見出し画像

第44回 河内のオッサンの唄(1976 東映)

 秋祭りの季節が近づいてきました。コロナウイルスの影響で大掛かりな祭りは軒並み中止。東京下町に居を構える私としては、何処へ行っても祭囃子の聞こえてこないのは寂しいものがあります。

 と言っても、私の生まれは高知県。高知というのは意外に祭りが少ないのです。よさこい祭りは高知市ローカルのうえ地元住民はあまり興味がなく、いざ祭りとなっても神輿も担がないし、盆踊りなど習慣そのものがありません。

 従って、初めて高知を出て盆踊りに直面した時は面食らったものです。特に錦糸町の河内音頭。あのゴージャスさには度肝を抜かれました。

 もっとも、河内音頭とは書いてその名の通り、大阪河内の物です。長い前置きになりましたが、今回は『河内のオッサンの唄』でお送りします。

 大部屋俳優から上り詰めた稀代の個性派俳優、川谷拓三の記念すべき初主演作であり、この年大ヒットしたミス花子の同名のナンバーを映画化した歌謡映画です。

 拓ボン演じる河内松原の白タク運転手徳松ら、河内の人々の下品でアナーキーで人情味あふれる生き様と珍騒動を生き生きと描く人情劇です。

 長くソフト化されず、またキャストもスタッフもあまりに狂気がかった陣容だったので余程酷い作品なのかと思っていましたが、とんでもありません。よく出来てます。

 弱さを武器にのし上がった拓ボンのキャラクターを完璧に生かし切ったのは言うまでもなく、脇を固めるイカれた面々も光っています。

 そして自らも出演するミス花子のナンバーと河内音頭が印象的に用いられる、歌謡映画としても完成度の高い一本です

 そして観終わった時気付くはずです。河内の男もピラニア軍団もホモなんだと。

河内のオッサンの唄を観よう!

 Amazonにて『JUNK FILM by TOEI』による配信があります。さあ、無料登録して東映のアホな映画沼に浸かろう

真面目に解説

河内のオッサンの唄
 原曲の方の『河内のオッサンの唄』は若い人は普通知らないと思いますが、一定以上の世代の人は絶対に知っているというインパクトの強い歌です。

 なにしろ殆ど河内弁(正確な河内弁ではないらしい)のオッサンが語りかけるだけです。一度聴いたらもう忘れられません。

 その是非はともかく、この曲と『じゃりン子チエ』と『嗚呼花の応援団』あたりが世間の大阪観を決定付けたと言われる程の歴史的名曲なのです。

 取りあえずこの曲を最初だけ聞いてみて、何だこの下品なオッサンはと眉をひそめるのは早計です。最後まで聞くとわかります。河内のオッサンは下品でアナーキーですがとても人情深いのです。

 この曲を元に映画を作るという発想は、拓ボンの初主演を飾るにはまさにうってつけだったと言えます。


河内音頭とは
 そしてもう一つのメインテーマが河内土着の盆踊りである河内音頭です。関西並びに墨田区に住む人には説明不要でしょうが、普通の盆踊りと違って生演奏で実にゴージャスです。

 その筋のレジェンドである二代目三音家浅丸とその一門が音頭を担当し、事あるごとに楽しげな河内音頭が映画を盛り上げます。この映画を観ただけでも関西の盆踊りが凄く楽しそうなのが窺えるレベルです。

 普通のBGMさえ河内音頭テイストです。もはや河内音頭は河内に限らず、関西の人々のDNAに刷り込まれているのです。

 そしてもはや準レギュラーの『兵隊やくざ』に出てきた浪曲師「河内音頭と浪曲は一家の家業を手伝う従兄弟」くらい近い関係と語ります。確かに浪曲と河内音頭はつながりが深く、上方の浪曲師の多くは河内音頭もやれるのです。

 そして「毎年八月終わりに大阪の築港高野山で上方の浪曲師が浪曲もやる河内音頭を開催するから是非来てくれ」CMをねじ込んできました。来年の夏まで覚えていたら行ってみましょう。あれは楽しいですから。


コンプリート歌謡映画
 本作の監督は『南国土佐を後にして』も監督した斎藤武市。日活を辞めてフリーになり、この時期は東映で仕事をしていました。

 専ら二本立ての添え物作品や煮詰まって来たシリーズ物を手掛けていたので、本作でもプレッシャーなくかなり好き勝手に撮っています。

 元が小津安二郎の弟子筋なので、本作の馬鹿馬鹿しくもちょっと悲しくもあるストーリーにはマッチした監督だったと言っていいでしょう。

 無茶苦茶適当なスケジュールで撮られたそうですが、この狂気のキャストと題材をしっかりまとめ上げるあたりは実力者です。

 BGMの使い方も上手く、歌謡映画としても特筆すべき一本になっています。


河内男の生き様
 この映画が河内の実態を正確に捉えているのかというと疑問符が残りますが、こんな感じだと言われても納得してしまうし、強く反対する人もあまり見かけないのも確かです。

 河内と言えばまず第一に楠木正成公の出た土地であり、河内の農民はいざとなれば家伝の鎧兜を着て戦場に駆けつける建前になっているような土地です。

 そして闘鶏が好きです。同じく河内を舞台にした勝新の『悪名』ものっけは闘鶏でしたが、本作もそれは同じです。

 拓ボン演じる徳松と、地主の息子である忠三郎(室田日出男)がそれぞれの軍鶏を志賀勝の仕切りで戦わせるところからこの映画が始まります。勿論大金が賭けられているのは言うまでもありません。

 そして河内の長老であるアル中の六升のオバハン(ミヤコ蝶々)が近所の飯場でリンチされたのを知るや男衆は河内音頭をBGMに総出で飯場を襲撃します。楠公様はいなくなっても河内武士の精神は失われていないのです。

 そして見事勝利を収めた河内の男達は女衆のクラッカーに出迎えられて警察署を出るのです。凄く楽しそうな土地です。

 その他本作における河内男の生態は箇条書きすると以下のようなものです

・やられたらやり返せ
・喧嘩は相手を殺さなきゃOK
・困った奴を見過ごすな
・隙あらば酒盛りと河内音頭
・毎晩博打
・闘鶏は男の嗜み
・博打のカタはきっちりつける
・女と寝たら責任を取って大事にする
・河内女と寝ればその日から河内の男

 書いてみて思いました。高知の男と大体一緒です。高知出身の拓ボンが徳松を見事に演じ切ったのは当然だったのです。地で行けちゃうのですから。


拓ボンの魅力
 ヤクザ映画はそれ自体が拓ボンこと川谷拓三の出世物語であるとは散々このnoteで述べてきた通りですが、ついに拓ボンは今作で主演の座を掴み取ったのです。

 しかし、拓ボンの価値はその弱さと哀愁です。負け犬でなければ拓ボンではないのです(室田日出男は権力の犬で志賀勝は珍しい種類の犬)

 その点徳松はまさにはまり役です。夜な夜な博打に出かけては褌一本になるまで負け、主人公補正を持って尚そこらのチンピラくらいにしか勝てない戦闘力。

 主人公なので決めるところは決めますがそれでも全く格好つける余地はない。だけど無駄に度胸と男気があり、優しい男です。

 逆に言えば、こんな役を演じきれるのは川谷拓三を置いて他ないのです。松方弘樹や渡瀬恒彦には不可能です。だから拓ボンはスターになれたのです。


夏純子可愛い
 特にこの映画は女性陣が強烈です。博打狂いダメ人間である徳松を何故か慕う花火工場に勤める花子(夏純子)が一応のメインヒロインです。

 何故か徳松に好意を寄せていて、徳松に博打を辞めさせるために自ら身体を賭けて勝負に挑み、一生に一度のバカツキの徳松に負けてしまいます。

 徳松はその勝負に勝ったというのに「お前みたいなじゃじゃ馬」と馬鹿にして儲けた金共々賭場にばらまいて帰ってしまいます。

 しかし、その夜花子は六升ら近所の人達と白無垢姿で徳松の家に押しかけ、そのまま結婚式に突入してしまいます。

 そして近所の人たちが大騒ぎして帰ろうとしないので、大和川の土手で初夜を迎えてそのまま夫婦になってしまうのです。婚礼装束を案山子に着せていい事しちゃうのが笑いどころです。

 そして周りがあてられるほどいちゃいちゃしながら新婚生活を送ります。拓ボンがヤクザ映画でどれだけ酷い目に遭わされてきたか知っているお客さん達は、この光景に涙を禁じ得ないのです。

 『トラック野郎 御意見無用』でもそうでしたが、こういう気の強くて気立ての良い女こそが夏純子の真骨頂なのです。まさに東映向きのヒロインです。


シャブ打って何が悪い
 前半は河内の人々のアナーキーな生態が描かれつつ進みますが、徳松の白タクに東京から来た唐長(岩城滉一)のトラックがぶつかった所から話が大きく動きます。

 何故か徳松の舎弟を志願した唐長は新婚の徳松の居候になり、早速それを祝って宴会が行われますが、何しろ岩城滉一なので女達は放っておきません。

 岩城滉一はこの翌年に覚せい剤で捕まるわけですが、唐長はなんと東京の組から薬を持ち逃げして河内に落ち延びてきたのです。東映は預言者を雇っていたのでしょうか。

 そして岩城から貰ったという事で室田日出男も捕まりました。そして唐長はヒロポンの歴史を語る上で絶対外せないキーパーソンのミヤコ蝶々演じる六升にも気に入られてしまいます。

 この映画の中毒性はつまりそういう事なのかもしれません。


猛獣河内女子

 重ねて言いますが、とにかくこの映画は女性陣が強烈です。花子の可愛さや六升のオバハンの得難いキャラクターは特筆すべきものですが、脇の女たちもそれぞれどぎつい魅力をたたえています。

 二人目のメインヒロインで近所の風呂屋の娘であるスケバンの梅子(清水美恵)は唐長に「あんな小便臭い鼻たれ娘」と馬鹿にされたのに怒り、「小便臭いか試せ」逆レイプ同然に唐長と良い仲になってしまいます。

 スケバンのくせに処女だったので大騒ぎになり、唐長は父親の松市(西山嘉孝)に殴られて河内の人間になる事を強制されてしまうのです。殴るついでに感想を聞いちゃうのが東映です。

 そして同じく唐長に色目を使ったのが色狂いの千枝子(花柳幻舟)。もうキャスティングが狂気の沙汰です。浪曲師の彼は「伝統芸能の仕組みが色々おかしいのは確か」と彼女には同情的でしたが。

 浮気してタコ焼き屋の亭主の仙吉(榎兵衛)の元にタコ焼きを手土産に出戻って怒られますが、子供たちを指さして「博打で疲れた後のオチンチンでやるさかいにこないに出来の悪いガキができてしもうたんじゃい」と狂気にあふれた逆ギレをかまします。

 そして大トリが六升の娘で東京でファッションモデルをしているというかほる(奈美悦子)です。全盛期の奈美悦子だけに抜群に美しい彼女がストーリーを大きく動かします。

 しかし、これら女性陣を完全に食ってしまうのがミヤコ蝶々の名人芸なのです。これを見るだけでもこの映画には一見の価値があります。


謎の友情出演
 梅子の一件で名実ともに河内で生きる決意をした唐長が梅子諸共古巣の東京の組にさらわれた事でストーリーが風雲急を告げます。

 新幹線で東京まで取り返しに行く徳松。何故か乗客に平尾昌晃が居ます。生前のあの人は大晦日は川口オートレース場で大勝負をして紅白歌合戦で指揮者をやるのが恒例だったので実質河内男です。

 そして東京に着けばガッツ石松が新宿東映の宣伝をしています。この人はキックボクシングを「軍鶏の喧嘩」と河内風にディスってましたし、タイトルマッチの認定証に「いつ何時誰の挑戦も受けけなければいけない」と書いてあったのを根拠に街で喧嘩をしたのでやっぱり実質河内男です。

 そしてかほるが刺されたというので駆け込んだ病院の医者は川地民夫です。この人は名前が名前ですし、何より日活出身のくせに生き生きと東映ヤクザ映画に出ていたので実質河内男でしょう。

 ちなみに、ミス花子は実は河内ではなく奈良吉野の出身ですが、さいたまんぞうが岡山出身なのに比べれば誤差の範囲であり、やはり実質河内男でいいと思います。


クソ映画
 意気揚々と東京の組事務所に乗り込む徳松ですが、所詮は拓ボンなので簡単にやられてしまいます。

 しかも薬は唐長が捨ててしまったのでもうありません。そこでコインロッカーに隠してあると嘘をついてありあわせのカギを飲み込んで対抗するのですが、ヤクザの伏見(今井健二)に浣腸されて出るまで監禁という事になってしまうのです。

 イチジク浣腸を手に決めた表情の今井健二。迫真の演技で浣腸される拓ボン。こんな前衛映画を撮れるサムライが今の日本映画界に居ますか?

 残念というか当然というか徳松は漏らす事無く戦い抜いて修羅場を切り抜けたましたが、これが拓ボンの主人公補正の限界なのでしょう。

 しかし、これを千葉ちゃんや文太兄ぃにやれと言っても無理です。やはり拓ボンは得難いスターなのです。


殴り込み河内風
 最後は徳松は殴り込みに行きます。刺青模様のシャツを着て、オリジナルの河内音頭をBGMにして。健さんもびっくりです。

 そして唐長も連れションの上で合流し、闘鶏仲間を失うのが嫌な忠三郎も遠路駆けつけて甚だ頼りない陣容を整えて殴り込みます。

 もっとも、相手もボスが天津敏や安部徹ならともかく、所詮は今井健二なので釣り合いが取れます。河内軍団は不格好ながらも勝負を制し、麻薬と金を港にばらまき泥臭く映画は終わるのです。

BL的に解説

徳松ホモ説
 徳松は優しい男です。のっけから若い衆に危うく輪姦されかけた花子を褌一本で助け出すのです。

 しかし、そこに下心は全く感じられません。単なる河内男の義侠心で助けに行ったのです。

 そして一生に一度のバカツキで花子を勝ち取りながら、「お前みたいなじゃじゃ馬煮ても焼いても食えんわい」とつれない態度です。

 花子とは多分幼馴染なので、女として見れないとかそういう背後関係があるのでしょう。しかし、夏純子です。そんな言い訳はコンドームの空き袋程の価値もありません。

 つまり、徳松はホモなのです。だから河内の人々は夜襲をかけて強制的に二人を結婚させたのです。六升のオバハンは何もかも知っていたのです。

 河内ルールに基づけば、徳松がホモだからと言って秘かに徳松に思いを寄せる花子をそのまま放っておくわけにはいかないのです。

 土手でお床入りとなっても「ハメやがったな」と徳松は醜い抵抗を見せます。「博打のカタはちゃんとつけな一人前の博打打ちになれんで」と花子はやり返し、脱ぎます。ハメます。

 「はしたない」と徳松は照れますが、こうなれば多少ホモでも力づくでどうにでもなります。やめとけやめとけと言いながら脱いじゃう徳松。

 例え偽装結婚であったとしても、夫婦は仲が良いに越したことはありません。挙句「僕は幸せだなあ」なんて徳松は言っちゃうのです。『エレキの若大将』加山雄三の疑惑については述べました。

 とにかく、形はどうあれ二人は河内のベストカップルとなったのです。これで河内音頭ができるレベルの純愛物語です。


唐長×徳松
 優しい男は受けなので拓ボンは基本的に受けです。岩城滉一が拓ボンに掘られるという画は捨てがたいですが、私は関係性重視なのです。

 二人の出会いは最悪な物でした。花子と結婚して仕事に精を出す徳松のタクシーに唐長がトラックをぶつけたのです。

 徳松は河内ではそれなりに恐れられる実力があるのでいきり立ち、示談金を要求しますが、なんと唐長は徳松に舎弟にしてくれと懇願します。

 当然徳松は難色を示しますが、唐長は追いかけてトラックで引っ掛けて海に落ちると無理心中で脅しをかけて無理矢理承知させます。

 心中は河内音頭の定番ですが、男同士というのはちょっと聞いたことがありません。探せばありそうですが。

 しかし、徳松は唐長を舎弟として優しく迎え入れ、披露目の為に近所の衆を集めて宴会まで開くのです。物凄く嬉しそうです。

 河内のオッサンの唄の歌詞を完全にコピーしながら甲斐甲斐しく宴会の世話をする花子。こういう徳松の優しさに惚れたのです。

 その夜、徳松と花子の夜の河内音頭に嫌気がさした唐長は家を抜け出し、梅子とデキちゃうのですが、このおかげで唐長は居候を脱して河内の一員として認められるのです。徳松の嬉しそうな事。完全に唐長ラブです。

 そして二人で闘鶏デートに向かいます。河内に根を張る決意をした唐長はその道すがら薬を道にばらまき、東京と決別します。かくして愛のシーソーゲームが始まりました。

 しかし、徳松は所詮ダメ人間なので忠三郎に闘鶏で敗れ、なんと花子を忠三郎にカタに盗られてしまうのです。流石ピラニアだけにNTRも共食いです。

 さすがに後悔する徳松。その姿を見かねた唐長は、忠三郎が座敷に芸者と音頭取りを呼んで河内音頭を踊らせて楽しみ、花子とお床入りという段になって座敷に殴り込みをかけます。この展開も河内音頭テイストです。

 しかし、花子は博打のカタはしっかりつけるという河内ルールに基づいて唐長の救援を拒否し、顔を潰された徳松は唐長に殴られます。

 ところが、花子は一枚上手です。なんと土壇場で忠三郎に博打を持ち掛け、軍鶏までおまけに連れて戻ってくるのです。コンドームは取り消します。こんな奥さんが欲しいです。

 障害を乗り越えて激しく揺れるシーソー。この夜、徳松と唐長は真の意味で兄弟になったのです。ホモセックスを鶏姦と呼ぶくらいですからね。

 このまま二重夫婦が幸せに続けば映画が進みません。梅子にせがまれてミナミのディスコに出かけた唐長ですが、梅子は近所の人から金まで盗んで河内を出る覚悟を決めていたのです。

 ところが唐長は古巣の組の組員に見つかりリンチを受けます。梅子のスケバンならではのカミソリ攻撃で窮地を脱して河内に逃げ帰りますが、徳松は唐長を「この泥棒ネコ」とまたしてもぶん殴ります。

 ネコですって。タチとはまさか言えないあたりに私は拓ボンのヘタレゲイもとい芸の神髄を観るのです。

 唐長は徳松たちに迷惑が掛かるのを恐れ、河内を出ようとします。そして大和川に架かる橋の上で組の姐さんと駆け落ちしようとしてはぐれた事、徳松を利用するために近付いたことをカミングアウトします。

 しかし、こうなると徳松は放っておけません。河内はヤクザも手出しできないほど守りが固いと大見得を切り唐長を守る事を宣言します。

 ところが徳松の言う割に河内は守りが甘く、たちまちヤクザに襲撃され、唐長と梅子はさらわれ、身を挺して阻止しようとした六升のオバハンは車に跳ね飛ばされてしまうのです。

 そして、六升は徳松に二人の奪還の約束と、ファッションモデルという事になっているかほるが組に居る事を告げて息絶えます。

 土手でキャンプファイヤー方式で六升を火葬した河内の男達は飯場に殴り込み、徳松は新宿へと単身乗り込みます。拓ボンのやる事としてはあまりに大それています。愛は拓ボンを健さんにするのです。

 そして伏見に浣腸されて監禁されますが、唐長言うとこの姐さんであるかほるを呼び寄せて縄を解かせてヤクザをケツに力を入れつつ撃退し、ヤクザに切りつけられたかほるを病院に運び込み、河内音頭に乗せて再び死地に赴くのです。

 途中橋から小便をする徳松。そこへ唐長も参加し、「関東の連れションって言うぜ」と同行を申し出すのです。

 ここで解説が必要でしょう。これは豊臣秀吉が小田原征伐の際に徳川家康と連れションをしたことに由来します。

 秀吉は戦国武将で唯一のガチノンケとして有名ですが、徳川将軍家は三分の二が男色の記録が残る遺伝子レベルのホモです。当時の武士はノンケが変態なので、三分の一も男を知らないという事はないでしょう。

 そして、十六代様は相撲と少年をこよなく愛し、ホモレイプで巨額の示談金を払った醜聞で有名です。横綱の二、三人は掘っているはずです。

 とにかく、二人は命をお互いに預け合う文字通り"臭い仲"なのです。続編の『河内のオッサンの唄 よう来たのワレ』でもこれは変わらないのですが、残念ながら配信されていません。機会を待ちましょう。


伏見×徳松
 鍵を飲み込んだ徳松。出させる方法は色々考えられます。吐かせるでもなく、腹を掻っ捌くでもなく、よりにもよって一番時間がかかって汚い浣腸という方法を取った伏見。

 それは何故か?趣味以外考えられません。だとすればあの浣腸を手にした時の決まった表情も説明が付きます。下の口に聞いてみようという王道です。

 浣腸などというものはされるとすぐ出ちゃうものです。なのに耐え抜いて喧嘩までしちゃうあたりに徳松の熟練のホモっぷりが見て取れます。

 つまり、唐長は事あるごとに男を大和川に連れ込んではしこたま酒と浣腸液を摂取してエンヤコラセのドッコイセしてるのです。大和川と言えば日本でも指折りの汚い川として有名ですが、つまりはそういう事なのです。

 花子との結婚式でいつまでも近所の人達が家から出て行かないのもこれで合理的に説明できます。そう、徳松は野外プレイが好きなのを六升のオバハンは知っていたのです。

 借りに徳松が想像を上回るホモでも、いつも男だけの河内音頭に耽っている大和川の土手ならパブロフの犬的にイケるだろうという計算です。


唐長×松市
 松市の娘への愛は常軌を逸しています。徳松と花子の夜の河内音頭に嫌気がさして松市の銭湯に逃げ込んだ唐長とのやり取りがそれを物語っています。

 「手出したらドタマかち割ったんぞ」と釘をさす松市。「あんな小便臭い鼻たれ娘」と唐長が返すと松市は怒りだし、「もうれっきとしたおなごじゃい」と唐長にお湯をぶっかけます。それを女湯で聞いていた梅子は力づくで唐長をモノにしてしまうのです。

 唐長に梅子を傷物にされてぶん殴ったまではまあ常識の範囲内です。しかし、挙句梅子の初物の感想を聞いたのは意味深です。

 いくら娘が好きでも流石に実の娘に手は出せません。しかし、唐長の登場は松市の心の均衡を狂わせます。「梅子にやったようにわしにもやってみい」と松市に迫られれば、唐長は断れないのです。

 六升のオバハンが「河内の女を不幸にしたら承知せんで」とくぎを刺したのもこれで説明が付きます。やっぱり六升のオバハンは何もかも知っていたのです。

 とにかく、全てが丸く収まって婚礼となるその前の晩、唐長は松市に結納を強要されるのです。


徳松×忠三郎
 拓ボンと室田日出男が酔った勢いで本当に一回くらいヤっていても何ら驚く事はありません。この二人がむしろ本作のBL的にはメインディッシュです。

 二人は博打のライバルです。徳松の「黄金バット」と忠三郎の「金剛丸」が戦う所からこの映画は始まるのです。

 動物愛護団体とかは絶対に認めたがりませんが、闘鶏愛好家は少なくとも負ける前の軍鶏にはあらん限りの愛情と金を注ぎます。つまり、二人が愛情を注いだ軍鶏を戦わせる行為は実質セックスなのです。

 負けた軍鶏への対応は様々です。軍鶏鍋になる事が多いのは当然ですが、なかにはヒステリーを起こして殺す飼い主もあるそうです。

 しかし、徳松は負けた黄金バットを「カシワにしたる」と言いつつ「痛かったやろ」と労い、大切に治療します。そんな軍鶏に優しい徳松に忠三郎が懸想する。それはむしろ当然の帰結なのです。

 そして忠三郎は賭けのカタに花子を手に入れます。これは当然間接ホモセックス狙いです。徳松にとって花子は大切な女房でも、忠三郎にとってはプレイに使うイボ付きのコンドーム程度の存在でしかないのです。

 しかし、花子は博打で自らの身体を取り戻し、ついでに金剛丸まで連れて徳松の元へ帰還します。

 なのに嬉しそうな忠三郎。「ええカカア貰うたのう」とご機嫌で二人で酒を酌み交わします。

 ついでに自分のサングラスと徳松のサンバイザーを取り換えるのがポイントです。これはあの角川春樹が趣味丸出しで作ったガチホモ時代劇『戦国自衛隊』でも行われた服交換セックスです。

 思えば忠三郎はわざと負けたのではないでしょうか?本命が徳松だとすれば、それは大いにあり得る話です。今夜ばかりは唐長も花子も寄せ付けずに二人は鶏姦行為に耽るのです。

 そして健さん&池辺良の露骨なパロディで殴り込みに行く二人に忠三郎は唐長のトラックを持って参戦します。

 連れションしてるタイミングで加勢に来るのは明らかにホモのジェラシーです。そして河内者の魂である半纏を着せて「浮世の風は冷たいやろ」と決め台詞です。

 唐長のようなぽっと出の帰化河内者俺の徳松を渡してたまるかという強烈な意志がありありと感じ取れます。

 「今度買うた金剛丸パート2でたっぷり勝負してやるさかいの」とツンデレをかますのもポイントです。やっぱり男同士はこれくらいでないといけません。

 それに加勢に来るならもっと大勢で来たらいいものを、一人で来たのも忠三郎の嫉妬深さの表れです。変にタコ焼き屋や風呂屋に手柄を立てられると俺の徳松を狙うライバルが増えてしまいます。

 そして二人はスタローンとシュワちゃん以上の不格好ながらも完璧なコンビネーションでヤクザたちを追い詰め、薬と金を港にばらまかせ、重要参考人として三人で手錠でつながれて河内へと送り返されるのです。

 釈放祝いが盛大に行われた夜、徳松と忠三郎は二人きりで闘鶏に挑みます。

 「金剛丸パート2がおらんやんけ」と訝しがる徳丸。

 「金剛丸パート2はここにおるわい。お前も黄金バット出さんかい」とおもむろに褌を取る忠三郎。

 ドン引く黄金バットをしり目に夜の闘鶏に耽る二人。けどこれじゃあパート3ですね。ついでに大和川の土手でいちゃつかせれば完璧です。そして、上手い具合に拓ボンはプロボクサーのライセンスを持っているのです。


お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します

『南国土佐を後にして』(★★★)(斉藤武市監督作品)
『トラック野郎 御意見無用』(★★★★★)(アホな映画に可愛い夏純子)

ご支援のお願い

 本noteは私の熱意と皆様のご厚意で成り立っております。

 良い映画だと思った。解説が良かった。憐れみを感じた。その他の理由はともかく、モチベーションアップと資料代他諸経費回収の為にご支援ください。

 軍鶏はちょっと飼ってみたい

皆様のご支援が資料代になり、馬券代になり、励みになります。どうぞご支援賜りますようお願いいたします