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第88回 女必殺拳(1974 東映)

 さて、3月3日は女の子の日であります。昨年は『女囚さそり』でお送りしましたが、今年も女の映画でお送りします。

 ウクライナ情勢があまりにきな臭い事ですし、極めつけにアホな映画で行きましょう。千葉ちゃんのカラテ映画の女バージョン、我らが志穂美悦子をスターダムに押し上げた『女必殺拳』でお送りします。

 19歳の若くて可愛い悦ちゃん演じる女ドラゴンこと李紅竜が主人公であるというという以外、本家の千葉ちゃんのそれと特に内容は変わりません。カラテ映画にストーリーなど有って無いも同然です。

 勿論守役として千葉ちゃんや石橋先生も出演し、監督山口和彦、脚本鈴木則文とくれば映画史上最強にジャンクな取り合わせであり、アホな映画に仕上がるのは必定です。

 女の映画でもそこは東映です。脇を固めてくれる野郎どもがホモ一直線で楽しませてくれます。美少女とホモが揃えば映画は死角なしです。

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真面目に解説

東映名物女バージョン

 この種の映画をレビューする度言ってきたことですが、東映はドル箱シリーズを作ることに成功すると、そのコンセプトを使いまわして女バージョンを作って稼ごうとする伝統があります。

 すなわち、健さんの任侠映画が流行れば藤純子の『緋牡丹博徒』が作られ、これまた健さんの『網走番外地』が流行れば梶芽衣子の『女囚さそり』が作られたわけです。

 本作もまた千葉ちゃんのカラテ映画の女バージョンを作ろうという単純な発想で、緋牡丹博徒を手掛けた鈴木則文の元に企画が行き、想定を超える大当たりを取りました。

 これ以降しばらくこの流れは途絶えますが、平成になって『極道の妻たち』が苦境にあった東映を生き返らせたのは御存じのとおりです。

 なんなら『セーラームーン』や『プリキュア』だって戦隊ものや仮面ライダーに相当影響を受けています。今やこの方法論は東映の根幹にあるのです。

 とは言え、本作の主演に悦ちゃんが選ばれたのは全くの偶然であり、ある種の奇跡だったのです。

千葉ちゃんの秘蔵っ子

 千葉真一は日本が世界に誇るアクションスターであり、コロナさえなければエクスペンダブルズに出演したであろう傑物ですが、彼の偉大な点はJAC(ジャパン・アクション・クラブ)を結成して後継者を育てた点です。

 勿論JACの出世頭は真田広之をおいて他ないわけですが、彼は千葉ちゃんがカラテ映画でバリバリやっていた頃にはまだ子役でした。

 志穂美悦子はもう1世代上(5歳年上)で、東映伝統の流行った映画の女バージョンをという発想で台頭することが出来たわけです。

 元々本作は海外市場を狙ってアクションにかけては香港ナンバーワンと目されていたアンジェラ・マオの主演で作られる予定でした。

 そこへ千葉ちゃんがJACで修行中だった18歳の悦ちゃんを売り込み、都合よくマオが理由不明ですが不出演になり、見事主役の座を勝ち取って本作が作られました。

 香港のスターよりギャラも安く、結果として本作は千葉ちゃんの映画共々海外でもよく売れ、東映は実に良い拾い物をしたわけです。

強くて可愛い悦ちゃん

 本作は香港と日本のハーフで少林拳の使い手の李紅竜(志穂美悦子)が、兄で麻薬Gメンの万青(宮内洋)が日本で捜査中に消えたというので日本へ探しに行って大暴れという筋書です。

 妹が悦ちゃんで兄が宮内洋とは凄い一家があった物ですが、18歳の悦ちゃんはホモもノンケに走るほど可愛く、またアクションは千葉ちゃんを食う勢いです。

 というより、千葉ちゃんとは動きが根本的に違うのが観て取れます。千葉ちゃんは歌舞伎並みのオーバーアクションで痛そうな技を繰り出しますが、悦ちゃんのそれは軽快にしてしなやかで、文字通り美女と野獣という趣です。

 紅竜という名前は鈴木が緋牡丹お竜にちなんで付けたもので、それだけに鈴木則文的女性像が紅竜にも覗きます。強くて美しくて優しい、野郎の理想像がそこにはあるのです。

たのしい李一家

 紅竜が身を寄せるのが横浜で中華料理屋を営むおじの玉堂(近藤宏)の元で、いとこである治郎(南城竜也)や麗子(橘まみ)共々万青を探しながら暴れるのが本作の根幹です。

 これに同門の早川絵美(同名)と外部協力者でバレリーナ兼空手家で鬼に強そうな名前の湖城しのぶ(堀早苗)が加わってちょっとした群集劇の様相を呈します。ここが千葉ちゃんのそれとは少し違います。

 この一族のキャスティングを見ると、当時の東映がアクションの出来る若手を一気にまとめ売りしようとした意図が読み取れます。

 千葉ちゃんはスターなので迂闊に共演者を選べないですが、新人の悦ちゃんなら遠慮はいらないというわけです。まあ男衆はカラテ映画から特撮や時代劇にという流れで成功を収めたと言っていいでしょう。

 対して女優の方は全然です。というのも、当時の東映で女優は慰安婦でしかなかったのです。というより、本作の女優陣は千葉ちゃんの愛人が集められたと言われても驚きません。

いつもの人達

 さて、悦ちゃんと若い衆だけではちょっと不安なので、女必殺兼シリーズにはカラテ映画のレギュラーというべき面々がお目付け兼助っ人として登場して安定感とさらなる暴力を与えてくれます。

 名実ともに御守役なのが石橋雅史です。むしろ千葉ちゃんは必ずしも必要ではないですが、石橋先生抜きのカラテ映画など大山倍達先生の言葉を借りればダンスカラテ映画です。

 李一家の所属する少林寺東京道院に遺恨を持ち、万青を誘拐した麻薬組織に雇われる犬走一直という変態的なネーミングの武道家が石橋先生の役どころです。

 囚人の護送シーンでよく見かけるような黒い編み笠を被った子分を大量に従え、東京道院に復讐しないと武道界に居場所がないのでどんな汚い手でも厭わないというキャラクター造形は完全に怪人です。

 というより、特撮とカラテ映画、そして時代劇は相互に影響し合っています。それらを一貫して説得力のある悪役として行き来していた石橋先生は貴重なのです。

 この抗争にドラゴンサイドで割って入るのが道院長(内田朝雄)の親友の息子である響征一(千葉真一)です。

 最初の立ち回りに敵か味方かというポジションで格好良く割り込み、院長に元空手主将、元レーサー、元大使館警備員と全く必然性のないプロフィールを紹介され、犬走りを撃退し、最後の殴り込みにも参加と、千葉ちゃんの俺様ぶりが偲ばれます。

 尤も、悦ちゃんを立ててやろうという意思はちゃんとあったと見えて、主演の時に見せるオーバーアクションはちょっと抑え気味ではあります。

 悦ちゃんも悦ちゃんでDV亭主を返り討ちにした際には殺してしまったと思って真っ先に千葉ちゃんに電話して指示を仰いだといいますから、良き師弟であったという事なのでしょう。

ラスボスはタニマチ気質

 本作の黒幕で麻薬組織のボスである角崎(天津敏)は悪の組織の長として完璧な仕上がりを見せています。

 プールにパツキンの愛人を泳がせながらクラシックをガンガンに流してシャンパンと葉巻を楽しみながらチェスを指し、プールサイドでは配下の変態怪人達が必要以上に叫び声をあげながら物を破壊する稽古に励んでいるのです。

 おまけに自室には回転ベッドに天狗のお面、拷問ルームまであるのですから、これにもう一つ何か足せというのは相当な難問です。

 これにドン引きして怪人をゲテモノ呼ばわりする犬走も人の事は言えない出で立ちですが、角崎はこれを競走馬や高価な犬を買うのと同じ道楽と称して意に介しません。

 つまり、角崎はタニマチなのです。ですが、どうせ飼うなら変わった人間を飼う方が面白いという言葉が笑わせます。怪人連中がゲテモノである事を自覚はしているのです。

 さて、カラテ映画において金子信雄より天津敏が選ばれるのにはちゃんと理由があります。平素健さんに叩き斬られてばかりで目立ちませんが、この人は隠れた殺陣巧者であり、アクションが出来るのです。

 南米で牛を50頭も殺したという訳の分からん過去も語られます。肉屋をやっていたわけではないでしょう。つまり、角崎もまた怪人の一人なのです。

 最後は上半身裸でウォーズマンみたいなかぎづめを付けて自ら闘いに赴くのですから、まこと理想の悪の大ボスと言えましょう。

カラテ映画は怪人が命

 角崎の養っているゲテモノ連中の紹介がある意味ではこの映画最大の山場です。というより、これはカラテ映画には欠かせない楽しみと言えましょう。

 おどろどろしいテロップでバックボーンと名前を披露され、スクリーンを占拠しながら主に物を破壊する稽古に励む彼らは完全な変態であり、そのノリは菊池俊輔のBGMのあいまって戦隊シリーズや仮面ライダーのノリです。

 というより、本当に特撮で怪人役をやっていたような人たちがカラテ映画でも怪人を担当しています。つまり、多くの怪人は武道家ではなく偽物です。

 参考までに、本作に登場する怪人達の肩書を列挙しましょう。

・高砂流吹矢 鉄頭僧
・沖縄古武道二丁鎌 上江州鉄心
・中国古武道トンファ ネレー
・南半球空手チャンピオン エバ・パリッシュ
・タイ式キックボクシング アマゾネス7
・日本元流棒術四段 馬八元
・蒼心流武術 スピンゲル

 どうでしょうか。私はこの文字列だけで興奮してしまいます。

大部屋魂

 さて、カラテ映画においてJACの若い衆は非常に優れた斬られ役、殴られ役として映画を下支えしています。

 しかし、JAC出身の名優というと所属者に比べて実は非常に少ないのです。これはもうそういう体質なのでしょう。縁の下の力持ちを育てる場所なのです。

 というわけで、カラテ映画の見せ場である壮絶な殺され方をする要員には東映の大部屋から顔が怖い人が揃えられます。勿論、殺されるだけの外道な行為を事前にする必要があるので簡単な役ではありません。

 千葉ちゃんが日頃世話になっている彼らを引き上げようとして『ピラニア軍団』を作ったのはある意味当然の流れだったのです。尤も、今回目立っている人は全員『悪役商会』サイドなのですが。

 特に首を180度捻られて階段落ちというタランティーノも一目置く死に様で有名なのが若頭格の林(山本昌平)です。この死に方は山本昌平自らの発案だというので、彼の死に様は熱意とアイディアの大切さという物を教えてくれます。

 裸にノースリーブジャケットというオークその物の姿で麗子を手籠めにするお色気担当の村上(佐藤晟也)は千葉ちゃんに腸を引きずり出されて死にます。デブ、悪人面、けど憎めないというキャラクターをフルに生かし切った良い死に様だと思います。

 私が個人的に押したいのが牧師崩れで水中銃が武器の赤沢(日尾孝司)です。というのも、この男は見た目のインパクトは凄いですが、その存在にストーリー上の必然性がないのです。

 ここにも私は千葉ちゃんの面倒見の良さを見ます。日尾孝司という人は俳優でもありますが、本職は殺陣師で御存じ『キイハンター』も手掛けています。

 つまり、日頃世話になっている彼に目立つ役をプレゼントしたのではないかと私は思うのです。『007 ダイヤモンドは永遠に』のブバール大佐みたいなものです。

見せないエロス

 悦ちゃんが歴代の東映バトルヒロインと決定的に違う点は、脱がないという点にあります。

 紅竜に至っては終始長袖長ズボンで通す有様で、50代の岩下志麻さえ平然と脱ぐのを考えると異色です。

 ところが、このクリーンさがウケて悦ちゃんは女の子から非常に人気がありました。女子プロレスとかが流行っていた時代ですし、女性の解放とかそういう難しい背景があったのでしょう。

 もっとも、東映の主要顧客が野郎だったのは確かなので、脇の女優陣がおっぱい出して穴埋めし、悦ちゃんも脱ぎはしませんが吊るされて拷問されたりと間接的にサービスします。

 結局のところ、暴力とエロが東映の映画なのです。

BL的に解説

角崎×犬走

 さて、ここから先は悦ちゃんも立ち入れぬ女人禁制のハッテン場。男が女役になる虹色空間であります。

 まず明確にしておかないといけないのがここです。これが基本になってきます。角崎は格闘技を題材にした作品に非常に多い強い男フェチです。

 角崎は自らも相当な使い手でありながら武道家を養い、その稽古風景を眺めながら楽しむ変態野郎ですが、愛人の泳ぐプールサイドで稽古する怪人達という構図は角崎にとって愛人と怪人がほぼ等価である事を意味します。

 そこへ割り込んできたのが犬走です。自分の事を棚に上げて怪人達をゲテモノとdisって嫌がられる風景に私は色々と察してしまいます。

 強い男フェチはお互い様です。そして犬走は南米で牛を50頭殺したという角崎の全盛期を知っているのです。

 犬走は妬いていたのです。強くて古い仲の俺という男が居ながら、あんなかませ犬みたいな連中を雇っていて、誘ってもくれない。

 それが面白くなくて犬走は自ら売り込みに来たのです。そして申し合わせたようにワイヤーアクションでやり合って二人はたちまち和解して手を組むことになります。

 これは二人の絆を象徴するシーンです。犬走としてはしばらく放っておかれた寂しさを発散し、角崎が衰えていない事を証明できればいいのであり、角崎は最初から犬走を雇うつもりでちょっとじらしプレイをしたに過ぎません。俺の片腕になれとまで言うのです。

 互いの連れているゲテモノがご主人様の後ろでファイティングポーズをとっているのにも注目です。つまり、彼らはそれぞれ大奥を持っているのです。千葉ちゃんにとってはJACがそうだったわけですが。

 少林寺を刺激するのが嫌でナンバー2の林が口止めしていたという事実にも注目です。

 これはより露骨なホモのジェラシーです。これで手柄など立てられてしまっては自分への寵愛が犬走に移るのは明白であり、面白くありません。

 現に角崎は事が上手くいったら道場を作ってやると太っ腹宣言をしちゃうのです。まさに大奥モノのノリです。しかし、角崎は相当なスーパー攻め様です。

 ところが犬走は意外にも任務失敗を繰り返し、響にやられて負傷してしまうと寵愛を失ってしまいます。角崎は大奥を作るくらいなので浮気性なのです。

 それでも放り出したりはしないのが腐れ縁という奴ですが、紅竜と響が殴りこんできたときには飲んだくれている犬走を「役立たず」と罵ります。

 この辺が角崎のケツの穴の小さい所であり、天津敏たる所以です。何故犬走が飲んだくれているか考えてもみなかったのでしょう。

 犬走は負けた事、道場を手に入れ損なった事に不貞腐れているのも確かですが、同時に角崎を裏切ってしまった後悔で酒に逃げているに違いないのです。

 そういう相手こそ慰めックスしてやるどころか他の手下の前で罵って何が男でありましょうか?こんな男に勝利の女神が味方しないのは当然です。

響×犬走

 東京道院の高弟である響にとって、藤田を付け狙う犬走は宿敵です。現に紅竜の始末に失敗してリカバーの為に道場に殴り込んで藤田を罵る犬走の挑戦を買って出るのです。

 レーサーから大使館警備員という響の職歴といい、自ら事件に突っ込んでいく行動様式と言い、響は危険を愛する男なのでしょう。

 なかなかの強者であるしのぶを愛人(千葉ちゃんなので特にこう表記する)にしているのもそういう事です。強い奴フェチとは危険を愛する男を指す言葉なのです。

 犬走に応戦したのも藤田への恩義を否定はしませんが、同時に石橋先生という歩く危険を求めたのも確かでしょう。

 激闘の末犬走の左腕を破壊して勝利をおさめますが、ここで犬走の手下が応戦するのに注目です。そして彼らは最後の最後まで犬走を見捨てず死んでいくのです。

 楯の会で先生に殉死した者が何人居たかと考えれば、千葉ちゃんがJACを最後に追い出されたのを考えれば、ジャニーズが今この瞬間も分裂しているのを考えれば、これは半端ではありません。

 あくまで犬走は相手に恵まれなかったのであり、相当なケツ物であった事は間違いないという事です。

 これ以来犬走は角崎に罵られながら飲んだくれるだけの存在になり下がります。アルコールに狂いながら彼は何を考えたのでしょうか?角崎よりむしろ響の事を考えていたと私は思います。

 角崎に役立たずと罵られながらも響がやってくるなり刀を手に襲い掛かったのは、もはや損得勘定を超えています。負傷して酒浸りで勝てるわけがないのですから。

 それを証拠に犬走はほとんど抵抗できず、鏡にぶつかって顔中ガラスまみれになって息絶えます。

 これは名誉の挽回であるとか、角崎の寵愛の回復であるとか、そんなちんけな物を求めて闘っていたとは思えません。強敵に殺されたいという強い男フェチの本能に従ったように思えます。

 倒れ伏した犬走を見る響の表情はどこか哀しそうです。響はいずれやって来る己の末路を犬走の姿に見たのです。そうして犬走という存在は響の心に鏡の破片のように突き刺さり、その末路を迎えるまで抜ける事がないのです。

 このバイオレンスポルノの境地は千葉ちゃんと石橋先生だからこそ出せる物です。極真空手とはもはやホモセックスと言っても過言ではありません。

角崎×万青

 万青は地下に繋がれ、毒薬の致死量の人体実験に使われています。これがそもそも不自然です。

 体力を見込んでという説明でしたが、勿論BL的に見ればこれは角崎の下心です。何しろ悦ちゃんの兄貴で宮内洋ですから、万青は余程の強者に違いありません。

 つまり、強い男フェチのバイである角崎にとって万青は思いがけず手に入れた極上のオスだったわけです。しかし、万青は麻薬Gメンなので角崎の言う事を聞きません。

 そこで薬の出番と相成るわけです。麻薬を打って禁断症状のどさくさにいう事を聞かせるもよし、麻酔で眠らしておもちゃにするもよし、媚薬だって勿論あるでしょう。

 とすると、角崎が紅竜と自ら決着をつけるのに拘ったのも意味深です。角崎はバイなのですから。

 一応兄妹なので似ている事になっているはずです。ましてや強い女は貴重です。しかも万青は死んでしまっています。そう、紅竜までもものにしようとしたのです。

 しかし、これ以上この辺には深入りしない事にしましょう。どうせ悦ちゃんは千葉ちゃんの物なのです。真×千×志の夢のバイトレインJAC線夜行列車が運行されたのは一度や二度ではないはずです。

 むしろ私にとってはされていない方が期待外れです。そんな真面目腐った千葉ちゃんなど千葉ちゃんじゃないと思います。どのみち暴力亭主などコンドームです。

藤田×響

 トリはまさかの組み合わせです。『仁義なき戦い』で最強なのは子分も居ないのに山守さえ操る大久保だという説がありますが、何のことはない、広島ヤクザは大友も含めて全員大久保のオジキのアンコだったのです。

 響は元レーサーで元大使館警備員という事になっています。というのに注目です。つまり今は亡き父の親友である藤田に養われる身の上です。

 この構図は『殺人拳』シリーズにおける政岡と剣のそれと全く同じです。きっと血の気が多すぎて仕事の続かない響を見かねた藤田が、懲らしめて自分の手元に置いているとかそういう背景があるのでしょう。

 とすれば、響が藤田がデキるのは無理からぬ話です。藤田は響に泣き親友の面影を見て、響は藤田に亡き父の面影を見ている。ルックスに目を瞑ればかなり純度の高いBLです。

 犬走の挑戦を買って出た時の「こんな奴の挑戦を受けたら少林寺の恥」という言葉にその辺のメンタリティが読み取れます。響は確かに藤田の門弟でアンコですが、あくまで客分であり、こういう汚れ仕事は自分が買って出れば藤田の名誉を損なわないという尊い忠誠心が根底にあるのです。

 そして犬走を撃退していつでも東京道院は受けて立つと宣戦布告する響を見ている藤田の嬉しそうな笑みをご覧ください。ついでに「ああいう拳法では段はやれんぞ」と軽口を叩いて笑い合うのですから相当です。

 こんな事を言いつつ、藤田は父響の若き日の荒々しいファイトスタイルを受け継ぐ響が可愛くて仕方ないのであり、もう自分に万一の事があったら響を後継者にすると決めているに違いないのです。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介し

『激突!殺人拳』(1974 東映)(★★★★★)(カラテ映画の原点)
『空手バカ一代』(1977 東映)(★★★★)(極真カラテの原点)
『極悪拳法』(1974 東映)(★★★★)(変わり種のカラテ映画)

『緋牡丹博徒』(1968 東映)(★★★)(東映バトルヒロインの元祖)
『女囚701号/さそり』(1972 東映)(★★★★)(東映バトルヒロインの最高峰)

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