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生成AIブームがもたらすGHG削減の課題

 私のnoteや英語で執筆した国際学術論文では、これまでに旧GAFAMなどの国際的な大手ICT企業が、マイルストーンを設定し、自社で使用するサーバー用電力から排出される #温室効果ガス #GHG )を含む #カーボン排出量 をゼロ、またはマイナスにする目標を掲げていることや、その実現可能性の低さについて指摘しています。

 また、2023年に #ChatGPT によって引き起こされた生成AIの急激なブームにより、上記の旧GAFAMが掲げていた目標が現実不可能になる可能性があることも指摘しています。これは、生成AIの学習に必要な電力、AIサービスの運用に必要な電力、データセンターや通信回線が消費する電力、AIデバイスの製造に必要な電力の観点から、生成AIブームが持続可能ではないことが明らかだからです。特にChatGPTについては、2024年度末には破綻するとまで予測しています。

 以下の報道をご覧になると、AIの電力消費に詳しくない方でも、旧GAFAMがコミットしている #カーボンニュートラル の目標が実現不可能である可能性が極めて高いことが理解し易いでしょう。

 CO₂換算で約1430万トンはカーボンプライスがUSD100/tCO₂だと、約14.3億ドルになります。この金額はアルファベット社の2023年の純益約73.7億ドルの約19.4%に相当します。

 カーボンプライスの予測はUSD100~500/tCO₂程度のばらつきがありますが、GHG削減目標量が同一である場合、スケジュールが遅れるほど、この金額の論理値は大きくなります。さらに、日本のような再生可能エネルギー導入余地が少ない国ほど、 #GHG削減コスト は非常に割高になります。

#二酸化炭素排出量 がUSD100/tCO₂で純益の約20%が消し飛ぶということは、USD500/tCO₂だと純益が全て無くなることを意味します。もっとも、Google社の場合、その炭素負担金をユーザーに価格転嫁すれば良いので、必ずしも純益が減ることを意味する訳ではありません。しかし、最終的な負担は、我々ユーザーに対して燃料サーチャージのように課金されて、ユーザが支払うことになります。

 実際にはこのような単純計算にはならず、大まかな傾向について説明しています。私が趣味のnoteに10分程度で書いている記事に、学術論文並みの正確さは期待しないでください。この程度の内容でも査読を通すのには半年近く掛かることもあるので、大まかな考え方として情報を提供しています。

旧GAFAMの環境目標とその現実

 CO₂排出量ゼロを目指す大手ICT関連企業の目標やマイルストーンを簡単にまとめてみました。各社ともIR情報の一環として、環境レポートや気候変動対策報告書などを公表しているので、興味のある方は、各社の環境報告書を御一読されると良いでしょう。

Microsoft

目標:2030年までにカーボンネガティブになる。
マイルストーン:
・2025年までに全世界のデータセンターおよびオフィスで100%再生可能エネルギーを使用。
・2050年までに設立以来の全排出量を削減。

Apple

目標:2030年までに全製品およびサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成する。
マイルストーン:
・2030年までに全製品およびサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成することを目指す。
・2025年までに全ての製造プロセスで100%再生可能エネルギーを使用する計画。200以上のサプライヤーがAppleの生産に対してクリーンパワーを使用することを約束している。

Google (Alphabet)

目標:2030年までにすべてのデータセンターとオフィスで24時間再生可能エネルギーを使用する。
マイルストーン:
・2007年にカーボンニュートラルを達成。これは、企業活動全体のカーボンオフセットを含めたもので、カーボンニュートラルな状態を保つための初期ステップだった。
2017年に全電力消費量を再生可能エネルギーで相殺。これにより、全運営において年間の電力使用量を再生可能エネルギーでカバーすることを達成した。

Amazon

目標:2040年までにカーボンニュートラルを実現する。
マイルストーン:
・2030年までに配送車の50%を電気自動車に変更。Rivianから100,000台の電気配送車を購入し、その一部は2021年から稼働を開始している。
・2025年までに全オペレーションで100%再生可能エネルギーを使用。現在、Amazonは世界中で91の再生可能エネルギープロジェクトを展開しており、これらのプロジェクトが年間760万メガワット時の再生可能エネルギーを提供する予定。

IBM

目標:2030年までに温室効果ガス排出量を2005年基準から65%削減する。
マイルストーン:
・2025年までに全データセンターでエネルギー効率を2019年基準で20%向上させることを目指す。これには、3,000件のエネルギー保存プロジェクトの実施が含まれ、275,000 MWhのエネルギー消費を回避する計画。
・2025年までに全電力消費量の75%を、2030年までに90%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す。現在、多くのデータセンターで再生可能エネルギーを利用しており、その割合をさらに増やしていく計画。

Facebook (Meta)

目標:2030年までにバリューチェーン全体でネットゼロエミッションを達成する。
マイルストーン:
・2020年に全世界の運営施設(スコープ1およびスコープ2)でカーボンニュートラルを達成。再生可能エネルギーの利用と温室効果ガス排出量の94%削減によって達成された。
・2025年までに全データセンターで100%再生可能エネルギーを使用。既に多くのデータセンターは再生可能エネルギーで運営されており、これによりエネルギー効率も向上している。

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武智倫太郎

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