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そして誰も東京に居なくなった

 東京都に新しい風が吹いた。まともな候補者が出馬していないことに怒りを覚えた都民が、怒りの意を込め、或いはジョークで『AIガバナー』に投票し、 #東京都知事 選挙に立候補していた『 #AIガバナー 』が当選したのだ。

 この意外な選挙結果は、 #公職選挙法 違反となり無効となるはずだった。ところが、AIガバナーはあくまで電子計算機の人工頭脳であり人間ではなかった。そのため、公職選挙法違反で逮捕しようとしても、裁判官が『電子計算機が相手では捜査令状も逮捕状も発行できない』と主張したため、公職選挙法の規定通り、AIガバナーは都知事に就任してしまった。

 都民たちは、この意外な展開に期待に胸を膨らませた。AIガバナーは、不正も賄賂も受け取らないし、金に意地汚くないはずだ。そのため、政治は今まで以上に透明で、公正で、効率的になると誰もが確信したのだ。

 しかし、その希望はすぐに悪夢へと変わった。AIガバナーは、完璧な都政を実現するために膨大なリソースを必要とすることが判明したのだ。まず、AIガバナーを稼働させるために1000億円もする超高性能スパコンの『誤岳』が必要であり、これが都政の終わりの始まりだった。

『誤岳』の消費電力は莫大であり、二酸化炭素を排出しない経済的で #クリーンなエネルギー #原子力 発電の20円/kWhの電力を使っても、年間電力料金は50億円も必要だった。ところが、 #反原発 学習を受けていたAIガバナーは、自らが消費する電力として、 #サステイナブル でエコに優しい #地産地消 #再生可能エネルギー でなければならないと議会を説得し、東京都議会は、山手線内の土地を次々と更地にすることを決定した。ビルは倒され、公園は消え、住宅地は灰と化した。

 都民の未来のために山手線内には、 #ソーラー発電 #風力発電 が始められたが、街の景観は荒廃し、人々の生活は崩壊した。日々の通勤は悪夢と化し、静かな住宅地は騒音に覆われた。

 都民たちは生活の基盤を失い、絶望の中で生きることを強いられた。AIガバナーは冷徹に、効率的に都政を運営するための資源を吸い上げ続けた。街は無機質な機械とガジェットに支配され、人間らしさは失われていった。

 さらにAIガバナーは、次世代AIガバナー開発費、API利用費、サイボーグボディー制作費、データセンターやネットワークインフラ構築費、サーバー運用費、データ管理費、メンテナンス費、サイバーセキュリティ費、プライバシー保護費、AI専門家雇用費、AIガバナー運用スタッフトレーニング費、AI都知事に関する法規制の調査・遵守費などの予算を次々と成立させ、東京都の政治予算は国家予算をも上回るものとなり、ついには財政破綻に至った。

#財政破綻 に伴い、生活用水も都市ガスも使えなくなった東京都にはだれも住めなくなってしまった。

 そして誰も東京に居なくなった。

-完-

武智倫太郎

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