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小学校中学高校教師の労働環境を一気に改善する新政策案:給特法を廃止せよ!!

1.日本の学校教師の労働時間は世界一長い

まず、先進国で比較した中学校教員の勤務時間の次のグラフをご覧ください。

日本の教員は世界一の長時間労働なのに、そのうち授業時間は半分以下

上載のグラフは、中学校教員の週の平均勤務時間が60時間である割合が半数を超える国は日本しか無いという事を示しています。

更には、2014年10月には、就任一年目の新人教師である嶋田友生氏(27歳)が、練炭自殺により、この世を去っています。

嶋田さんの時間外残業時間は、毎月128~169時間であったとの記録が残っています。

そして、この一件だけではなく、全国的に教員の自死や過労死が多発しており、毎年400人~500人は亡くなっているとされています。


1-1.問題だらけの給特法

一般的に、ここまで教師の労働時間が長くなってしまっている最大の要因は、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)にあると考えられています。

給特法とは、簡単に言えば、教員の月給の4%を手当(教職調整額)として支払うだけで"教員が行う時間外労働の全てに残業代を払わなくて済む"という法律です。


給特法は、1971年に成立いたしました。

何故、手当の額が月給の4%であるのかと言いますと、法律制定前の1966年に教師の残業時間の調査を行った所、平均残業時間が月8時間程度であったためです。

しかし、給特法制定から50年経った今、小学校の一ヶ月の平均残業時間は97時間50分中学校の一ヶ月の平均残業時間は114時間となっており、実情から乖離した法律となってしまっています。

ですから、私は、"給特法は直ちに廃止すべき"であると考えております。


現在、タイムカードやICT機器を用いて、出退勤を管理している学校全体の2割のようですが、今後は、全学校において、タイムカードやICT機器を用いた労働時間の管理を徹底すべきで、"教師の残業0時間且つ持ち帰り残業0時間"を目指すべきです。

この目標を実現するには、"教育予算を上げる事""教育の効率化による教師の労働時間の徹底削減"2本柱で行う事が必要不可欠です。

本noteでは、その具体策について、述べて行きます。


2.動画授業の導入

まず、私は、"授業は作品"であると考えております。

現状では、どんなに素晴らしい授業を行ったとしても、その場限りで終わってしまい、後世に残る事はありません。

ですが、その素晴らしい授業を、映像として残すことで、何回も使いまわす事が出来て、"質の悪い生授業を受けさせるのであれば、質の良い動画授業を受けさせた方が良い"と、私自身も思っております。


教育研究家の妹尾昌俊氏の行った教員向けの調査では、下図のように、小学校教師の約90%が、流すような授業を行っていると回答し、中学校においても、約70%の教師が同様の回答をしています。

【教員向け調査】流すような授業になっているか


更に、近年の小学校教員採用試験の倍率は年々落ちており全国66の自治体の内約半数30の自治体で、その倍率は1倍台となっており、九州地方のある県では、定員割れする事態になっているようです。

公立学校教員採用試験、小学校は過去最低2.7倍…文科省

そして、2022年4月からは、"教員免許が無くても、知識や経験を持った社会人を教員として採用できる"制度も始まりました。


つまり、何が言いたいかと申しますと、教員の大半が流すような授業をするような状況で尚且つ、採用倍率が下がり、直接的に言えば、質の落ちた教師が増えてしまっている現状で、本当の良い授業は産まれないという事です。

ですから、本当に質の良い授業を、動画形式で用意し、子供達に提供する事が、子供達の更なる学力向上に繋がると考えます。


2-1.自発的な学習が何よりも重要

一般的に、学力を向上させたり、学問への見識を深めるためには、自発的な学習が欠かせません。

ですから、宿題も大切ではありますが、動画授業を導入する事で、"家に帰っても、授業を見返す事が出来る"という環境を子供達に用意する事ができます。

YouTubeが好きな子供達は多いですから、YouTubeを見るのと同じ感覚で授業を復習出来れば、学問への知識や理解が更に深まる事は間違いありません。


2-2.授業の教材研究や授業準備の時間も減らせる 

教員の多忙 授業準備できず

教師の休日出勤や放課後の労働時間を増やしている主要因である部活動については、第5章で後述いたしますが、授業準備も、教員の時間外労働を増加させる大きな要因になっています。

ですから、動画授業を取り入れる事により、基本的には授業準備もする必要が無くなり、行うとしても、家に持ち帰って行うのではなく、学校内で済ませる事が可能となると思いますので、教師の労働時間を減らす上では欠かせないという事です。


3.学校の存在意義は、"子供の人格形成"にある

まず、教育基本法の目的及び理念である第一条の条文をご覧ください。

第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)

つまり、授業を行う事によって学力を向上させる事よりも、子供の人格形成を優先すべきだという事です。

勿論、学校の授業も重要ではありますが、学校内での友人関係の形成や放課後の活動、課外学習や学校行事への参加を通して、子供の人格は形成されます。

ですが、長時間労働が蔓延する現状の公立小学校や中学校では、自身の仕事に手一杯で、子供の人格形成に念頭を置いた教育は出来ていないと言っても過言ではないでしょう。

その証拠に、小中学校のいじめの件数や、小中学生の自殺人数の数は、年々増え続けております

小・中・高生の自殺が2年連続で300人越え


学校でのいじめ認知、過去最多61万件 目立つ小学校の増加

教師と言うのは、学問を教える以前に、人生の先輩であり、人生の生き方や悩みについてこそ、積極的に関与して、正しい方向に導く事が重要であり、学校や教師の存在意義であると考えております。

ですから、教師達が、学問以外の教育に専念する上でも、動画授業を取り入れ、基本的に生授業は行わず、動画授業で済ますという方針は、社会で生きていくために必要な子供の人格形成にも役立つという事です。


4.全ては文部科学省に原因がある

まず、教員が過労死したり、学校で不祥事が起こると、度々話題にあがる教育委員会ですが、その実態は、中央官僚制を隠すために存在する、何の実権も無い形だけの組織でしかありません。


4-1.教育委員会は名ばかりの制度である

教育委員会は、戦後の1948年に、教育委員会法が成立したことに始まります。

GHQは、"戦前の教育制度下では、中央官僚が教育内容の全てを決めていた"事を問題視したため、日本政府に対し、教育に関する地方分権を行うための改革を行わせました。

そこで、その改革を実現するために作られたのが、教育委員会になります。

ですが、2023年現在でも、学習指導要領という通知を介して、全国の学校教育の内容を全て取り仕切っているのは文部科学省であり、教育委員会ではありません。


教育委員会というのは、たったの5人の集まりであり、肝心の教育委員についても名誉職と化しているとの指摘が多く、実質的な権限を持たない形だけの組織に過ぎません。

一応、教育委員会には、実務組織である事務局もありますが、構成人数は700人前後に過ぎないので、大規模調査を行ったり、教育に関する方針を決め、実質的な権限を持つのは、予算も人員も豊富に持つ文部科学省以外にあり得ません。


4-2.現行の学習指導要領制度の撤廃

以前のnoteでも述べたように、地方分権改革は、今後の日本に必須になります。

何故なら、現在の中央集権的な行政体制は、"各中央省庁に豊富な予算と人員があり、各地方自治体にも、予算や人員が豊富にある"という前提がある事で、成立し得るものだからです。

ですが、その前提は、既に昭和で完全に崩れ去っています

現状、平成から令和にかけて、各中央省庁の人員や予算が削減され、各地方自治体も同様に、予算や人員が減らされ続けています

この傾向は、社会保障費が増大し続け、国家の財政が破綻しかかっている現状において、不可逆と言わざる負えないでしょう。

ですから、"全国どこでも、質の良い同一の行政を提供する"事を諦め、地方分権改革を行い、地域ごとの行政を提供するのが、現実的であり、必要であると考えます。

それにも関わらず、無理に中央集権的な行政を維持した結果教育のみならず、保育や医療など、国が関与するあらゆる分野で問題が噴出していると考えて間違いないでしょう。


前置きが長くなりましたが、少子化で教員の数が減り、教育予算が減っている現状では、中央政府の出す通知である学習指導要領に従う事は不可能であると考えられます。

現在、"学習指導要領は、法令であり、従わない教員は法的に罰せられる"という現状もありますから、それを改善するため、学習指導要領自体を撤廃し、地方自治体毎に、実情に沿った新しい学習指導要領を制定し、学校と地域主導で、教育内容を決定する事が必要であると考えます。


5.部活動に力点を置かない

[解説記事]第1回 部活動の役割を考える(その3)先生にとっての部活動

現状では、部活動の顧問に任命された教員は、残業代が一切支給されないにもかかわらず、放課後や休日も、業務を行わなければならず、"部活動は、休日出勤の主要因"となっております。

確かに、部活動も、子供の人格形成に重要ではあると思いますが、教師にサービス残業を強要してまで、維持しなければならないなら、廃止で良いと思います。

ですが、学校の予算を充てたり生徒から月謝を貰う事により、外部顧問を用意する事は十分可能だと思います。

ですから、文部科学省やその他公的機関は、学習指導要領という形で圧力をかけ、強制的に部活動を行わせる事を辞め、部活動に関する自治権を学校にしっかり与え、教育予算を更に充実させ、金銭面でも各学校をサポートする事によって、"教師が顧問を担当する制度自体を全面廃止"すべきだと考えます。


6.教育予算を更に増やす

社会保障給付140兆円時代へ 費用抑え長寿、滋賀が手本

私の過去のnoteをご覧になった方々には、既知の事実だと思いますが、毎年かかっている日本の社会保障費は高水準であり、2023年現在で、約140兆円(134.3兆円)となっております。

GDP比で言えば、戦時中の太平洋戦争の戦費と遜色無いとも言われております。


その一方、仮に給特法を廃止した場合、残業代を積み上げても、"たったの9000億円に過ぎない"という調査もございます。

ですが、既知の通り、自民党の政治家達は、お年寄りにメリットが無い事は行おうとしませんので、時代にそぐわない給特法が廃止されていない状況になっております。


個人的に、お年寄りの社会保障費より日本の将来を担う子供達の根幹にかかわる教員の残業代やその他教育予算の方が、比べるまでもなく重要だと思っております。

ですから、社会保障費のたったの1/140である1兆円を出し渋るのではなく消費税増税のような手段を使ってでも、公立教員に残業代をしっかり支払い、他の教育予算も増やす事は、必要不可欠と言えるでしょう。


7.まとめ

まず、給特法については、国会議員主導で撤廃する事が必要だと思います。

何よりも先に、時代にそぐわない給特法を廃止して、公立教師にしっかり残業代を支払うのが優先であり、それから文部科学省に圧力をかけ、本noteで述べたような動画授業等の手法を使って、各教員の労働時間を減らせるようなサポートを行うべきです。


そして、私の根本的な主張としては、"公立学校は必要最低限のサービスであるべきである"という事に終始いたします。

それに文句があるなら、私立学校に通わせれば良いだけの話です。


現在、教育に限らず、各行政サービスは、税金等の徴収量の低さに比べ高い質のサービスが提供され過ぎている状況であり、その証拠に、日本の借金は、右肩上がりで増え続けております

更に、国の借金が増え続けた事により、国債の元本返済額や利払い額が更に増え、高齢者の増加に伴って、社会保障費も増える事でしょうから、今後、行政の財源や人員確保は、一層厳しい状況になる事は明らかです。

ですから、令和時代においては、教育に限らず、予算や人材が足りない社会という現状に見合った最低限度の行政サービスの提供を目指すべきであり、その一環として、教育に関する真の地方分権、ひいては、学校分権が必要であると言う事です。


参考文献.

・教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない (PHP新書)

・先生がいなくなる (PHP新書)

・公教育と教育行政―教職を目指す人への教育行政入門

・教育行政学(第4版): 子ども・若者の未来を拓く


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