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Q:エネルギーが一番低いのはどれ?①オリーブ油②バター③アマニ油

「オリーブ油は体に良いので毎朝スプーン1杯飲んでいます!」という話を、ちょくちょく耳にします。

オリーブ油は、大さじ1杯あたり、約110kcal。

単純計算ですが、1年間で毎日摂り続けると、およそ5.7㎏太ることになります。※110lcal×365日=4万1500kcal÷7000kcal=5.73…kg.(計算方法については前回コラム参照

同じくアマニ油も、大さじ1あたり約110kcal。

一方、バターは大さじ1あたり約90kcal。

健康に良いと聞くオリーブオイルやアマニ油よりもカロリーは低いのです。意外に思われる方が多いかもしれないですが、これは事実です。

ヘルシー=低カロリーというイメージが原因です。**

なぜ、こういった誤解が生まれているのかと考えてみると「健康に良い(ヘルシー)」という言葉が「低カロリー」という意味で使われるようになってしまったからではないでしょうか。

健康に良いと言われているものでも、カロリーが高いものもあれば低いものもあるのです。

エネルギー(カロリー)は「炭水化物、たんぱく質、脂質」から作られます。それぞれのエネルギーは1gあたり「炭水化物=約4kcal、たんぱく質=約4kcal、脂質=約9kcal」で計算できます。

オリーブ油やアマニ油は、ほとんどが脂質ですので、12g(大さじ1)×9kcal=約110lcalとなりますが、バターは牛乳を分離させたクリームですので、脂質以外にタンパク質などが含まれおり、同じ重さで算出すると、オリーブオイルやアマニ油よりもカロリーが低くなるのです。

飽和脂肪酸を多く含むか不飽和脂肪酸を多く含むか!

いずれにしても脂質を多くふくむこれらの油脂類は、少量で高カロリーなため悪者にされがちです。

しかしその役割は、細胞膜の材料になったり、ビタミンA・D・E・Kの吸収を助けたり、性ホルモンの材料になったり、人間の体を構成するのに非常に重要なものです。

さらに、オリーブ油は一価不飽和脂肪酸(オレイン酸/約70%)と呼ばれる脂肪酸を多く含み(下図参照)、血中のLDL(悪玉)コレステロールを減少させるという研究結果があります。また抗酸化作用の強いビタミンEやポリフェノールが多く含まれ、動脈硬化予防、高血圧予防、美肌効果などが期待されます。

アマニ油は、オメガ3とも呼ばれているn-3系の多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸など/約70%)を多く含み(下図参照)、血中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減少させ、HDL(善玉)コレステロールを上昇させる働きがあります。

バターは、前述したように、たんぱく質を含み、抗酸化作用の強いビタミンE、皮膚や粘膜を構成するビタミンA、成長ホルモンの分泌や筋肉収縮に必要不可欠なカルシウムなど多くの栄養素を含みます。

ではなぜ、とくにバターは体に悪いと言われるのか? それは、飽和脂肪酸(パルミチン酸など/約50%)を多く含むからです。多くの研究で「飽和脂肪酸を摂りすぎると、LDLコレステロールを上昇させる」という結果が出ています。一部、心筋梗塞や糖尿病、乳がんや大腸がんとの関連が示唆されていますが、まだ完全に明らかにはなっていません。

油は、プラスするのではなく置き換えがポイント!

脂質に関する一番の健康問題は「摂りすぎ(とくに飽和脂肪酸)」です。

どの脂肪酸も適度な量であれば、大きな問題はありません。摂りすぎが、肥満の原因になり様々な疾患のリスクを高めます。

現代社会の食事は、肉や卵、乳製品、揚げ物やスナック菓子やスイーツなど飽和脂肪酸を過剰に摂る傾向があり、魚を摂る機会が減っていることからn-3系脂肪酸の摂取量の減少が見られます。

こういったことから、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えると理想的な摂取量に近づくと考えられ、多くの研究で、心筋梗塞の発症率や死亡率を優位に減少させることがわかっています。

具体的には、肉料理を減らし、魚料理を増やす。バターをごま油やコーン油に置き換える。マヨネーズをやめてアマニ油を使ったドレッシングにするなどし、それぞれの脂肪酸をバランス良く摂取できるよう心掛けましょう。

さいごに、上記以外に、不飽和脂肪酸に工業的に水素添加をしたトランス脂肪酸という脂肪酸があります。

これは、飽和脂肪酸よりもLDLコレステロールを大きく上昇させることがわかっていて、欧米では心筋梗塞などの冠動脈疾患との関係が強いと言われています。

日本では欧米ほど多く摂取していないことから、そのリスクは低いとされていますが、欧米人のような食事スタイルに近い日本人は同様に考え、マーガリンやショートニングが含まれているパンやピザ、ケーキ、サクサクしたお菓子、ハンバーガーやフライドポテトなどは習慣的に摂りすぎないようにすることをお勧めします。

次号「Q:免疫力を下げる可能性が高いのはどれでしょう? ① フルマラソン ② お笑い番組 ③ ヨーグルト」につづく。

<参考文献>
・伊藤貞嘉,佐々木敏 監修:日本時の食事摂取基準 2020年版,第一出版
・上西一弘 著:食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第3版 女子栄養大学出版
・香川明夫 監修:七訂 食品成分表2020女子栄養大学出版
・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の素材情報データベース


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