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アメリカの教育崩壊がすさまじい

前回の記事で、アメリカのIQが史上初めて低下していること、そしてそれがヨーロッパや北欧でも見られる傾向であることをお伝えしました。一つの要因として、テクノロジーの普及とそれに依存する生活が私たちの認知能力の成長を阻害している可能性について触れました。今回は、それを裏付けるかのようなアメリカの教育現場の現実を紹介します。

コロナ後の教育の混乱

コロナパンデミックによる長期の学校閉鎖後、アメリカの多くの子供達が学校に戻らず、高い欠席率が問題となっているようなのです。

2021-2022年では、66%の子供たちが高欠席率(20-29%の欠席率)または極端な欠席率(30%以上の欠席率)の学校に通っていたことが明らかになりました。このデータは、非営利団体Attendance Worksがジョンズ・ホプキンス大学のEveryone Graduates Centerと共同で収集・分析したものです。このような欠席率の増加は、全米に広がる深刻な問題のようです。

子供たちはすっかり学校への魅力を失ってしまいましたが、その傾向は子供たちだけでなく、先生たちにも及んでいるようです。

教師の離職率の増加:教育現場の疲弊

コロナ以降、アメリカでは、校長と先生の離職率が急増しました。2021-2022年度には、教師の離職率がコロナ前の6%から10%に増加し、校長の離職率は 3 %から 16 % に跳ね上がりました。ノースカロライナ州では、2022年の教師の離職率が16%に達し、特に数学、科学、小学校教師の不足が顕著なようです。

YouTubeでは、多くのアメリカの先生たちが学校の現状を嘆いています。中学生が基礎力がなさすぎて、まったく授業にならないケース。また、2010年以降に生まれたアルファ世代の子どもたち、いわゆる 「iPadキッズ 」が大変で、躾をしないと授業を受けられないため、先生は躾ばかりして、勉強を教える前に授業時間が終わってしまうんだとか。また、集中力もなく、感情のコントロールもできない子どもたちは、勉強どころではありません。仕方なく親を呼び出しても、親も子どもと同じ考えで状況は改善されず、先生たちは心身ともに疲弊し、離職を選ぶケースが増えているようです。

生徒の成績低下

先生も不足し、生徒も来ないような学校ですから、魅力がないのも仕方がないですよね。しかも多くの子供達が長期に欠席をすれば、それだけ勉強も遅れてしまうことになります。

例えばメリーランド州のボルチモアでは、数千人の生徒が数学の成績で学年レベルに達していないことが報告されています。23校の全生徒の中で一人たりとも学年レベルに達していないという深刻な状況だそうです。23校の全生徒の中で一人もいないってすごいですよね。
確かにボルチモアはちょっと難しい地域かもしれませんが、裕福な地域でも避けられないようです。

私の住んでいる郡の隣、ヴァージニアのフェアファックス郡という地域は、裕福で教育水準が高い地域として知られています。Wikipediaによると、フェアファックス郡は政府機関やハイテク企業が多く、雇用機会が豊富なことで知られ、2021年の世帯所得の中央値は約124,831ドル(約19,512,085円)。フェアファックス郡の公立学校は、全米トップクラスの学区として知られています。そのような地域でも、コロナ後は生徒の成績が大幅に低下。新しい報告書によると、「F」評価を受けた生徒の数は、これらの生徒の2019-2020年の同時期と比較して、2021-2022年には83%も増加したようです。

教育への影響:すべての地域、所得層、人種に及ぶ

ハーバード大学教育政策研究センターおよびスタンフォード大学教育機会プロジェクトの研究によると、コロナ中の子どもたちの家庭環境、収入、インターネットの速度よりも、子供達の学力に大きく影響したのが、「住んでいる地域」だったそうなのです。特に貧困地域やマイノリティが多く住む地域、コロナによる死亡率が高い地域では、成績の低下が顕著で、数学では1.5年以上の遅れが出ています。これらの地域の生徒が追いつくためには、通常の授業よりも1.5倍の内容を、3年間続ける必要があるのだそう。これは事実上不可能と言っているのと同じことですね。

確かにこのような地域での成績の低下が顕著ではありましたが、同時にすべての地域においても同様の影響が見られたことも事実です。

家庭の文化の大切さ

興味深かったのは、投票率や国勢調査への回答率が高い地域では、子供達の成績低下が比較的小さかったことです。この違いは制度的信頼(Social Trust)の影響を反映していると言います。制度的信頼とは、社会の制度や機関、そしてそれを運営する人々に対する信頼感のことを指します。このような家庭や地域で育つ子どもたちは、コロナの学校閉鎖やリモート授業の成績への影響が小さかったと言います。投票率や国勢調査への回答率が高いということは、住民が自分たちの意見を公共の場で表明しようとする意識が高く、教育機関や政府に対する信頼も高いことが想像できます。ですから公共のルールに従う傾向も高く、結果として、コロナで学校閉鎖になり子供たちがリモート学習になり、サボり放題の授業スタイルになったとしても、「勉強はするものだ」という文化の中で、勉強ができたのかもしれませんね。

子供たちの未来

アメリカの教育の現状は日本以上に深刻です。行動分析では環境が行動を作ると考えるので、この環境に生きる子供たちが学校に行く意味を感じなくなるのも無理ないな、と思います。

今のアメリカの子供たちはほぼ全員がデジタルデバイスを使い、日本語情報にしかアクセスできない日本の子供達以上に、膨大な情報にアクセスできますし、同じ年くらいの子供のYoutuberやインフルエンサーも存在しています。

例えば、12歳のYoutuberライアン・カジくんは、おもちゃの紹介とゲームで、約3000万人の登録者と年収約40億円を稼いでいます。自分の遊びをYoutubeにアップするだけでこんなにも成功している、自分と同じ年の子供の例を毎日のように見ているのですから、学校に行って勉強する意味を見失うのも当然ですね。

少し前の子供の夢といえば、プロ野球選手、社長、総理大臣、博士など、日々の努力が必要な職業が人気でした。しかし、現在では、eスポーツ選手、プロゲーマー、YouTuber、インフルエンサーがその座を奪いつつあります。これらの職業なら、今すぐにでもなれる可能性がありますしね。

子供たちにとって、ChatGPTに聞けば一瞬で仕上がる勉強を、コツコツ積み上げていくのはバカらしく思えるかもしれません。テクノロジーの進歩とともに、益々勉強の意味を見出せなくなる恐れがあります。

日本も同様の影響を受けつつありますが、まだそこまで深刻ではありません。しかし今後、発展し続けるAIが言語の壁を取り除くことで、日本の子供たちも同様の影響を受けるかもしれません。

今、育児に奮闘されている保護者の方々は、子供のデバイス利用にルールを設けたり、自然の中での外遊びや伝統的な遊びを取り入れるなど、意識的な対策が必要だと強く訴えたいです。

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