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窓辺と女

窓辺から見上げた星は光り方を教えてくれない。

どれくらい経っただろうか。室内なのにコートを着たままあたしは窓辺に突っ立っていた。タバコの煙が目に入って我に返った。殆どが灰になった可哀想なタバコを一口吸ったところで自分が泣いている事に気付いた。しょっぱさを苦みでかき消すように慌ててもう一口煙を吸い込む。泣くためにタバコを吸っているみたいでまた涙が出てきた。

左へ少しずれたら1階へつながる階段がある。暗い。鳴る音を探す。無意識に手を伸ばす。小さい頃怖かったこの家の暗闇も、今ではこの手の中にある。届くのなんて本当はすごく簡単で、あたしは星を掴んだまま泣いていた。あたしの体はここから動かない。バカなあたしも窓からあの星の光がここに届かないことくらい知っている。ライターを擦る乾いた音だけが暗闇に響く。

2本目を吸い終わる頃には泣き止んでいよう。