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第58回 女囚701号/さそり(1972 東映)

  3月3日はひな祭り、即ち女の子の日であります。こんな二言目にはホモだホモだと騒いでいるnoteでなんだとお思いかもしれませんが、私もバイセクシャルなれば、一時的に"女"になることだってあるのです。

 えげつない話はさておき、女の子の日ということで今回はちょっと趣向を変えて女の映画で行きましょう。

 女囚映画の最高峰にしてタランティーノのお気に入り、youtuberになったりとここ最近やたらに元気な梶芽衣子の伝説の映画シリーズ第一作『女囚701号/さそり』でお送りします。

 梶芽衣子演じる松島ナミ、通称「さそり」が自分をはめた昔の男に復讐する為刑務所で大暴れというものです。

 異才伊藤俊也監督の東映にあるまじき前衛的な画、外道な看守にアバズレの女囚、普通の東映映画とはまた別種のただならない雰囲気を発しています。

 ですが何と言ってもこの映画の肝は梶芽衣子の気迫です。この気迫で映画史に永遠に名を残すことになったのですから半端じゃありません。

 そして、女囚と言えばレズであり、これは本作においても例外ではありません。そして、出てくる男どもはどいつもこいつもホモとしか思えない連中です。つまり、本作もまたBL的鑑賞にたえる映画なのです。そして百合映画なのです。

女囚701号/さそりを観よう!

Amazonでは東映ジャンクフィルムチャンネルでの配信ですが、Netflix、hulu、U-NEXTいずれでも配信があります

真面目に解説

東映女映画の系譜
 以前『緋牡丹博徒』でも述べましたが、東映はホモソーシャルの極致のような映画を量産する反面、女の映画を撮る伝統があります。

 何か当たった映画があったら女バージョンも作ってしまえという雑な発想ですが、これが意外に成功率が高いのも確かです。

 本作は篠原とおるの劇画を原作としていますが、やはりその背景には『網走番外地』の女バージョンをという発想がありました。

 本作の公開直前に煮詰まり切っていた網走番外地シリーズは打ち止めとなるのですが、本作が大評判を呼んで結果としてタスキが繋がれたわけです。


異才の二人
 さそりは基本的に喋りません。のっぽさんやゴリラーマン並みです。あの漫画に明らかにさそりをモデルにしたキャラクターが出てきたのは偶然ではないでしょう。

 実は原作のさそりはここまで無口ではありません。梶芽衣子自らさそりの非情さを前面に押し出す為に提案してこうなったのです。

 しかし、セリフ無しで役に説得力を持たせるというのは並大抵の事ではありません。それを可能にしたのが梶芽衣子の恐ろしい目力なのです。明らかに説得力過剰です。

 そしてこのさそりという稀有なキャラクターを見事に操作したのが本作が本格的な監督デビューとなった伊藤俊也です。

 本作が作られた当時の東映東京撮影所は労使交渉がこじれて会社のコントロールが全く効かない状態でした。その労使交渉の先頭に立って居たのが誰あろう伊藤俊也なので、もう会社の意向なんて糞くらえと言わんばかりの作りになっているのです。

 つまり物凄く前衛的で猥雑なエネルギーが籠っています。ほとんどアートフィルムです。しかし、これが結果としてよかったのです。

 考えて見ればそういう映画は結構あります。娯楽映画とアートフィルムが一本のフィルムに同居していたからこその日本映画の黄金時代だったのやもしれません。


ジャパニーズブルース
 本作のもう一つの象徴が、伊藤が作詞、天下御免のヒットメーカー菊池俊輔作曲による主題歌『怨み節』です。

 この一回聞いたらその日一日頭から離れない強烈な主題歌だけで掴みはオーケーです。何か凄い映画が始まると予感させてくれます。タランティーノが『キル・ビル』に使ったのも納得です。パット・モリタの歌う「裏街人生」よりは間違いなくジャパニーズブルースしてます。

 藤純子や志穂美悦子の残念な歌唱力では絶対に歌いこなせないナンバーです。とにかく色々な要素がかみ合ってこの映画は歴史に残ったのです。


恐怖の女子刑務所
 本作における刑務所の描写は最初にフィクションと大書するだけあってリアリティは全然ありません。ロケ地は同じはずなのに、松方弘樹の『脱獄広島殺人囚』はあれでもリアルだったんだと変な感動さえ覚えます。

 ですが、この但し書きをフル活用してお客さんの求める女子刑務所像が余すことなく描かれます。つまり洋画っぽい刑務所です。

 女囚たちは行儀が悪く、凶暴で陰湿です。そしてそこはやっぱり東映なので何かといえばオッパイを出しますが、出してもらっても…という人が集められているのが逆にリアルであり、猥雑なムードに一役買っています。

 しかし、ちゃんとそっち方面はサービスするのも東映であり、梶芽衣子自ら率先してオッパイを出していき、えげつないいじめも受けるばかりかレズシーンまでやってのけるのですからたまりません。


平凡な女(大嘘)
 映画はさそりが喋れない囚人仲間の由起子(渡辺やよい)と一緒に脱走を図ってとっ捕まり、西部警察風にリンチされるところから始まります。梶芽衣子は元は日活出身で、渡哲也と同期なのです。

 この由起子が本作の事実上の「メインヒロイン」であり、刑務所でも浮いているさそりが唯一心を通わす相手なのですが、詳しい話は後に譲ります。

 そもそも何故さそりは刑務所に入っているのかがこの映画の重要なポイントです。

 さそりもほんの数年前まで自称平凡で幸せな女だったのです。それどころか処女だったのです。もっとも、あんな暗殺者の目をしている美女はその時点で平凡ではないと思いますが。

 しかし、刑事の杉見(夏八木勲)に処女を美味しく頂かれ、惚れた弱みでおとり捜査に利用された挙句、ヤクザに犯されたのに怒って杉見を殺そうとして刑務所に入れられてしまいます。

 そして、さそりは杉見と、杉見と裏で繋がっているヤクザの海津(伊達三郎)、そして自分を犯した海津の子分達への復讐を狙っているのです。

 復讐の為に鬼となって手段を選ばず暴れ狂うさそりと、さそりにに狙われ、さそりを追い、さそりに振り回される敵対者たちという構図でこのシリーズは続いて行くのです。


さそりの強さ
 自分で言っている通り、さそりは目はともかく身体は普通の女です。ですが、東映の女主人公たちの中でも一番強いのではないかとさえ思えます。

 例えば藤純子は小太刀や簪投げという特殊技能を持ち、志穂美悦子は単純に強く、岩下志麻は子分を一杯抱えていますが、さそりには特筆すべきバックボーンは何もありません。

 さそりの強さの根幹は執念と知能です。どんな拷問を受けても絶対音を上げない。信じられない機転で毛ほどのチャンスを逃さず敵を始末する。ゴルゴ13系の強さです。

 そして、一回敵に回したら絶対に話し合いに応じそうにありません。執念深いのです。執念こそ人間の最大の武器なのです。


法務省仕事しろ
 こんな危険人物を収監してている割には本シリーズの看守たちは甚だ頼りない陣容です。

 所長の郷田(渡辺文雄)は職務への責任感は確かですが、くいしん坊として見せた東大卒のインテリジェンスはどこにも感じられない乱暴者です。

 そしてどうにも自分に甘くて油断があり、さそりを必要以上に敵視して墓穴を掘ってしまうのです。

 部下に至っては若頭格が室田日出男です。やっぱりこのnoteは特定の俳優に収束していく運命を感じます。

 沖崎演じる室田日出男は組合活動に入れ込み過ぎて一回クビになったほどの猛者なので、同志である伊藤俊也としては美味しい役に使ってやりたかったのでしょう。

 『暴動島根刑務所』では囚人にとっ捕まって掘られてましたが、本作では得意のサイコパスを大いに発揮してムチを振り回してさそりをいじめて楽しそうです。

 それに続くのが今や国際俳優になった堀田眞三演じる古谷です。顔が怖くてライフルを持ち歩いているので強そうですが、その実そのライフルを女囚に簡単に奪われてしまうやられ役です。

 その他小林稔侍や三重街恒二、たこ八郎と言ったなかなかにイカれた面々がその他大勢で出てくるのですが、彼らは暴動を起こした女囚に犯される竿役。ただ、羨ましいとは思えないのがリアルなのです。

 問題は唯一の女看守である鬼頭(片山由美子)です。プレイガールだけあってエロい彼女はなんと女囚に化けてしてさそりに近付き、さそりにレズで篭絡されるというサービス要員なのです。

 杉見との濡れ場は前衛的な演出が過ぎてちっともエロくないのに、このレズシーンは濃厚です。これが成人映画館ではなく普通の映画館で観られた時代が確かにあったのです。


オメコ芸者がいっぱい
 刑務所に入っている人はどういう人なのか?ダメ人間です。しかもいざとなれば男よりも女が危険です。風紀の紊乱は避けられないわけです。

 この刑務所には班長グループという牢名主が任命されており、こいつらがもっぱらさそりをいじめます。そしてさそりに一人一人始末されていくのです。

 特にリーダー格の片桐(横山リエ)はさそりを巡る攻防から死に様まで実に見事です。大島渚に切腹させられたこともある怪女優の面目躍如であります。

 一方管理される側のリーダー格であり、準主役にあたるのが扇ひろ子演じる梨恵です。喧嘩が強くて男気のあるなかなか頼りになる姐さんですが、この人はガチなバックボーンがあるのです。

 扇ひろ子はそもそもが紅白に2回も出場した演歌歌手でありましたが、並行して日活で女優として売り出され、藤純子の『緋牡丹博徒』シリーズに対抗して『昇り竜』シリーズで主演を張っていた傑物なのです。

 しかし、そのせいで忙しすぎて女性の付き人と失踪してレズ駆け落ちだとマスコミが騒ぐ事件になり、その穴を埋める形でくすぶっていた梶芽衣子が抜擢され、初主演作である『怪談昇り竜』が作られて浮上のきっかけになりました。

 いずれにしても世の中何が幸いするかわからないものです。扇ひろ子が失踪しなければ梶芽衣子もこの映画もなく、また扇ひろ子の代表作は誰に聞いても日活の主演作ではなく本作なのですから。


新東宝魂
 以前東映大映松竹東宝日活と映画会社各社の特色の出た映画を集中レビューしたことがありましたが、実はもう一つ、新東宝という会社がありました。

 当時は配信作品がほとんどなかった(ないと思っていた)のでやむなく飛ばしたのですが、このエログロと怪奇が得意な新東宝出身の役者が本作では大きな役目を果たします。というより、このシリーズは全体的に新東宝っぽいのです

 班長グループの中に居たのがまさに新東宝の看板女優だった三原葉子。若い頃はムチムチボディをフル活用した所謂ヴァンプ女優でしたが、この頃には専ら東映で脇を固めていました。

 イカサマ賭博で揉めて扇ひろ子と鼻血を出しながら大喧嘩し、最後は風呂場でオッパイ丸出しでさそり襲撃して失敗して郷田の片目を潰してしまうという美味しい役どころです。

 ここで伊藤俊也が爆発し、謎の鬼女風メイクを施されておどろどろしい演出で襲い掛かっていくのが実に新東宝なのです。こういうノリの怪談映画が得意だったのです。

 そして三原葉子はもはや立場的にも年齢的にも主演は無理なのを悟っているのが窺えます。この姿勢は個人的に大好きです。熟女もまた映画作りには必要なのですから。

 そして看守にはとびきり顔の怖い沼田曜一が居ます。『地獄』の天知茂を食う勢いの怪演がつとに有名ですが、本作でも室田日出男を食う勢いのヤバい奴としてベストアクト級の芝居を見せます。

 OPで女囚の身体検査をイっちゃった目でこなし、高笑いしながらさそりに非道の限りを尽くしますが、最後はそのせいで暴動になって事態がややこしくなってしまうのです。

 意外に新東宝の映画は配信されていることがこの度判明したので、いずれ第6の映画会社、新東宝にはクローズアップしていきたいものです。


さそりルックで行こう
 レズ、暴動、脱走と刑務所映画に必要な様式美はひとしきり踏襲し、念願かなってりは有名な黒ずくめの「さそりルック」に着替えて包丁方手にお礼参りに赴きます。

 この格好になるとさそりはいよいよ手に負えなくなります。殺し方が完全にプロです。どう考えても平凡な女の手際ではありません。

 もう海津の手下に健さんがいても勝ちそうな勢いで、ついには本丸である杉見を普段の東映映画じゃまず見れない大胆な殺し方で片付け、見事本懐を遂げて自ら刑務所に戻り、次回に続くとなるのです。

 夏八木勲のヘタレぶりはまったくもって見事で、これをぶちのめすさそりを見るだけでもこの映画には十二分に価値があります。

 しかも、伊藤俊也の信念としてこのシリーズは続き物でやると決めていたので、次作以降も目が離せないわけです。

BL的に解説

杉見×海津
 まず第一に、杉見はホモです。大体出世できるからと言って恋人をおとり捜査に出すのは異常です。

 なのに杉見はさそりをおとり捜査に出し、あまつさえ罪状に婦女暴行のおまけをつける為だけにさそりを犯させたのです。

 杉見が最初からさそりを単なる道具として捉えていたのは明白ですが、相手は処女の梶芽衣子です。大抵の男は情が移ってしまうはずです。しかし、杉見がホモであったとすればこの外道な行為も説明が付きます。

 流石に夏八木勲は『戦国自衛隊』で千葉ちゃんと濃厚な衆道をかまし、股間の槍の形を褌越しに披露しただけのことはあります。梶芽衣子の処女膜の前にも思想を曲げない筋金入りのガチホモなのです。

 相手は誰か?裏で繋がっていた海津でしょう。海津の組を手入れしたことで杉見は出世を果たし、どういう理屈かは不明ですが海津の組も大きくなって二人だけで気持ち良くなってしまうのです。

 共存共栄の中になった二人はホモ臭くいちゃつきながらさそりの脱獄を心配し、海津の下で売人をしていて杉見に逮捕された片桐に仮釈放を餌にさそり暗殺を命じ、結果として裏目に出てさそりを世に放ってしまうのです。

 杉見はそれを聞いて海津に連絡しますが実にタイミングよくさそりが襲い掛かって万事休す。ついには警視庁のエレベーターでさそりが杉見に襲い掛かります。

 杉見はこの期に及んで恋人面してキスして誤魔化そうとしますが、さそりは杉見の舌を食い千切ってついには屋上でドスでとどめを刺し、実にみっともなく杉見は倒れるのです。

 千葉ちゃんならこのバイオレンスポルノ戦術でどうにかなったかもしれませんが、杉見はホモなので女心は分からなかったのでしょう。ノンケだったら夫婦になっていちゃついているはずですから。


看守ホモ集団説
 このシリーズには一つ謎があります。看守が残虐な一方囚人を犯さない事です。

 看守の囚人への性的虐待は性別を問わず広く行われている法執行の闇なのです。しかし、梶芽衣子や渡辺やよいを前にしても看守達は暴力を振るうだけで特に命令されなければ犯そうとはしないのです。

 それどころか、後のシリーズでは女囚にとって看守に犯されるのは舌を噛み切って死ぬべき屈辱であると判明します。武家の女や尼さんならまだしも、女囚がそんな貞操観念を持っていてはやっていけないのが現実です。

 あれだけ暴力は好き放題にやりながら強姦だけはしない。そんな看守の不思議な習性の根拠はやっぱりホモなのです。

 つまり、看守たちは皆郷田の小姓であり、女にあまり興味がないのです。室田日出男や沼田曜一を小姓に抱えるのがまさにくいしん坊。ゲテモノは美味いと相場が決まっていますから。

 能力もカリスマもあるとは思えない郷田にやけに看守たちが忠実なのも愛が介在していたとすれば納得です。

 ちょっと間抜けな所長だからこそ俺たちが支えなきゃと看守たちは思い、その一心で女囚をいじめて風紀を引き締めようとする。つまり、女囚をいじめるのは間接ホモセックスであり、梶芽衣子は娑婆でも刑務所でもあくまでコンドームなのです。

特別企画 GL的に解説

バリタチさそり
 女の子の日なので特別企画です。男女同権です。女同士もたまにはいいでしょう。

 看守たちは女囚に性的虐待は加えない一方、女囚同士のレズは広く行われているのが次作以降でも示唆されます。

 そこへ梶芽衣子です。彼女はレズビアンの間では非常に人気が高いので、看守がガチホモ軍団であってもどの道牢名主に犯されるのは避けられない運命です。

 ですが、やっぱり梶芽衣子にネコは似合いません。どう見てもバリタチでしょう。

 とにかく、犯されるうちにスーパーテクニックを身に着けたさそりは独房に潜入してきた鬼頭に不穏な物を感じ、なんと『ブロークバックマウンテン』の要領で水を向けて襲い掛かります。

 杉見とのそれより明らかに強烈なキスシーンの挙句さそりに完璧に堕とされた鬼頭はそれを郷田に見抜かれて「ふしだらな」と罵られた挙句意味もなく服を破られてぶん殴られてしまうのです。

 ハッキリ言って鬼頭の存在はストーリーに何ら寄与していません。つまり、単純にサービス要員です。さそりにとってはどうでもいい女でしかないのです。

さそり×由起子
 あくまで私の見解ではありますが、レズと百合は違います。鬼頭がさそりに堕とされたのは単なる性欲の産物ですが、この二人の関係はもっと崇高なものです。それが百合です。

 あまりの執念深さゆえに囚人の間でも浮いてしまい、恐れられているさそり。そんなさそりに由起子は妹のように懐き、またさそりもそんな由起子にだけは心を開く。これが愛でなくて何でしょうか。

 さそりが由起子と連れだって脱走したのが二人の特別な絆の動かぬ証拠です。復讐の為には手段を選ばぬさそりが、足手まといにこそなれ役に立つことはないだろう由起子を連れて行くのは損得を超えた感情がなければ説明がつかないのです。

 そして口のきけない由起子を気遣う時にだけさそりは心ばかりか口も開くのです。そして恐らくどの囚人より戦闘力は低いはずの由起子もまたその愛に応えるべく看守を流木でぶん殴りさえします。

 流石は天皇陛下のお気に入りだった花形力士蔵間のおかみさんとなり、大病に苦しむ夫に懸命に寄り添った渡辺やよいだけあって良妻です。一番有名な反面、息子の教育を誤り、芸人をツバメにしていた大部屋女優のおかみさんとは格が違います。

 結局二人は捕まって仲良く懲罰房に入れられてしまうのですが、それでも二人の絆はゆるぎなく、房の壁に頭突きをして由起子など涙を流してしまうのです。女性では初めてですが、これも実質セックスです。

 その後しばらく由起子は姿を見せませんが、鬼頭がレズ落ちした後、さそりにデカい穴に放り込んでひたすら穴を掘らせる「閻魔落とし」という懲罰が行われたところで、さそりを心配する由起子が現れます。

 さそりは勿論こんな事で音を上げる女ではないので、他の女囚に穴を埋めさせるという駄目押しが行われます。

 これに由起子は従おうとしません。見つめ合う二人。どうにもできず涙を流す由起子。滅多に見せぬ笑顔で応えるさそり。もう目でセックスしています。梶芽衣子の目は稀に見る名器です。

 勝負は長期戦になり、ついにダウンしたさそりを沼田曜一がぶん殴るのについに由起子がキレ、沼田曜一をスコップで斬り殺し、古谷に撃たれた事でついに暴動に至ります。

 大暴れする他の女囚もどこ吹く風で由起子に駆け寄るさそり。どさくさに紛れてさそり暗殺のミッションを遂行しようとする片桐の弾避けとなって由起子は虫の息です。

 由起子は身を挺して守ったさそりの手に「カタギリ」と血文字でメッセージを残して息絶えます。

 『強盗放火殺人囚』で志賀勝が同じ事をやっていましたが、渡辺やよいがやるとこんなにも尊くなるのです。誰がやったかは肝心ですね。

 倉庫に立てこもって捕虜にした看守たちを逆レイプしてお祭り騒ぎをする女囚たちを尻目にさそりは暴動に不参加を決め込んでいましたが、片桐が引きずり込んで縄で吊るしてリンチにかけて変態のお客様に又サービスです。

 しかし、さそりは扇ひろ子の協力もあって形勢逆転に成功。片桐を焼き殺して突入してきた看守もまいて見事に脱獄に成功し、本懐を遂げるのです。

 しかし、さそりは徹頭徹尾己の復讐の為に動いていたのに、片桐を殺す時だけその信念を曲げたのです。由起子の為にさそりは片桐を殺したのです。こいつは『百合姫』にもガチすぎて掲載できない本物です。

 そして、伊藤俊也もこの由起子が気に入ったのか、1作置いて3作目の『女囚さそり けもの部屋』にさらに悲惨な役回りで再登場を果たしてしまうのです。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します

『脱獄広島殺人囚』(★★★★)(男バージョン)
『暴動島根刑務所』
『強盗放火殺人囚』
『やくざの墓場 くちなしの花』(★★★)(娑婆の梶芽衣子)

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