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【パパ研究レビュー②】父親アイデンティティの危機

こんにちは!高橋あいです。

noteを始めてから、男性の子育て記事をよく読むようになり、興味が湧いたので「パパの子育て」に関する論文のレビューをすることにしました。

興味深い知見について、【パパの子育て・研究レビュー】と題して、いくつかnoteに書いていこうと思います。

今日はパート②「父親アイデンティティの危機」をテーマに書きます。
パート①「パパ特有の育児ストレス」もよかったらご覧ください。

このnoteは、以下の論文の知見を基に書いています。
▪︎山下・石田・加藤(2018)父親アイデンティティを規定する要因に関する探索的検討 十文字学園女子大学研究紀要,49,13-25

父親アイデンティティの獲得過程

アイデンティティとは、"「これこそが自分自身である」といった実感(心理学用語集から引用)"です。
子どもの誕生に伴って、男性も女性も、親としてのアイデンティティを獲得し、自分らしく子育てに取り組んでいくことが望まれます。

しかし、第一子の場合は特に、急激な生活環境の変化や慣れない育児に直面して「この子はこれで大丈夫なのだろうか?」「自分がしていることは正しいのだろうか?」などの不安が先行して、「自分らしく」なんてとても言っていられないのが現実。

(ちなみに、ママの育児ストレスの主たる感情は「イライラ」ですが、パパの育児ストレスでは「不安・心配」の感情が大きいといわれています(*))

育児や家事など家庭内の調整だけでなく、仕事を早く切り上げて帰宅するなど生活習慣の修正も必要になり、夫婦お互いの時間が減って、家事や育児の時間が増え、経済的な負担ものしかかってきます。
これらを同時に円滑にこなせることは稀であり、パパたちは混乱した環境の中で親としてのアイデンティティの獲得に取り組まなければなりません⑵。

*参考文献
▪︎清水(2006)父親の育児ストレスの実態に関する研究 小児保健研究65(1)26-34

パパの役割=「子どもの世話」だけじゃない

ところで、家庭における【パパとしての役割】とはなんでしょうか?

一つは、もちろん【子どもの育児】です。子どもと遊ぶ、お風呂に入れるなど直接的に子どもに関わることで、子どもの健やかな成長を支えます。

そしてもう一つ、パパとしてとても大切な役割があります。それはなんだと思いますか?

それは【ママの支援】です。話し相手になる、ねぎらいの言葉をかける、ママの自由時間を作るよう努めるなどして、ママを支えてあげることです。

多くの場合、子どもと一緒にいる時間が圧倒的に長いのは、母親です(*)。普段あまり子どもと関わる時間をとれない分、主たる育児の担い手であるママを支援することで、間接的に育児に関わることが、実はパパとして大切な役割なのです。

*参考:H28年 社会生活基本調査総務省統計局
▪︎父親:家事17分+育児49分
▪︎母親:家事3時間7分+育児3時間45分(絶対もっとやってるんですけどー。。😭😭😭)
※末子が6歳未満の世帯。一週全体
※ちなみに20年前のデータと比較して父親は+約50分、女性は変化なし。

「妻の理解のなさ」が父親アイデンティティの危機を招く

それでは、パパたちが父親アイデンティティの獲得していく上で、促進する要因や阻害させる要因にはどんなものがあるのでしょうか?

まずパパたちの「親としての効力感(自分ならうまくやれる、という気持ち)」を高める要因は、
 ・子どもの育児をしている
 ・生まれる前からママを支援するつもりでいた
 ・実際に現在ママを支援している
 ・ママの理解がある

です。これらが影響して、パパは父親としての自信を高めていくようです。

逆にパパの「自信のなさ」を助長する一番の要因は、
 ・ママの理解のなさ※
です。これによって、父親アイデンティティの混乱が生じるとされています。

※この研究では、妻の子育ては理想と違う、自分よりも子どもを優先するのが不満、子育てに自分を必要してくれていない、自分の苦労をわかってくれないなどを総称して「理解のなさ」としています

つまりは、パパが実際に子どもの育児やママの支援を行い、親としての役割を果たしていることをママが理解する、認めることによって、父親としてのアイデンティティ獲得を促進することが示唆されています。

そのために必要なのは、(できれば赤ちゃん誕生前に)パパたちに父親の役割として「ママの支援」があると知らせること、パパとママがお互いに役割を確認し合って、それを尊重すること。

ただ、慣れない子育てをする中で、そうした意思疎通って案外難しいですよね・・疲れている状態で二者間で話そうとすると、お互いに「自分はこんだけやってるのに!」のぶつかり合いになっちゃったりして(我が家ではそうなることがある)。

基本的なことだけど、日ごろから相手が当たり前にしてくれていることに目を向けて「ありがとう」を伝える(最近全然できてなかったなぁ・・)、親になってもちゃんと自分の時間をもつことで、心の余裕がなくならないようにすることなどが必要なのかなと思います。

特に女性は、子どもが誕生すると「個人としての自分」よりも「母親としての自分」の比重が重くなってしまいがち。そして男性は、うまく関われないことに自信を失いがち。

今回父親アイデンティティの論文のレビューをしてみて、親として、また個人として、良い意味でお互いに頼り合って、尊重し合えることが、「自分らしい子育て」を見つけていく上で大切なのだな、と感じました。

まとめ

今日は父親アイデンティティの危機というテーマで書きました。

◻︎急激なライフスタイルの変化、慣れない育児など混乱した状況の中、父親としてのアイデンティティの獲得に取り組まなければならない

◻︎「子どもの育児」だけでなく「母親の支援」も、父親の役割の一つである

◻︎「妻の理解のなさ」が父親アイデンティティを揺るがせる一番の要因

読んでみて、いかがだったでしょうか?

※研究参加者の属性(住んでいる場所や年齢、子どもの数など)にはばらつきがあるため、これらの知見=日本のパパの様相を正確に表しているとまでは言えません。

わかるな〜と思う部分があったら、「スキ」やコメント頂けると、励みになります!

それでは、今日はこの辺で。

ストレスを溜め過ぎず、どうにかこの日々を乗り切っていきましょう。

【夫や子どもは怒りのトリガーに過ぎない】
https://note.com/aitakahashi_3776/n/n3fcdbe3f883e

【ごきげんな妻が育メンを育てる】
https://note.com/aitakahashi_3776/n/n810d64383154


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