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緑にゆれる(ロングバージョン)

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長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
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#連載小説

【連載小説】緑にゆれる Vol.1 序章

同じキャンパスで過ごした日から十五年。 カケル、マリ、美晴のそれぞれの十五年後。 外資系の…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.2 第一章

第一章 「よし、終わった。ね、もう行ってもいい?」  圭が、最後のシールにはんこを押しつ…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.3 第一章

 秀幸さんとは、勤めていた都内のクッキングスタジオで出会った。「男のための料理教室」。上…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.4 第一章

 美晴が秀幸さんの一人暮らしのマンションのキッチンに立ったのは、それからさして時を経なか…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.5 第一章

  ***  鎌倉ロケも最終日を迎え、午後も早いうちに撮影は終わった。  カケルは、仕事…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.10 第二章

「そう言えば、先月、カケルさんが来てくれました」  美晴が屈託なくそう言ったとき、計らず…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.11 第二章

 ふいに、おそろしく虚しい気分に襲われた。ぽかーん、とした昼間。みんな忙しく自分の世界で働いているのだ。それなのに、私ときたら。せっかくリフレッシュにもらった時間に、やっているのは元彼の足どりを追うストーカーまがいのこと。  急に、はずかしめられたような妙な気分になって、それを振り切るように、きびすを返してずんずん歩いた。思いに突き動かされて歩いて、足は駅ではなく、ビルの隣に見える緑に向かっていた。  公園よ、こんな気分に陥ったときは、公園。    公園の中へ一歩足を踏み

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.12 第二章

「どうしたの? こんな所で」  肩越しにこちらを振り向いたカケルは、少しだけ眉間にしわを…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.14 第二章

 このとき、今まではっきりと形をとっていなかった疑念が、マリの頭の中に、くっきりと浮かび…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.16 第二章

 うつむいて黙っていると、カケルが場の空気を変えるように笑った。 「何で、お前が深刻にな…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.17 第二章

「向こうは、何て」 「マリちゃん」 「子どもができる前は、彼のこと何て呼んでたの」 「……

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.18 第三章

   第三章  まさに、青天の霹靂だった。会社をたたむ。倒産を、みんなの前で通告してから…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.20 第三章

 結局、そのまま晩ごはんまでいただくことになってしまった。食べつつ、会社が倒産したことを…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.22 第三章

 食後、五人でウッドデッキに腰かけながら、美晴が庭のレモンをしぼって作ってくれたレモネードを飲んだ。ほとんど、何の音もしない静かな夜。 「自家製のレモネードなんて、ぜいたく」  奈美が、足を少しぶらぶらさせて、ストローに口をつける。それから、添えのさくらんぼをつまんで口に入れた。 「圭くん、たね飛ばそっか」 「いいよ。きっと、負けないよ」  圭も、さくらんぼをつまんで口に入れた。 「二十三でやるかなぁ。彼氏もできないわけだ」 「黙ってて下さい」  谷崎のツッこ