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世界一小さな芸術祭レポートNo1〜鍵からドアへ〜 

ある日寺越から連絡があり

「世界一小さな芸術祭をやるのでレポートを書いて欲しい」

とお願いされた。

世界一小さな芸術祭?何だそれは?

私は説明を求めたが寺越は

「話してしまうと面白くないので見てくれた後いろいろ説明します」

と言われた。
相変わらず強引で意味不明だ、寺越という人間は。
たまたま時間が空いていたので教えられた住所へ向かった。

うん?ここか?
普通の家だが、ここなのか?

年季の入った家

到着した事を寺越に連絡するとこんなメールが返ってきた。

ようこそ世界一小さな芸術祭へ 
階段を登り好きなだけご覧下さい
もし人間音声ガイダンスが必要な場合はお申し付け下さい。ただしコチラは有料(500円)となります

寺越の返信

どういうことだ。
てっきり寺越が表れて説明してくれるのかと思っていたがどうやらそうではないらしい。
そもそも人間音声ガイダンスとは一体なんなのだ。

階段もあるので場所は合っていると思われる。
私は寺越の罠に嵌まったような気分になりながら年季の入った家の階段を一歩一歩登っていった。

ドライフラワーがこの建物に合っている


階段を登りきるとスリッパが並べられていた。
スリッパの間には懐中電灯が鍵を照らしている。まるでアトラクションだ。この鍵は私にとってどういう鍵になるのだろう。


怪しい光の先に謎の鍵が

靴を脱ぎスリッパを履いて鍵をとりあえず手に持ち、あたりをみるとところ狭しと写真や説明が書いた紙が貼り付けてあるコルクボードや和紙などが目に飛び込んできた。

なんなんだこれは。
出会った人と作っていくぜ?なんだそれは?

入口付近の壁に説明文が書いてある。

「出会った人と作っていくぜ」というのは2021年から始めたおれのライフワークです。
様々な土地に行きその土地に住んでる人達と一緒にその土地の印象深い場所でパフォーマンスを作るという企画です。
今まで第一弾四国4件と第二弾北海道3都市と今回第三弾東京(世界一小さな芸術祭に発展)で行いました。
この空間では第一弾と第二弾の事を振り返り、そこで出来たものを中心に構成しています。

寺越隆喜

説明文


どうやら寺越は2021年にこの企画を思いつき、いろいろ動いていたのだろう(現在2023年第十一弾まで進行中らしい)
正直私は説明文だけではこの企画がどういうものなのか理解できなかった。とりあえず第一弾から順を追ってみる事にした。


左が説明文で高知は和紙で構成されている
左から徳島、香川、愛媛
北海道の蘭越は紙で構成されている
隣の部屋の表札に札幌と貼り付けている、大丈夫なんだろか
函館は3つの試みをしたようだ


写真と細かい文字をじっくり見ようとするがこの空間は全体的に暗い。明かりが欲しいと思った時に鍵を照らしていた懐中電灯の存在を思い出した。

このためにあったのか。

鍵を照らすと共にこの空間の光として機能してくれた。

全部じっくり見終えてものすごい疲労感に襲われた。まるで寺越の道中に付き合わされているような感じがした。ただ嫌な気はしなかった。

寺越はその土地に行きいろんな人にとにかく出会って関わってる。そこからまずは実際のその土地の情報をもらい作るもののヒントを得ている。そして作るやり方としては多くの場所では特定の人に焦点を当てその人を中心にパフォーマンスを作っている。

私が最も気になったのは徳島と蘭越だ。

徳島はボディペインティングとでも言うのだろうか、寺越が全裸で髪の長い女性に描かれている。
あまりにもその姿が強烈だ。
ただ私が気になったのは寺越本体ではなく描いている女性の方だ。全裸の寺越に対してあまりにも淡々と描いているように見える。一体どういうやりとりが徳島では行われていたのか興味深い(あとで調べたところ寺越のnoteに徳島の事が書いてあった)


蘭越は実際にパフォーマンスに使用した紙が壁一面に貼ってあった。いろんな字や絵が書いてあり多くの人が書いてくれた事が予想される。その時の様子を見ると実際ショーウインドウの前に人が沢山集まっている。失礼だが、なぜこんなに人が集まっているのか、文字を読む限りでは私にはよくわからない。人を集める何かがあったんだろうか(これもnoteに書いてあった)


他の場所も気になるところはあったが、これは本人に聞く事にしよう。かなりここで疲労したので本音を言えばもう帰りたかった。
ただレポートのお願いをされた身としてはこの先に進まなければいけないのだろう。実際疲労とは裏腹に少しドキドキしている自分も否定はできない。

そして常々視界には入っていたこの扉を開く時が来たようだ。

ここからが本番のようだ


ここで必要になるのがおそらくあの鍵だろう。
私はポケットから鍵を出しドアのところに手をかけた。

果たしてこのドアの先は私に何を感じさせてくれるのだろうか。


文 中谷計


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