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作品に「わかりやすさ」を求める人たち

※この記事は5分で読めます

こんばんは、エアロです。

今日は下記の記事についての感想を書きます。

【映像作品を早送りする人たち】

コロナ禍でおうち時間が増えた。サブスク含めた動画サイトが増えた。動画サイト内の面白そうなドラマや映画が沢山あって全部楽しみたい!

そういった経緯なのか、映像作品を「早送り」で観て、内容だけを把握する人が増えているそうです。

こういった人は「早送り」をする為に、間や行間を読むことをしません。無音になったら、映像が切り替わりそうになったら、ひたすら早送りします。

その為、誰が誰に対してどんな「台詞」を言ったか、それのみで内容を把握します。反対に「台詞」に出てこない表情や状況は、存在しないものと見做して解釈をされるようです。


具体例として、上記記事中に出てきたモノを紹介します。

とある作品にて、男女2人が、じっと向き合っているシーンでの解釈についてでした。

こちらのシーンは、言葉は無くても「お互いに好き合っているのではないか?」と、分かる人には分かるシーンになります。

これに対して、「『好き』ならば、どちらかが『好き』という筈なので、『好き』ではないのではないか」とあっけらかんと話す視聴者がいるという事でした。

そして、台詞にはない状況を視聴者に求める事を「解釈の余地がある」と楽しむのではなく、「分かり辛い」「私の理解力が足りない訳では無い」とクレーム・自己正当化をするという有様。

更に悲しい事に、製作委員会側は、そういった視聴者の意向を反映する為に、作り手に「状況を全て台詞に書け」と指示する有様のようです…

これでは、良い作り手は育ちませんし、文化も衰退してしまいます。

ですが、動画コンテンツは「収益が回収できればよい『質よりも量』の時代」に突入してしまったのかもしれません…


【2000年代の邦画バブル】

2000年代に、邦画製作に1つの革命が起こりました。

今までは映画製作会社が作っていたところを、TV局や出版社・広告代理店と共同で資金調達・広告宣伝・キャスティングする「製作委員会システム」として作るのです。

TV局や出版社から大ヒットドラマやベストセラー本を、その勢いそのままに映画へ落とし込んで、いわば「お墨付き」の状態で観客へお届けするのでした。

この時間をかけずに大規模展開できるこのシステムは、「踊る大捜査線」シリーズなど代表とした大ヒット作を連発し、一時の「邦画バブル」を間違いなく支えたものでした。

反面、元の作品がヒットして、それを映画ほかに横展開させる「ある意味安パイ」な考えもあり、オリジナルの脚本による作品は作り辛い状況が続きます。

観客はこの頃から、「わかりやすい」娯楽を求めるようにコントロールされた/若しくは考えなくなったのかもしれないなと考えています。

また、この「邦画バブル」の頃から既に「製作委員会」は映像作品の質よりも量にシフトする気があったのではないか?と思われる大筋の方針がありました。

それは「2時間」を超える作品を極力作らないという事です。

超人気作の続編や、アクションもので飽きさせない作りのモノ以外は、2時間を超える作品を作っても客が入らないと事前に判断され、無理くりカットしたりして2時間に収めたのでした。

当時の観客に対して既に、集中力を求め辛いと判断されたのか、2時間に収める事で上映回数を増やす狙いもあったのかもしれませんが、この時点から「製作委員会」は質よりも量で収益を確保する方針だったのかなとも考えられます。


【そして現在…】

コロナ禍で家に居る時間が多くなり、無料のYouTubeだけでなく、Amazon Primeを始め有料の動画サイトで映画やドラマを浴びるほど観ている人が、格段に多くなりました。

直近2年で倍以上の登録者数の伸びとなっています。

※ 下記のグラフは、(株)ヴァリューズのネット行動分析サービス資料より

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コロナ禍で人との対面・接触が減った事、いざ対面してもマスク越しで表情を読み取るなど、今までよりもコミュニケーションがし辛くなった世界となりました。

その中で、映像作品という娯楽に依存し過ぎて「早送り」という手段を確立した「台詞」という表面上でしか物事を見れなくなった人々が増えてしまえば、これからのコミュニケーションがますます困難になり、更なる混乱が続くのではと考えてしまいます。


【おわりに】

人生は有限で、映像作品は無限に生まれます。人生のどの時間を娯楽に充てるかは個人の自由にはなりますが、その娯楽に過度にハマる事で「台詞のみ」でしか状況判断できなくなる危険性があるのであれば、それは一種の中毒症状と見て、距離を取る必要があるのではないでしょうか。

映像はデータ容量が大きいもので、人間が大量に処理できるものでは無いと考えます。ジャンルに関係なく、映像作品というだけでも刺激物と考えて、大量に取り入れるのではなく、大人として選別して適度に楽しむ距離感が大事だと考えます。

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