「令和維新」日本の再建の鍵は"完全地方分権である"
はじめに.
日本も連邦制を導入すべき理由
まず、連邦制とは、本当の地方分権が進んだ状態を意味します。
そして、何のために本当の地方分権をすべきなのかと言いますと、その一番の目的は、"国民の声を政治に届きやすくする"事です。
現在、日本国民の大多数の人は、投票に行っても何も変わらないと考え、政治に関心がありません。
それは、政治と国民の距離が遠く、実際に誰が当選した所で何も変わらなかったという事実があるからです。
そして、政治と国民の距離が遠い現状では、消費税を上げたり、社会保険料を上げる事が実質的に出来ません。
何故なら、"消費税を始めとする各種税金が増税されたり、社会保険料が上がった所で、その見返りはほぼ受けられない"と、国民の大半が考えており、現行のままでは実際にそうなってしまう可能性が非常に高いためです。
1.地方分権改革で、貧困層により手厚い社会保障と減税の実現
まず、現在の日本の国会議員の定員数と給与の国際比較をご覧ください。
地方分権改革が実現すれば、国会の業務は、基本的には、外交・防衛・憲法に関する業務だけになり、大幅に業務内容が縮小いたしますので、"国会議員の定数削減"や"給与の大幅カット"を行う事が出来ます。
国会議員定数に関しては、フランスやイギリスなど、日本よりも多い国も存在いたしますが、それでも世界6位の多さです。
そして、国会議員の給与に関しては、先進国の中でも、トップクラスの高さを誇ります。
また、下図の通り、政党交付金に関しても、世界の政党と比較して、膨大な額を受け取っております。
地方分権改革が行われた後、具体的に、どれくらいまで議員定数や議員給与が減るのかは解りませんが、おおよそアメリカが基準になると思います。
アメリカは、憲法によって、連邦政府(中央政府)の権限が制限されており、基本的には全ての権限を州政府が持つという構造になっています。
ですから、完全地方分権改革が行われ、アメリカのような連邦型国家に近付いた場合、両国間の人口比を考慮しても、議員定数は200人近く減り、議員の年収も約1000万近く減ると予想できます。
中央集権的な行政体制となっている現在でも、ほとんど仕事の全ては官僚に丸投げしており、これまで、定員数や報酬に見合った実績も出しておりませんから、地方分権改革後、定員数や議員報酬を減らす事は、妥当であると考えます。
また、行政にかかる費用に関しても、地方分権改革を行う事で、地域の実情に合わせた小さい行政を作り出す事が出来るため、その分予算は浮きます。
そして、その浮いた予算で、国民のための減税や貧困層へのより手厚い社会保障の提供を行う事が出来ます。
それに加えて、国会議員の定数削減や給与の削減分もありますから、ある程度の規模の予算を、国民に還元出来る事は間違いありません。
2.人口の少ない国は上手く行く
人口が少ない国程、1人当たり名目GDPは高い
まず、次の画像をご覧ください。
これは、世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング(2019年版)の画像ですが、例えば、第1位のルクセンブルクは人口約64万人であり、第7位のシンガポールは人口約545万人と、人口が少ない国程、1人当たり名目GDPが高くなる傾向があります。
ですが、今回着目するのは、人口約1042万人を抱える第13位のスウェーデンになります。
スウェーデンは高負担高福祉国家
スウェーデンとフランスは、出生率が高い先進国、つまり福祉国家の成功例として有名です。
特にスウェーデンは、高齢者への社会保障と子持ち世帯をはじめとする若者への社会保障の両立させるように成功させています。
そして、両福祉国家の最大の特徴は、高負担高福祉国家であるという事です。
この事から言えるのは、人口が少なければ少ないほど、高負担高福祉国家を作りやすくなるという事です。
つまり、"日本を疑似的に1000万人以下の小国とする"事が出来れば、日本国内に10個のスウェーデン、10個のシンガポールを作る事に等しく、そうなれば、1人当たり名目GDPを上げる事ができて、高負担高福祉社会も実現する事が出来るという事です。
3.スウェーデンの社会保障
スウェーデンの社会保障制度は、我が国や他の先進国と同様に、高齢者向けの社会保障制度(年金・医療)が充実しているのは勿論ですが、それと同時に、若者向けの社会保障制度も、非常に充実しているのです。
以下に、具体的な社会保障給付例を列挙しますと、
・児童手当
・住宅手当
・養育費補助
・障害児介護手当
・妊婦手当
・両親手当(子育て期間中の休業補償)
というように、多種多様な給付制度があります。
そして、どの給付に関しても、その原資は、税金で賄われているので、安定した給付を行う事が出来ているようです。
一方、日本の場合は、上記のような手当はありますが、それは税金を原資とする公的給付ではなく、労働法に基き、民間企業が負担し、支出をするという形となっております。
上記のような手当を出来る企業は、高い利益を上げられている企業に限られますから、中小零細企業においては、そういった手当も出す事のできない財務状態の企業も多数存在いたします。
したがって、日本における若者向けの社会保障給付体制は、非常に不安定だと言わざる負えません。
4.高負担高福祉社会と低負担低福祉社会の両立が可能
日本は、よく小負担中福祉型の国と称されます。
その理由は、前章で述べたように、社会保障の一部を民間企業に肩代わりさせたり、国債を大量に発行する事によって、一時的に国民の負担を軽減し続けてきたためです。
特に、国債発行残高の蓄積は、私の執筆した他のnoteでも申し上げた通り、実質的な財政破綻のリスクや為替レートの不安定さを招く危険がありますので、社会保障制度や国家の存続そのものを不安定にしてしまいます。
ですから、高福祉や中福祉社会を作るには、同時に高負担や中負担である必要があります。
ですが、高負担高福祉制度を望む国民が多い地域もあれば、低負担低福祉寄りの小さい政府を望む国民の多い地域もあるでしょう。
ですから、本noteで掲げる完全地方分権を成しえる事によって、地域毎に異なる社会保障制度を作り上げる事が可能となりますから、その地域が提供する社会保障制度に不満がある場合は、地域間を移動する(足による投票)事によって、自分にとって最適な社会制度を選択する事が出来ます。
5.政治不信の原因は、"自分が政治をコントロールできないため"である
日本の国政選挙の投票率はとても低く、世界ランキング139位という低さだそうです。
また、直近の岸田内閣の少子化対策における消費税増税の可否を問うアンケートにおいても、反対派が71%と、大多数を占めました。(少子化対策の消費増税 「賛成」22%、「反対」71% JNN世論調査)
この事から、ほぼ大半の日本人は、政治への信頼を無くし、不信感を持っていると言えるでしょう
この主な原因としては、失われた30年と言われるように、過去直近の国政の成果はほぼ無いに等しく、国民の信頼を損なうような政治が長年行われ続けてきた結果だと言えるでしょう。
ですが、これまで、実質的な地方分権が行われず、中央政府が一元で、約1億2000万人全員を同じ方向に動かすというような中央集権的な政治が行われていた事も大きな要因の一つだと思います。
1億2000万人全員で動くとなりますと、大きな改革や増税をしようとすれば、当然反対が起こりやすくなります。
何故なら、自分が恩恵を受けるような確証も無く、政治への声も全く届かないからです。
完全地方分権でどう変わるのか
まず、一般的に、地方分権が進めば進むほど、実質的には人口が減る事と同視できますから、自分の意見が政治に反映されやすくなります。
また、人口約1000万人のスウェーデンでは、その人口の少なさにも関わらず、地方分権がとても進んでいるようです。
その結果、スウェーデンの国民は、国民負担率が高くとも、殆どすべての人が、不満を持っていない事に繋がっています。
それは、地方分権が進んでおり、"不満があるならば、いつでも国民負担率を下げられる"という政治と国民の距離の近さから来る自信の裏返しでもあるでしょう。
実際に、スウェーデン人は、改革に率先的で、問題が起きれば、国民総出で、政治に参加するという国民性を持っているとのことです。
以上をまとめると、完全地方分権が行われる事によって、政治と国民の距離感が近くなり、国民の声が政治に反映し易くなる事によって、政治への信頼が高まり、高負担高福祉の社会保障制度も、国民の納得を得ながら進める事が出来るという事です。
6.高負担高福祉国家でなければ、少子化改善は望めない
昭和の頃の日本は低負担低福祉社会でも、安心して子育てを行う事が出来ました。
何故なら、日本経済全体が、右肩上がりで、あらゆる企業の業績が良く、大黒柱と専業主婦のような片働き世帯が多く、世帯形態としても、3世代家族型のような、両親や祖父母も一緒に生活するような世帯の割合がある程度あったからです。
しかし、現代においては、経済は成長せず、実質賃金も下がり続け、世帯形式も核家族型の割合が増えていますから、子持ち世帯の場合、共働きにならざる負えず、低負担低福祉社会では、子育ては実質行う事が出来ません。
次に、以下のグラフをご覧ください。
このグラフは、主要国における女性の年齢階級別労働力率であり、M字になればなるほど、子育て世帯の女性の離職率や求職率が高い=社会保障が薄いという事が解ります。
この原因としては、前述したように、現在の子持ち世帯への休業に際する補償手当などは、民間企業に丸投げする形になっているので、ちゃんとした補償を子持ち世帯が受けられない事や、手厚い保育サービスが無い事です。
なので、子育てが始まると一旦離職を強いられる女性が一定数存在するという事です。
一方、スウェーデンでは、逆U字曲線となっております。
スウェーデンの休業補償は、税金を原資として、公的に給付されており、就業前保育施設(1歳~5歳対象)や学童保育(6歳~12歳対象)のような、1歳児以上の子供なら、誰でも公的な保育機関に預ける事ができる程、手厚い保育サービスがあるからです。
7.現行制度のどこを改革するべきなのか?
端的に言ってしまえば、立法権と歳入自治権の2つを地方自治体が持つ事が出来れば、完全なる地方分権が出来ると言う事が出来ます。
地方分権の現状
平成5年から現在まで、大きな地方分権改革は何回か行われており、第一次地方分権改革や第二次地方分権改革を経て、着実に進展はしておりますが、本来の意味での地方分権は未だ行われておりません。
現在の地方自治体の権限を簡単に説明いたしますと、まず、"国会が個別法を制定し、地方自治体が行える行政とその範囲について、全てを決定"いたします。
つまり、予め国会が定めた法律に基づいた行政しか実行できない限定列挙方式の行政となっているので、全く裁量もありませんし、自治を行っているとは到底言えません。
確かに、表向きの立法権である条例の制定権は、地方自治体にあるのですが、中央省庁が、過剰過密に法律を作ってしまうため、自治体が新しい法律を作る余地がありません。
よって、これまでの地方分権改革の成果としては、"行政権に限った譲渡"が行われたに過ぎません。
ですので、従来の状態を変え、完全地方分権を実現するには、"地方自治体が立法権を持つ"事が重要となります。
そうなりますと、中央政府の役割は、極端に言ってしまいますと、国防・外交・憲法だけになるという事です。
実際には、より広域な法律の制定や、広域の行政を行う必要があると思いますが、現在に比べれば、中央政府の権限は大幅に地方に移管されることになるでしょう。
社会保障を制する者が自治を制する
令和4年度の国の歳出の32.3%は社会保障に使われており、これまでの20年間においても、歳出の約1/3が社会保障に費やされ続けております。
それに加え、令和4年度の社会保険料の徴収分は、約74兆円ですから、国庫負担分である約36兆円と合わせると、110兆円となりますから、毎年だいたいそれぐらいの多額の予算が、社会保障に割かれているという事です。
つまり、政府の役割の半分以上は、社会保障を給付する事ですから、社会保障に関する自治を得る事こそが、地方自治権を獲得する事に等しいという事です。
そして、そのためには、地方自治体が歳入に関する自治権を持つ必要がありますから、自ずと、立法権も必要となる訳です。
8.地方自治体に社会保障の責任を持たせる
前述したように、国の予算の半分が社会保障に費やされていますから、社会保障制度の在り様が、国や政治の在り様を決めると言っても過言ではありません。
ですから、国の根幹を決める社会保障制度にこそ、国民の一人一人の意見を取り入れ、よりコンセンサスが得られるような政治を行わなければいけないという事です。
ベーシックインカムや資産課税も実現できる可能性がある
ベーシックインカムや資産課税を導入すべきだという意見も時折耳にしますが、そういった政策も、国民と政府の信頼関係が高まり、地方政府主導で行う場合は、十分可能だと思います。
ここで重要な事は、地方自治体が実権を持ち、政治を主導する事で、国全体では実現出来なかった幅広い政策が実行できるようになるという事です。
例えば、消費税の減税しかり、若者に対する所得税減税や社会保険料徴収免除など、国全体で行えば反発が起こりそうな政策でも、地方レベルなら、実現できる可能性はあるでしょう。
さらに、資産課税に関しては、導入できれば、富の再分配を行う上で最も効果的な手段となります。
2023年6月時点の個人金融資産は2023兆円で、2021年度末の大企業の内部留保は約484兆円で、長引く不況により、個人も民間企業も、貯蓄ばかり行い、全くお金を使わない傾向が続いております。
岸田首相は、"2023兆円ある個人金融資産を投資に回させる"と明言しておりますが、2000兆円相当の金融資産の内、大半は高齢者が所有しているため、一般的に、更に投資をして資産を増やすというアクションを行う事はほぼ100%あり得ないと考えて良いでしょう。
ですから、富の再分配を行うには、個人金融資産や大企業の内部留保に対して、資産課税以外の方法は残っていないと言っても過言ではないという事です。
現在の日本の税金や社会保険料が高い主な原因は、お年寄りの社会保障(年金・医療)であるため、お年寄りが持つ2000兆円規模の個人金融資産に課税する事は、十分道理があると思います。
そして、資産課税が導入された暁には、貧困に苦しむ高齢者への年金給付額を増額したり、消費税減税等の若者向けの減税政策を行う事が出来たり、インフラの整備など、対応が急務である課題についても、大量の予算を回す事が可能となるでしょう。
ですが、資産課税のような国民に大きな危害が加わる可能性のある政策に関しては、政府や政治に対する国民のコントロールが及び、信頼する事が出来なければ、まず導入することは不可能でしょう。
そして、社会保障制度の運営を完全に地方自治体が担う事で、社会保障制度を悪用された場合や、問題が起こった場合に、迅速かつ柔軟に自治体に対応させる事ができるというのも、利点の一つになると思います。
現行制度では、所管は国で、実行は自治体というような、責任の所在が曖昧な形になっているので、問題が起きた時に誰も責任を取らないという構図が出来上がっております。
ですから、社会保障制度に関する歳入も歳出も、地方自治体に行わせる事で、自分の声が届きやすい地方自治体に全責任を負わせる事が、より良い社会保障制度を作る上で重要となるという事です。
9.地方分権は100%地方創生に非常に役立つ
まず、都道府県庁や市役所、町村役場と言うのは、地元最大のビックビジネスと言っても過言ではないでしょう。
それらの役所等の政府機関と言うのは、地方の雇用を産む点でも、そこから派生し、地方の経済を活性化させる点でも、重要な役割を担っております。
ですから、地方分権が行われれば、中央省庁がスリム化する分、地方の役所は必ず肥大化しますから、地方公務員の数は確実に増える訳です。
それ故、地方の経済は、確実に現状より大きくなります。
勿論、法律が現在より自由に作れる点に置いて、さらに移住者を増やせる利点もありますが、各地方における地方公務員数の増加による経済的なメリットについては、その確実性において、見逃す事は出来ません。
結論.
結局、何が言いたいのかと言いますと、地方分権は、高負担高福祉社会の実現の手法の一つであるという事です。
また、今日本にとって必要なのは、"如何にお金をかけずに、国力を上げるか"という方法であり、地方分権は確実にその一つになり得ます。
そして、国家予算の大半を占める社会保障制度こそ、住民自治によって、制度の詳細を地域ごとに決定すべきであると言う事です。
そして、国民一人一人の要望に寄り添う政治を行うためには、現在の中央集権的な政治ではなく、しっかり地方分権を行い、地方政府による政治が行われる事が最も重要だと思っています。
また、国民の国に対する不信の大きな要因の一つとして、国の財政赤字の問題もあると思っております。
現在のように、国の借金が一方的に蓄積し、その展望が見渡せない現状では、日本の将来性についての不安は払拭できません。
そして、国の将来性への不安から、社会保障制度に対する不安も相まって、個人も、企業も、貯蓄を増やし続けるという選択を取っていると考えざる負えません。
なので、地方分権を行う事によって、政府と国民間の信頼を取り戻し、高福祉を提供するのであれば、しっかりと高負担をしてもらう構図にしなければ、日本の将来性への不安は払拭できないでしょう。
2023年現在、岸田文雄首相は、異次元の少子化対策をなるものを打ち出しておりますが、消費税増税を始め、新たな税収を元手としていませんので、たったの3兆円程度の予算しか確保出来ておらず、ほとんど効果が無い政策となるでしょう。
ですから、1億2000万人を一斉に動かすような一元的な従来の政治ではなく、地方分権を進める事で、国民の声が届きやすい地方自治政府を作り、国民の政治への信頼を取り戻した後でなければ、新しい税収を土台とした、子持ち世帯を社会全体で支援できるような高負担高福祉社会の実現は成しえないという事です。
参考文献.
・高福祉・高負担国家スウェーデンの分析―21世紀型社会保障のヒント
・日本の地方政府 1700自治体の実態と課題 (中公新書)
・ 連邦制入門
・立法分権のすすめ ―地域の実情に即した課題解決へ
・比較福祉国家: 理論・計量・各国事例
・道州制 (ちくま新書)
・各国における分権改革の最新動向―日本、アメリカ、イタリア、スペイン、ドイツ、スウェーデン (神奈川大学法学政治学研究叢書)
私見.
Q1. 道州制は導入すべきか?
A1. 導入するかどうかも、各地方自治体に委ねるべきです。
過去20年の各政権の動向を見ると、地方分権改革と道州制はセットで語られる事が多いです。
しかし、個人的には、道州制は導入する必要は無いと思っております。
勿論、財務やサービス提供の効率の問題も生じるため、都道府県の合併の必要が生じる可能性は高いですが、それはあくまでも、各首長の合意によって、行われるべきです。
そして、その地域が成長した場合の脱合併も、住民の意思に沿って、行われる仕組みも設けた方が良いと思います。
さらに、広域自治体が連携して、州を成立させるとなれば、間違いなく、州のルール、つまり、州憲法の制定は必要となると思います。
そして、その州憲法に合意できる広域自治体は加入して、合意しない広域自治体は離脱するというような流れも起きると思います。
そんな中、中央政府が、勝手に州を作ってしまえば、州のルールである州憲法の制定時点で、合意が形成できず、躓く事は間違いないでしょうから、そうなれば初っ端から上手くいかないだろうと考える訳です。
結局、住民の意向を無視して、勝手に地域を合併してしまえば、それこそ地方分権とはいえず、むしろ、中央集権の象徴になってしまうでしょう。
Q2. 完全地方分権の実現のため、憲法改正の必要あるか?
A2. 必要な可能性は高いです。
中央官僚が、地方分権に協力的である場合は、憲法改正の必要性は少ないと思います。
社会保障制度の運用や徴税権など、限られた権限の移管を別個に行っていく方式であれば、現行憲法のままでも、十分対応可能です。
ただし、憲法改正を行わなければ、ほぼ可逆的な制度の変更になってしまうため、政権交代が起きれば、元の中央集権体制に戻ってしまう可能性は高まります。
そして何より、現在の官僚達は、既得権益を維持したい事から、地方分権を望んでいない傾向が強いので、最終手段として、憲法改正を行い、強制的に官僚達を従わせざる負えない状況になる可能性は高いです。
さらに、都道府県等の地方自治体が、アメリカの州政府のように、自由な立法を行うためには、憲法改正は必須です。
具体的改正案
本改正案は、海外諸国の憲法を参考にして、簡単に作ったものです。
参考にした、海外諸国の憲法については、以下のnoteにまとめておりますので、是非ご覧ください。
さらに、著者は、法律の専門家ではございませんので、あくまで、大まかな概要という事で、ご覧ください。
まず、主な目的は、アメリカの各州のように、"各都道府県に、立法を持たせる"事です。
そのために、具体的には、日本国憲法41条と94条を改憲する必要があると思っております。
まず、41条には、"国会は、唯一の立法機関である"と定められています。
本来は三権分立を約束させる意図の条文になりますが、解釈次第では、地方自治体の議会には、立法権を持たせる事は出来ないと解釈する事は可能でしょう。
そこで、スイスやドイツ、スペインの憲法の記述を参考にし、第41条自体は、以下のように変更します。
そして、2項において、国と都道府県で、法律が競合し、憲法裁判に発展した場合、都道府県に多少有利なようにしておくための条文を規定します。
以上を合わせると、私の提唱する、新41条は、以下の通りになります。
次に、憲法94条の話に移ります。
日本国憲法では、92条~95条で、1章を費やし、地方自治に関する規定を設けておりますので、必要に応じて、地方自治体の権限を強めるために、条文修正の必要もあるかと思います。
特に、憲法94条ですが、以下の通り、地方自治体の条例制定権を定める条文となります。
なので、修正41条との整合性が取れるように、条例制定権の部分を以下の通り修正いたします。
Q3. 地方分権で、余計行政費が拡大しないか?
A3. 地域によっては、起こり得ると思います。
ですが、本物の地方創生を行うためには、地方自治体が立法権を手にし、自分達の地域に合った法律や人口が増えるように優位になる法律を作る事が重要であり、その行政の執行のためにかかる追加費用は、あくまでも必要経費であると考えております。
日本の歴史から考えても、地方から初めて立法権を奪ったのは、明治維新の頃の話であり、現代まで、その際に導入された中央集権制が維持されておりますが、戦後の好景気という外的要因にもたらされたボーナスがあったからこそ、中央集権制下においても、たまたま地方が豊かになったに過ぎないと思っています。
ですから、本物の地方創生を行うに当たっては、明治維新の前に戻すかのように、地方自治体に立法権の返還を行う事は、地方創生における絶対条件になるでしょう。
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