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デジタル時代のメンタルヘルス:スタンフォード大精神科医から学ぶ、SNS中毒と向き合う「徹底的正直さの力」とは?

概要:本稿では、SNS中毒とそのメンタルヘルスへの影響に焦点を当て、アナ・レンプキー医師の洞察から得られた解決策を探ります。また、今日のデジタル時代における「徹底的な正直さ」の重要性と、それを実践しようとすることの難しさについて説明し、本物の人間関係を築くことがメンタルヘルスに与える影響について考察します。

前回の記事では、心理学とABAの視点から、現代人が依存症に陥りやすい理由について説明しました。今回は、精神科医の洞察から得た対処法についてお話しします。

ラディカル オネスティ:徹底的な正直さ

今回は、スタンフォード大学の精神科医、アンナ・レンキー博士によるYouTube動画「The Power of Radical Honesty(ラディカル オネスティの力)」から、誰もが依存症に陥りやすい現代社会における精神疾患への対処法をご紹介します。
Radicalは「根本的な、徹底的な」という形容詞で、Honestyは「正直、誠実」を指します。ですからここではラディカル オネスティを「徹底的な正直さ」と呼ぶことにします。

この動画では、自分に正直になることが心の健康につながると述べられています。しかし、「正直さ」と「心の健康」とどう関係があるのでしょうか?

「徹底的な正直さ」とは?

レンプキー博士によれば、「患者が自己について徹底的に正直に語れるかどうか」がメンタルヘルスの指標であり、予測因子であるとのことです。20年以上にわたり精神科医として数千人の患者の話を聞いた結果、このことを確信したと言います。
ここでの「正直さ」とは、自分の良い面だけでなく、欠点や醜さ、隠しておきたい部分も含めて自己を受け入れ、他者にも正直に伝えることを意味します。患者が快方に向かう最初の兆候は、「自己について正直に話し始め、自己の責任を正直に話し始めること」なのだそうです。

一方で、常に自分は「被害者」であり、都合の悪いことは全て他人のせいにして自分自身を語る人は、今後も精神的な回復の可能性が低いと指摘しています。

確かにこれは理にかなっていますね。
例えば「子供の頃にいじめられたから、今の私は成功できない」「あの上司は無能だから、私は出世できない」「生活が苦しいのは、政府の政策が悪いから」といった発言は自立の妨げになります。確かにいじめや上司、政府の影響は大きな影響を与えることは事実ですが、常に過去や他者に責任を転嫁し、被害者意識を持ち続け、自己憐憫に陥ることは立ち直る障害となります。

ウソの罠:精神衛生に及ぼす影響と自己成長への道

レンプキー博士は、現代社会における嘘の蔓延が精神的な健康に深刻な影響を与えていると指摘しています。

人間は嘘をつく

資源が限られていた先史時代には、食料を得たり危険から逃れるために、嘘をつくことが生存のために必要でした。ですから、嘘は進化的に遺伝子に組み込まれたスキルなのです。

しかし今日では、私たちは物質的に豊かになり、嘘をつくことは生存のために必要ではなくなりました。それでもなお、私たちは嘘をつくスキルを持っています。このように物質的に豊かな環境では、人間はより短絡的な快楽を得るため、あるいは受け入れたくない現実から目をそらすために、頻繁に嘘をつくのです。

例えば、子供が宿題をやっていないのに「持ってくるのを忘れた」と言い訳したり、SNSでは、昔ハワイに行った時の写真を今現在のものとしてソーシャルメディアに投稿することなどがあります。このような嘘は一時的には叱られることから逃れたり、多くの「いいね」を獲得できるかもしれませんが、長い目で見て成功への道ではありません。

嘘をつくことできちんと学ぶことができず、長期的な成長に悪影響を与える可能性がありますし、嘘がバレた時には信用を失ったり、ソーシャルメディア上で築いた自分の理想像と現実の自分とのギャップから精神的な健康に影響を与えることもあります。

要するに、ごまかしは時に厳しい状況を乗り越えるのに役立ちますが、嘘をつくことを習慣化し、必要のない時に嘘をつくことは成長や、より良い人間関係を妨げる可能性があるのです。レンプキー博士は、自己成長や真の人間関係を築くためには、自分自身や他人に対しても徹底的に正直であることがメンタルの健康のためには不可欠であると訴えています。

まとめ:感想

「徹底した正直さ」面白い視点ですよね。
確かに、心の健康のためには徹底した正直さが必要だと思いますが、現実にはそう簡単にはいかないですよね。自分の見たくない部分や隠しておきたい部分を素直に受け入れ、それを他人に打ち明けるのはとても難しいことですし、もしかしたらリスクや痛みを伴うかもしれません。
これは精神的に健康な人にとっても難しい課題ですから、すでに精神的に病んでいたり、自己愛性パーソナリティ障害を患っていたりする人にとってはさらに難しいかもしれません。

しかし、「徹底した誠実さ」に基づく人間関係こそが、真の信頼と安心を生み出すという点には大いに共感します。それはまさに「無条件の愛」に基づくものであり、そのような人間関係からこそ、私たちは真の信頼と安心を感じ、正直に自分をさらけ出すことができるのでしょう。

心の健康を保つためには、本当の気持ちを共有しあい、お互いの長所も短所も受け入れ、理解し合える人間関係が大切です。たとえ学校や職場で何か辛いことがあっても、徹底的に正直な付き合いができる家族や友人がいれば、つらい心が癒されるような気がします。

ですから、すべての人と徹底的に本音で付き合うのは難しいことですが、ストレスを癒し、幸せに生きていくためには、一つでもそういう関係を持つことが大切だと思いました。

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