高い水準で推移しています⑵。

週60時間って、5日勤務に換算すると毎日12時間労働。そんなに働いてたら休日は休まないと身体もたなそうですし、子育てとの両立なんて、とてもじゃないけどできなそうです。
乳幼児の子どもがいるパパたちに帰宅時間を尋ねた調査で、約4割のパパは21時以降であると回答していることからも、パパたちは日常で子どもと関わる時間がほとんどとれないことがわかります⑶。

このように、長時間労働が是正されない状況は、「仕事のために家族との時間がとれない」という、パパたちの葛藤(=ワーク・ファミリー・コンフリクトというを強めることも明らかになっています⑷。

ちなみに、勤めている会社の規模(従業員の多さ)が大きければ大きいほど、パパの帰宅時間は遅くなる傾向があることがわかっています⑶。
大企業のほうが、一般的には子育て支援制度などが充実しているにもかかわらず、実際には早く帰宅しにくい現状がある・・
そこに、長時間労働問題の本質が隠されています。

参考文献
⑴原ひろみ・佐藤博樹(2008)労働時間の現実と希望のギャップからみたワーク・ライフ・コンフリクト 家計経済研究 79, 72-79
⑵厚生労働省 (2014) 年間総実労働時間の推移
⑶ベネッセ研究所(2009)父親のワークライフバランスの実態
⑷中川まり(2015)共働き家族における夫のワーク・ファミリー・コンフリクトと妻の相対的資源 : 12 歳以下の子どもをもつ夫の性別役割分業意識を媒介とした利益仮説モデル 生活社会科学研究,22, 17-30

日本の労働時間はなぜ減らないのか?

実は、長時間労働問題の本質は、政策や法制度といった「見える」ところだけでなく、社会規範や企業の慣行など「見えにくい」ところにこそあるのです。

以下の論文から、長時間労働がなくならない原因とその対策について引用しつつ、詳しくお伝えしていきます。

引用文献
小野浩(2016)日本の労働時間はなぜ減らないのか? : 長時間労働の社会学的考察 日本労働研究雑誌,677,15-27

◼️原因①「コミットメント」や「忠誠心」に対する高評価
個人の成果がわかりにくい仕事では、結果や成果などアウトプットよりも、組織へのコミットメントや忠誠心などインプットの方が観察しやすくなります。労働時間が長いほど昇進する確率が上がることを報告した研究もあり、上司など周囲に自分の努力をアピールするために、長時間労働などインプット偏重の働き方が定着しやすいといえます。
➡︎対策
アウトプットを評価する制度(成果主義)を導入する。全てを成果主義にすべきということではなく、一部でも客観的な指標による評価を取り入れられないか?と検討する姿勢は必要だと思います。

◼️原因②「残業=美徳」という社会観念
ある調査では「残業している人」のイメージとして、「頑張っている人」「責任感が強い人」といったポジティブイメージが最も多く、「仕事が遅い」「残業代稼ぎ」などネガティブなイメージを大きく上回っていることが明らかとなっています。
日本人は「頑張る」ことへの異常な執着があり、結果を出すことよりも、むしろ努力すること自体が美徳とされる傾向にあります。そうした職場環境においては、定時に帰宅することや有給休暇・育児休暇を取ることがマイナスに捉えられてしまうという弊害があります。
➡︎対策
生産性×時間管理を意識した働き方への転換により、短い時間で結果を出すことに評価が与えられる制度を取り入れる。部下の残業を管理職のマイナス評価にする。

◼️原因③「付き合い残業」
仕事が終わっても職場の雰囲気を気にしたり、上司が残っているから帰宅しない社員が少なくない、というのは、集団意識が強い社会ならでは。「早く帰るのは皆に申し訳ない」という考え方から発生する「付き合い残業」は日本特有の現象とされています。
➡︎対策
長時間労働の是正に取り組み、みずから働き方のモデルを提示する上司を育成する。

◼️原因④「暗黙の契約」による職務内容の曖昧さ
契約時に職務内容が明示されている欧米の雇用関係(ジョブ型雇用)と異なり、暗黙の契約(メンバーシップ型雇用)がされる日本では、職務内容は曖昧です。会社からの命令であれば従わなければならず、頼まれたら断りづらい空気があるといえます。
➡︎対策
仕事内容の明瞭化と分業体制の確立をする。そのことで、仕事ができる人や快く仕事を引き受ける人にばかり負担が集中するのを防ぐ。

※ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の解説については、こちら(外部サイト)でわかりやすく解説されていました!

◼️原因⑤男女間性別分業
高度成長期を契機に、定着した性別分業が、女性の就業率が高くなっだ現代でもいまだに根強く残っています。上司から当たり前のように性別による差別発言をされるという話もきかれます。
➡︎対策
仕事を属人化させないために「暗黙知」を「形式知」にする(マニュアル化を進める)。育児休暇を取りたいのに取れない最大の理由は「代替要員がいない」こと。男女関係なく、その人がいなくても業務が回る仕組みを普段から作っておくことが、残業を減らす上でも有効。

と、ここまで、パパ世代含め働く人たちの長時間労働を助長している要因と、その解決策について解説しました。

でも、よく考えると、このうちのいくつかは、テレワークの導入が進むと問題にならなくなっていくのではないでしょうか?

コロナによるテレワーク推進で、長時間労働は解消される?!

コロナによる外出自粛によって、多くの組織でテレワークの導入が急激に進んでいます。

前の章で紹介した論文では全く触れられていませんでしたが、実はこの「テレワーク」こそ、長年解決されなかった長時間労働を減らす鍵を握っているのではないか?!と個人的には思うのです。

例えばテレワークでは、日中働く姿をお互いに見ることができません。そのため「今日は何をしたのか」という仕事の成果について、普段以上に明確に言語化することが求められるようになっているのではないでしょうか?

残業で自分の努力やコミットメントを示すことができない分、上司や同僚から評価されるためには、何かしらのアウトプットを示す必要性が高まります。そのことで、自然と成果主義への転換が図られるように思います。

また当然ですが、上司や同僚と同じ空間で働いていないため、「付き合い残業」は問題にならなくなります。

そして、そばに上司がいないので、終業間際に引き留められて業務を無茶振りされる、というような事態も、おそらく対面より減るのではないか?と思われます。

さらに、小さい子どもが同じ家にいる状況では、「いかに短い時間で生産性を上げるか」というインセンティブがはたらき、必然的に生産性×時間管理を意識した働き方への転換がなされます。

このような理由から、今回テレワークの導入が加速したことによって、長時間労働や残業問題が是正される方向に進んでいくのではないか?と思ったのでした。

(※わたし自身テレワークをしているわけではないので、もしも実情と違う、というご意見などありましたら、ぜひ教えてください🙇‍♀️)

まとめ

◻︎30〜40代の子育て世代の男性の長時間労働問題はなかなか是正されない

◻︎長時間労働問題の本質は、社会規範や企業の慣行など「見えにくい」ところにある

◻︎コロナによる急速なテレワークの導入によって、長時間労働問題が解決に進む可能性がある

読んでみて、いかがでしたでしょうか?

仕事に打ち込んでいる姿が「頑張ること」や「男らしさ」の象徴であるとされる社会では、長時間労働は是正されないし、「仕事によって家庭に時間がとれない」というパパたちの葛藤も解消されてはいきません。

もちろん、テレワーク導入によって「仕事とプライベートの境目が曖昧になる」「誰かに業務が過集中していても周囲が気付きにくい」などのデメリットも考えられますし、対面で働くことの良さもあります。

でも緊急事態宣言が解除されたらまた元通り、となってしまっては、何も進歩がありません。

テレワークの導入云々というより、ポストコロナでは
「仕事をきちんと片付けて定時に帰宅する」ことが「真の格好よさ」であると評価される、そんな社会になってほしいと、心から願っています。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!

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サポートありがとうございます!今回は、普段あまり読まないタイプの論文のレビューにもチャレンジしました!お役に立てて、とても嬉しいです😊


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