第101回 オーバー・ザ・トップ(1987 米)
さて、本日2月14日はふんどしの日、実に男らしい日であります。え?バレンタイン?あんたはバレンタインが誰だか知っているんですか?
というわけで、ふんどしを前面に押し出した映画をレビューしようと思っていたのですが、ちょっとばかり事情が変わりました。
というわけで、今回は究極に男らしい映画でお送りします。先日急に尼プラで配信が始まった我らがスタローンの逸品『オーバー・ザ・トップ』でお送りします。
何と言っても本noteの主演俳優はシルベスター・スタローンです。何故か配信されなかったこの映画が配信された以上、やらない手はありません。男には逃がせないタイミングがあるのです。
ストーリーはいたって単純。トラック野郎で腕相撲の強豪のスタローンが旅と腕相撲を通じて生き別れの息子と親子の絆を取り戻していく。それだけです。
監督はB級映画職人メナハム・ゴーラン。そして主演がスタローンとくれば、評論家筋は悪く言ってもお客は満足して帰る映画が出来上がります。
ステロイドでハイになった本物のアームレスラーたちの咆哮を見るだけでも気分が高揚してしまう事請け合いです。何しろコブラ会が教材に使うくらいですからね。
そして驚くべきは、スタローンの総受け力は幼い息子を前にしても不変であるという事です。スタローンの得意技、ウザキャラ誘い受けがオーバーザトップです。
オーバー・ザ・トップを観よう!
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真面目に解説
お父さんはスタローン
本作はマイケル・カトラー(デヴィッド・メンデンホール)という12歳の少年が士官学校を卒業する場面から始まります。
士官学校と言ってもこれはアメリカに沢山あるなんちゃって士官学校で、不良少年やマッチョイズム過剰の保護者を持つ少年に軍服を着せて鍛えるという、ソフトな戸塚ヨットスクール程度の代物です。スタローンと仲良しのドナルド・トランプもこの手の学校を卒業しました。
とにかく、故郷カリフォルニアから遠くコロラドまで国内留学してきたマイケルを、父親でトラック野郎のリンカーン・ホーク(シルベスター・スタローン)が迎えに来ます。
マイケルの母親で心臓病の手術を控えるクリスティーナ(スーザン・ブレイクリー)が計らって、マイケルが幼い頃に別れた元夫のホークがマイケルを迎えに来たのですが、マイケルの方は全くホークを信用せず、微妙な空気のまま赤いトレーラーで2人はカリフォルニアのクリスティーナの下へ旅立ちます。
勿論、マイケルは旅が進むにつれて急激にパパに対してデレ始め、最終的には父子BLの領域に飛び込んでしまうのです。これがスタローンの得意技です。シュワちゃんにはちょっと真似できない奴です。
お父さんのオーバーザトップ
ホークとマイケルは険悪な状況のままドライブインに立ち寄ります。そこでホークはマッチョマンに絡まれ、1000ドルを賭けた腕相撲に挑みます。
腕相撲に1000ドルと言うのも無茶苦茶な話ですが、これがホークのもう一つの仕事です。『ハスラー』と『ダーティファイター』の融合です。ついでに言えば、スタローンは『ロッキー』で当てていい気になっていた頃に出来もしない高尚な映画を目指し、『フィスト』でジミー・ホッファを演じた事もあります。
スタローンは左利きなのに、ホークは右腕一本に全てを賭けてしまうのも笑いどころかもしれませんが、ホークが相手の親指を掴むのを得意としているのは注目に値します。
これは実際にやってみると分かりますが、実に合理的です。相手は力が入らなくなってしまい、逆にこっちは力が入るのです。ただ、反則と言われると抗弁できないので滅多に通じない技でもあります。
お祖父さんはクソ野郎
さて、何故ホークとマイケルが生き別れてしまったかと言うと、クリスティーナの父親であるジェイソン(ロバート・ロッジア)が何かと邪魔をするからです。
どうやってホークがクリスティーナと結婚したのかは定かではありませんが、大金持ちのジェイソンは流れ者のトラック野郎であるホークを嫌っていて、ホークはマイケルが2歳の時に家を出てしまったのです。
しかし、ロバート・ロッジアと言えば『愛と青春の旅立ち』のクソ親父です。それが可愛い孫を名ばかり士官学校に入れたという事は、もう根っからインチキ将校が好きなのでしょう。
従って金持ちのボンボンとして育てられたマイケルと、トラック野郎としてブルーカラー一直線のホークは全く価値観が違いますが、マイケルはスタローンお得意の共和党的価値観丸出しの教育でどんどんマイケルと打ち解けていき、ジェイソンはそれをあらゆる方法で邪魔しようとします。
ともすれば、この映画の本質はマイケルの奪い合いなのです。
聞くステロイド
ホークが賭けに勝つのを見ていたのが、5年間無敗の世界チャンピオン、ブル・ハーリー(リック・ザムウォルト)です。ぶっちゃけて言えばこの人が大ボスです。
ブルはホークに対戦要求をしますが、ホークはラスベガスで行われる世界選手権まで勝負はお預けと宣言します。ホークはこの世界選手権で優勝し、なおかつ自分に金を賭けて儲けようという算段なのです。
ブルは身長2メートル、スキンヘッドに筋肉モリモリマッチョマンの荒くれ者で、演じているのは本物のアームレスラーです。当時この人は筋肉俳優として人気があり、『フルハウス』とかにも出ていました。
残念ながら配信されているのは字幕版だけですが、もし可能なら日テレ版をお勧めします。ホークが羽佐間道夫で、ブルが郷里大輔という取り合わせで、耳にステロイドがかかりそうなくらいむさくるしい仕上がりになっています。
本作に関して言えば、むさくるしい程良いのです。むさくるしい声優を集めるのに金を使い切ったらしく、大塚芳忠が三役くらいこなしているのにも笑っちゃいます。
そういうのを抜きにしても、本作のサウンドトラックはジョルジオ・モロダーが手掛けていて非常にクールです。80年代らしさが炸裂しています。古き良き時代の映画です。
イタリア式父子愛
微妙な状況だったホークとマイケルの和解が決定的になったのが、ホークが生意気を言うマイケルにトラックを運転させるシーンです。
何しろトラックというのは運転に力が要るものですし、初めて運転して上手く行くはずもないのでマイケルは無様な姿を見せますが、どうにか運転できるようになってウキウキです。
これは男の子の偽らざる心理を鮮やかに描いたシーンです。やはり凄い車を転がしたいという願望が男の意識には刷り込まれているのです。
私はこのシーンを見て、各種映画で散々総受け認定してきたエンツォ・フェラーリ名言を思い出しました。曰く「この世に存在する唯一完全な愛は、父親の息子に対する愛情だけだ」
この瞬間のホークとマイケルは明らかにこの境地に居ます。つまり、こういう時は女は家で留守番です。ですが、留守番が居るから男が男を張れるのです。
共和党式父子愛
更にはホークはドライブインでマイケルにちょっと年上の不良少年と腕相撲勝負をさせます。
マイケルはテンプラ士官学校でちゃんと肉体を鍛錬していなかったと見えて、不良少年に負けて一旦は逃げ出してしまいます。
自分を負け犬にしようとしたとホークをなじるマイケル。しかし、ホークはマイケルが自分に負けたと叱り、「欲しい物が有ったら自分で掴め」と叱咤激励してリターンマッチに送り込み、見事勝利を収めます。
マイケルは男として開眼し、電話でクリスティーナに勝利報告をして凄く嬉しそうです。
スタローンの考える理想の父子像はこうなんだろうなというのが透けて見えます。ですが、それは別に間違っていません。
共和党的にはこれが正解なので、少なくともアメリカ人の半分くらいにとっては正しいのです。ともすれば、映画評論家の大半は民主党なのでこの思想に共感できず、この映画を悪く言うのでしょう。
アメリカン健さん
しかしここから話は悪い方向に進み、ホークとマイケルが到着するより先にクリスティーナは手術に失敗して死んでしまいます。
ジェイソンはこれ幸いとマイケルをホークから引き離しにかかり、ホークはマイケルを奪い返す為にジェイソンの屋敷にトラックで突撃を敢行して臭い飯を食う羽目になります。
ジェイソンは起訴を取り下げるのと引き換えにマイケルの親権の放棄とカリフォルニアからの退去を命じられ、単身ラスベガスの世界大会へと乗り込んでいきます。
この辺りの流れは驚くほど健さんの任侠映画に似ています。不器用な男が我慢に我慢を重ねて外道の元に殴りこむ。もっとも、この辺は脇道です。
しかし、母親の死による孫のメンタルの乱れを利用するとは、ジェイソンはとんでもない外道です。これはもう金子信雄とか天津敏のやるやり口です。
ステロイドの宴
ホークはトラックを7000ドルで売って自分に賭け、世界大会に臨みます。
ここからはもうストーリーも糞もない展開です。無茶苦茶楽しそうでむさくるしい腕相撲大会が展開されます。
どいつもこいつも明らかにステロイドバリバリの肉体でギャーギャー叫ぶ様は訳の分からん高揚感を与えてくれます。きっとこのホテルのトイレには注射器が一杯捨てられている事でしょう。
本物のアームレスラーが大挙出演していて、日本が誇る世界チャンピオン、南波勝夫氏もエキストラながら顔が見えます。もっとも、アームレスラーなのか単なる筋肉俳優なのか素人目にはよく分かりません。
そして、後にプロレスラーとして名を成すスコット・ノートンや、やはりプロレスラーで「ダッダーン、ボヨヨンボヨヨン」のCMで有名なレジー・ベネットも出演しています更には、ジェイソンの側近役でかのテリー・ファンクも出演しているのは驚きです。スタローンのプロレス人脈が生きています。
しかし、ノートンは新日、テリーは全日、ベネットは全女とくれば、やはり国際プロレスは仲間外れなのかとプロレス好きとしてはちょっとがっかりしてしまいます。
だけど大丈夫。国際プロレスには遠藤光雄が居るのです。あの人が居なきゃテレビの腕相撲大会は始まりません。
腕相撲は格闘技だ!
勝ったり負けたりで騒々しい大会ですが、準決勝まで進むと賞品のボルボのトラックを前に選手達のインタビューが入るのが面白い所です。
しかし、優勝賞金が10万ドルで25万ドルもするトラックまで貰えるとは、景気の良い大会です。やはり80年代は筋肉の黄金時代、ステロイドの黄金時代だったのです。
インタビューは格闘技の煽りVその物です。どうでもいい端役ばかりのはずなのに、なんだか重要に見えちゃいます。やはり腕相撲も格闘技なれば、こういう演出は不可欠なのです。
ホークはチャンピオンの座よりトラックが欲しいと訴えます。これはかなり切実です。ですが、スタローンがボルボとは全く似合わないと思うのは私だけでしょうか?
そして、ブルの口の悪さと騒々しさは群を抜いています。この名悪役ぶりは凡百のマッチョマンどもとは一味違います。
思うに、この人はガタイよりも芝居が上手いのを買われて選ばれたのでしょう。なんでも、シルクドソレイユに力技芸人として出演していた時期もあるそうです。
怒りのベガス
一方、実家に戻されたマイケルは、父の愛と祖父の汚さに同時に直面する羽目になります。
ホークは絶えずマイケルに手紙を出していたのですが、実はその手紙をジェイソンは隠していたのです。いくら何でもやる事が外道過ぎます。
マイケルは家から車を盗み、ホーク直伝の運転で空港まで走り、貨物に紛れ込んでラスベガスまで駆けつけます。この思いつめる性格、間違いなくスタローンの息子です。
一方、ジェイソンもラスベガスにやって来て、準々決勝まで勝ち残ったホークにトラックと50万ドルの小切手で買収を持ち掛けます。つまり、手切れ金です。
しかしホークはこの買収を断固拒否。テリー・ファンクをぶちのめして戦いへと戻ります。
ホークは怒りのパワーで準々決勝を制し、ついにはブルとの決勝戦に臨みます。
勝負は一層騒々しくなり、どいつもこいつもアドレナリンとステロイドでハイになって大騒ぎです。熱くなって審判につかみかかる奴まで居る有様です。
それどころか、ブルが怪しい薬をキメるシーンが入ります。まあ、スタローンも使っているのは公然の秘密ですが。
父子鷹
準決勝のタイミングで会場に到着したマイケルはジェイソンの差し向けた追手をかわし、ホークの下に辿り着きます。マイケルは完全にジェイソンに愛想をつかし、ホークに付く姿勢です。
怪我気味で怖気つくホークをマイケルは逆に叱りつけ、勝利フラグ100%の状態でブルとの決勝戦に臨むのです。これでこそスタローン映画、ジョニー・ロレンス推薦映画です。
スイッチが入ると人と言うよりトラックになるというホークの言葉も、明らかにステロイドをキメているヤバい言葉です。客の方も殺せとか言い出す有様です。この分だと客の方もコカインとかマリファナをキメてそうです。何しろベガスですから。
ブルが組む時にわざと手をホークの顔にぶつけるのは興味深いやり方です。是非ともこれを真似してみたいと思う事があるのですが、友達にそんな事をしたら腕相撲どころか口もきいてくれなくなるので、なかなか機会に恵まれません。
そして、当然ながらホークが勝ちます。もうここからは『ロッキー』です。ただし、本作は完全に女人禁制の世界です。この精神的ホモの極致と言うべき世界には、ジェイソンもデレてしまう有様です。
そしてホークは勝ち取ったトラックに乗ってマイケルと一緒に走り出します。汗臭い映画ですが、最後だけはちょっとだけ爽やかです。
BL的に解説
腕相撲とはセックスなり
この映画をBLとして見る場合、この思想を無視する事は出来ません。勿論、腕相撲は性別不問のスポーツではありますが。
そもそも、腕相撲とは鍛え抜かれた野郎同士が絡み合い、全身全霊を込めて相手を押し倒そうとする行為です。こう書くとかなりホモ臭いのがお分かりいただけるかと思います。
単純なパワーしかないデカチンでは相手をイかせる事が出来ないのもセックスに似ています。腕相撲は組み方の駆け引きから勝負が始まっています。つまり体位が勝負を左右するという側面を持っているのです。
そう考えると、ホークが相手の親指を掴むのが得意技というのも意味深です。小指なら女で、親指なら男。そして、そこを掴まれると男は力が抜けてしまう。握り金玉方式です。
インタビューを受けたカナダチャンピオンが、もっとテクニックに目を向けるべきという持論を述べるのも意味深です。やはりカナダはゲイの先進国ですから、言う事が違います。
とすれば、こんなゲイゲイしい営みに人生の全てを賭け、あまつさえトラックを売って勝負に臨んだホークは筋金入りです。勝った方が全てを手に入れるというバイオレンスポルノの境地に生きる男、スタローンなのであります。
マイケル慰安夫説
そもそも、マイケルがなんちゃって士官学校に通っていたというのがかなり意味深です。
ああいう学校に通う連中が本物の士官学校に通える身分になる事はまれで、実際は不良少年の矯正施設、さもなければ兵役が若者の根性直しに役立つと思っている毒親の欲望のはけ口に過ぎません。
いずれにしても、右寄りの質の悪い連中が持ち上げそうな性質の学校です。つまり、こういう学校では間違いなく陰湿な性的いじめが横行していると読む事が出来ます。
とすれば、ひ弱で生意気でしかも美少年のマイケルのがいじめの標的になるのは間違いありません。しゃぶらされるくらいの事はされているのが容易に想像できます。
知性が欠如していて血の気ばかり多い、金を持っていない前大統領のような悪ガキに夜な夜な慰み者にされるマイケル。実際にそういう事が世の中で起きているのは残念な事でありますが、フィクションである限りは良きBLです。
マイケル×
スタローンは総受けなので、久々の簡略掛け算でお送りします。禁断の父子BLという言葉は使い古されていますが、父親受けは珍しいはずです。
基本的にホークはマイケルが可愛くて仕方がないという前提があります。そしてクリスティーナもそれを分かっていたからこそ、マイケルを実家まで送り届ける役目をホークに託し、父子仲の改善を試みたのです。
しかし、ジェイソンの妨害工作もあって父子のコミュニケーションは完全に一方通行になっていて、マイケルはホークを全く信用せず、逃げようとさえする有様です。
おまけにマイケルは育ちが良いので、根本的にホークとは価値観が異なります。ダイナーでツナサラダを注文するなど、トラック野郎にホモ呼ばわりされても文句を言えない女々しい行動です。やはりトラック野郎は健康に気を使ってはいけないのです。
ホークが腕相撲に勝つのを見てもマイケルが冷ややかにしているあたりは、断絶の深刻さを物語っています。普通の男の子なら父親のあんな光景を見たら心がビンビンになってしまいます。
しかし、クリスティーナの調停もあってここから急にマイケルはデレ始めます。やはり男の子には母親の愛も必要なのです。
朝焼けの中で一緒に体操をするホークとマイケルの姿は、モロダーサウンドも相まって『トップガン』の濡れ場と全く同じノリで笑っちゃいます。ケリー・マクギリスは貧乳なので男みたいなもんです。
マイケルが完全に堕ちたのはこの直後、車の運転は11歳でも出来ると生意気こいた瞬間でした。
それならやってみろとホークがトラックを運転させますが、トラックの運転は普通の人間に出来る事ではないので、マイケルは想像以上に苦戦してしまいます。
しかし、ホークの指導もあって最終的に運転できるようになり、マイケルは大はしゃぎです。
この瞬間、マイケルは一つ大人になりました。そう、父に乗せてもらう事でムスコが大きくなったのです。エンツォ爺さんはこうも言いました。「男が女に愛していると告げる時、それは彼女に対する欲望を意味する」と。
この場合、男に欲望を抱く男ならば性別は関係ありません。そう、ここでホークの誘い受けが完璧に決まったのです。
気を良くしたホークはマイケルを自分色に染めようとたくらみ、ドライブインで腕相撲勝負をやらせます。
そしてマイケルが負けて泣いちゃうのも、恐らくはホークの淫房もとい陰謀です。
ホークはマイケルに「欲しい者は自分の力で掴め」と説教をかまし、帽子を与えて「俺の為に」とリターンマッチをやらせ、マイケルは勝利を収めます。
これは愛の力としか言いようがありません。マイケルは完璧に堕ちました。オーバーザトップとは、つまり愛の力の炸裂なのです。
おまけにここでジェイソンはド汚い手段に出ます。なんとならず者をけしかけてマイケルを誘拐しようとします。
スタローンにこういう手段が通じるはずもなく、作戦はあえなく失敗。ホークとマイケルの絆は却って盤石になってしまいます。この瞬間、世界の全てはこの父子の愛の為に回っていました。
しかし、病院に着くとクリスティーナは手術に失敗して死んでいました。これには父子の絆も揺らぎます。この2人がデキているとしても、やはりクリスティーナは特別な女性なのです。
マイケルはショックで実家に引っ込んでしまい、ホークはメンヘラを爆発させ、マイケルの居るジェイソンの屋敷にトラックで突撃する暴挙に出ます。
これはもはや『幸福の黄色いハンカチ』の健さんが酔っ払って人殺したのと何も変わりません。強くて優しい漢が大切な人を失うとこうなってしまうのです。
しかも、このせいでホークはマイケルの親権を手放す羽目になり、文字通り何もかも失ってしまいます。つまり、総受け男にはこういう破滅性も必要なのです。
そしてホークは単身ラスベガスへ向かい、トラックを売って賭け金を作り世界選手権に挑みます。一方、マイケルはホークが送った手紙をジェイソンが止めていた事に気付き、自分の了見を恥じて車を盗んでラスベガスに駆け付けます。
そう、ホークがマイケルに運転を教えた事がここで役に立ったのです。愛の力が起こした奇跡としか言いようがありません。
あのままホークが独りで戦っていたら、恐らく負けていたでしょう。腕の筋を痛めてホークはピンチに陥りますが、このタイミングでマイケルが会場までたどり着いたのも、神がこの父子に祝福を授けたという証拠です。
そしてホークはマイケルに励まされ、ジェイソンの妨害も阻止し、ブルに勝利して世界チャンピオンの地位とトラックを手に入れ、リングに駆け込んできたマイケルを抱きあげて喝采を受けます。
これは完全に『ロッキー』をイメージしています。そう、マイケルがエイドリアンなのです。クリスティーナは…そう、コンドームかポーリー。
全てが終わり、前のより大きくて豪華なトラックを手に入れたホークは、マイケルと一緒に運送会社を作ってどこかへと旅立っていきます。会社名をホーク&マイケルにするか、マイケル&ホークにするかでちょっと揉めるのも実にホモ臭いやり取りです。
ジェイソンも堕ちてしまったので、もうこの父子を止める物は何もありません。居住性抜群のボルボのトラックの後部座席が、スウェーデンポルノの世界に変身するのは避けようのない運命です。
ジェイソン×
私が思うに、ジェイソンはホモです。大体カリフォルニアの金持ちなんて50%くらいはホモだと私は信じます。
第一に、ジェイソンは妻と死に別れてずっと独身で居ます。大体アメリカでノンケの金持ち爺さんはこういう時は大喜びでモデル上がりか何かのオメコ芸者と再婚し、後々に相続で大揉めになると相場が決まっています。独身だと肩身が狭いのがアメリカなのです。
なのにジェイソンは結婚するでもなく、あまつさえテリー・ファンクなんかをまるで小姓のように従えています。
これはつまりジェイソンが実はガタイ専ホモであり、それを隠して苦痛に耐えてクリスティーナを作ったと考える事が出来ます。そうやって生まれた子供を溺愛するというのもゲイあるあるです。
孫をエセ士官学校に入れたのも、ガタイ専特有の過剰なマッチョイズムの発露であるとすれば合理的に説明できます。そう、ジェイソンはカリフォルニアの石原慎太郎なのです。
とすれば、一人娘がガチムチトラック野郎を夫に選んだ事実はエロゲー並みの状況です。義理の息子が理想の男。これはジェイソンにとってはとんでもない生殺しです。
しかし、法律と運命は常にホークに味方します。判例から言ってジェイソンがマイケルの親権を得る可能性はゼロ。しかもホークは予想に反してマイケルを共和党的に手なずけてしまう有様です。
それでジェイソンはあらゆる汚い方法でマイケルの親権を奪い取ろうとします。この辺が実に石原慎太郎です。大好きな弟を軍団に奪い取られ、息子にもバレバレなくらい嫉妬してしまったあの男と全く同じメンタリティです。
その方法がいちいち強引で粗いのもジェイソンのメンタルの乱れを物語っています。あの雑な誘拐は明らかに後先を考えていないヒステリーです。
しかし、ホークがクリスティーナロスで更にメンタルを悪化させ、屋敷に突っ込んできたことで汐目が変わります。一転攻勢です。
ブタ箱に入れられたホークにジェイソンは弁護士を差し向け、親権の放棄とカリフォルニアからの退去を条件に告訴を取り下げると取引を提案します。急にやる事がスーパー攻め様風になってきました。きっとカストロやウェストハリウッドではジェイソンはああいう感じなのでしょう。
そして、私が思うにこれはジェイソンの策謀です。更にはわざわざジェイソンがホークをラスベガスまで追いかけて来て、手切れ金として「金で買える最高の」トラックと50万ドルの小切手を渡そうとするのに至ってはそれを裏付けています。
つまり、親権を放棄したとしても、ホークはマイケルに会いたいと思うのは当然です。マイケルに会いたければ俺のをしゃぶれとか言うつもりだったに違いありません。
しかし、息子の愛を知らないジェイソンと、息子との愛に生きるホークでは役者が違い過ぎます。ホークこの誘いを断固拒否し、テリーを殴り倒して闘いに戻っていくのです。
そしてホークはマイケルの愛によってブルを打倒し、それを見てジェイソンも許してしまいます。この強引さを減点材料にする評論家が非常に多いのでしょうが、ジェイソンホモ説を取るならばこれは合理的に説明できます。
つまり、ジェイソンがガタイ専であるとすれば、腕相撲世界チャンピオンの義理の息子が居て、その義理の息子とブロークバックな関係になるというのは最高の展開なのです。しかも、ホークは愛するマイケルを一回り立派な男にしてくれたのですから。
恐らく、あの後ジェイソンは全てを許し、マイケルとホークの為に惜しみなく金を使って運送業界に打って出るはずです。
そして、ホークはジェイソンに言います。「あんたがそっちなのは初めて会った時から分かってた。ケツの貸し借りなんてトラック野郎の間じゃ当たり前だ」と。
そして一も二もなく結ばれるジェイソンとホークなのです。父子三代の愛の力でボルボのトラックが全米を疾走します。
ブル×
トリはライバルBLでいきましょう。やはりこれが究極の王道です。
ブルを分析すると、興味深い事実が浮き上がってきます。つまり、ブルは確かに口の悪い荒くれ者ですが、別に悪い奴じゃありません。
そもそも、ブルとホークの間には何も遺恨はないのです。ただ腕相撲という戦場で相対しただけで、例えば殴り合いの喧嘩をする理由はどこにもない関係です。
ですが、ブルは明らかにホークに対して興味津々でした。思うに、ブルは金や名誉以上にとにかく強い男が欲しい、典型的な強い男フェチのように見えます。
実際、ブルはダイナーにぶらりと現れてホークと戦いたくてあれこれと絡みますし、それで断られて汚い言葉を使いますが、別に殴りかかって無理矢理勝負を挑むわけでもなく、あくまで世界選手権でやりたいというホークの意思を尊重して引き下がります。
思うに、ブルはああして腕相撲の行われる場所をうろついては、強そうな奴と戦って稼いで暮らしているのでしょう。俺より強い奴に会いに行くというわけです。
そこにスタローンが現れたわけですから、ブルの強い男レーダーのヒューズが飛ぶのは当然です。
そして、明らかにブルはステロイドをキメていますし、実際トーナメントの最中に何やら悪い薬を飲んでいるシーンが挿入されます。
ああいうのを飲むと最終的に不能になりますが、短期的には性欲が高まるとされています。多分、ブルは負かした奴を更に掘る事で性欲を満たしているに違いありません。女なんて弱いから願い下げです。強い男にしかブルは興味が無いのです。
そしてホークは狙い通り決勝戦でブルと相対します。ブルはステロイドでキメキメのビンビン状態で、おまけに手が解けて焦らされてパニック状態です。
とは言え、ホークの顔に手をぶつけるのはやり過ぎです。明らかに先っちょだけで焦らされている状態に近似しています。
ところがブルは負けると実に潔く、ホークの手を持ち上げて勝利を祝福してくれます。
そして、ホークはチャンピオンになった以上、勝ち逃げは許されません。来年も出場してブルとのリターンマッチに臨まなければいけません。
いや、なんなら『ロッキー3』や『ハスラー2』のように当日の夜にでも再戦してもおかしくありません。左腕でやっても面白いでしょう。いずれにしても、その後は第三の腕でおっぱじめるのは当然の帰結です。
お勧めの映画
独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介し
『ロッキー』
『ロッキー2』
『ロッキー3』
『ロッキー4/炎の友情』
『ロッキー5/最後のドラマ』
『ロッキー・ザ・ファイナル』
『クリード チャンプを継ぐ男』
『クリード 炎の宿敵』
『リベンジ・マッチ』(2013 米)
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