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「「利他」とは何か」を読んで。

背景

新刊コーナーにあって興味があったので読みました。相手のために何かする。思いやりだったり、尻拭いだったり色々な背景がありますが、表立って見えるのは「相手のために何かした」ということです。そんな言葉を問うタイトルに惹かれました。

感想

本書の後半に進むにつれ、利他との繋がりが分かりにくくなったように感じました(私の読解力と想像力の問題だと思いますが。)。
前半の方は自分に身近な出来事を踏まえて書かれており、自分のモヤモヤだったりを上手く表してくれていると感じながら読みました。

自分のモヤモヤを上手く表してくれたと思うところを紹介します。

共感のデメリット

「共感から利他が生まれる」という発想は、「共感を得られないと助けてもらえない」というプレッシャーにつながる

p32より

障がい者を例にして書かれていました。特別支援学校の廊下に「好かれる人になりましょう」という標語があったそうです。しかし、この言葉は「(助けてもらうために)好かれる人になりましょう」という意味であれば、助けてもらう側にはプレッシャーになります。確かに考えてみると、障がい者を抜きにしても、自分が助けてあげたいと思う人は自分によくしてくれる人もくしくは、可もなく不可もない人が多いでしょう。率先して嫌いな人を手伝いたいと思う人は少ないと思います。

他にも共感のデメリットとして、自分に縁がないことへの利他行動が少なくなることです。

自分の身のまわりの状況を見て、かわいそうだなと思ったら、寄付するという行動をしていると他のことへ目が向かなくなります。

これを数字による利他にするのが、効果的利他主義というものです。自分が数値的に一番貢献できる行動は何か?を考えることです。本書でも、自分が直接何かしらを援助する団体に入って、援助+寄付をするよりも、大金を稼いでその一部を稼いで寄付する方が効果的だと思って行動する例が書かれていました。

しかし、何でも数値化することも問題であり、基準が数値で決められることで利他の精神を忘れ、より利己的になることも書かれています。

他者の支配

「誰かのためにやっている」ということが他者の支配につながることです。

これは、全盲になっている方を例に書かれていました。両目が見えないので、周りの方が気遣ってくれて色々予め教えてくれます。そのため、自分1人でやってみたくも相手の善意から教えてもらったり、手伝ってもらうと1人で、できません。この相手からの善意は大変良いことなのですが、相手から挑戦や自立する機会を奪って自己肯定感が下がると言っています。

以前読んだ、『「認められたい」の正体』では、承認不安について書かれています。この本を読んでから、老後に自己肯定感が下がる理由を自分で考えました。その時には、会社を辞めてから相手に誉められる機会が減り、相手から承認を得る機会が無くなります。また、どんどん自分でやれることが少なくなり、お世話される側になっていきます。この状態がある意味、この本の例と同じ状態で、色々やってみたいけれども、周りに補助されたりすることで新しいことをする機会を相手の善意から奪われることと繋がっているのではないか?と感じました。

信頼と安心の違い

信頼と安心の違いは、「不確実性」に開かれているか、閉じているかどうかと書かれています。

不確実性とは何かというと、相手が想定外の行動とって、自分に不利益が被ることです。

これに対して開かれているというのは、この不確実性があるのを知っても相手を信じること(=信頼する)です。

安心はその逆で、不確実性を無くすことです。

このページを読んだときに女優の芦田愛菜さんの信じることについての動画を思い出しました。

詳しくは動画を見て欲しいですが、似たようなことを言っています。

信じていた相手がいたとして、裏切られたと自分が感じるのは、自分が想う相手の理想像に対してそぐわない一面が出てきたのであって、そこを含めて信じられるのが本当の「信じること」というようなことを語っています。

このそぐわない一面というのが、意識していたか、していないかに関わらず、本書で書かれている不確実性と同じものだと思います。


最後に

結局、「利他」って何なのか?と言われれば、よく分かりませんでした。けれども、利他をとりまく考え方については色々知れたかなと思います。

興味があれば読んでみてください。

では。


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