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幾つもの「繋ぐ」がつながる -オノデラユキ『Parcours-空気郵便と伝書鳩の間』(-12/8)[AWT]06

 アートウィーク東京。都内のギャラリーを駆け足で巡った、思い出深いイベント。

 特に印象的だった展覧会の記録を、本日も。



目印は「郵便ポスト」、実は

 都内を巡るシャトルバスで移動して、

 スタッフの方にギャラリーの場所を教えていただき、住宅街を歩いたのだけど、なかなか探せず、

 そういえばパンフの写真に郵便ポストがあったよね、ということが手掛かりになり、ギャラリーが見つかった。

 この外見。

 元・郵便局。これは、今回の展覧会のキーでもあった。

オノデラユキ『Parcours—空気郵便と伝書鳩の間』

WAITINGROOM(東京)では、2024年11月2日(土)から12月8日(日)まで、パリを拠点に活動するオノデラユキをゲストアーティストに迎え、当ギャラリーでは初めての個展『Parcours – 空気郵便と伝書鳩の間』を開催いたします。この展覧会は、「アートウィーク東京2024」参加展示です。

同上

 木漏れ日があふれるギャラリー。

 赤い糸ならぬ、赤い線。

 ギャラリーの方が説明に出てきてくださった。それによって、目に入った情報すべてが、写真家・オノデラユキの今回の展示の要素なのだと気づかされた。

 少し、「ネタバレ」になるけど、説明を先に。

ギャラリーが郵便局跡地であることに着想を得て制作がはじまった今回の新作群は、「通信」「情報伝達」をテーマに、オノデラの居住地であるパリと東京のギャラリーを繋ぎ、別の空間や過去と現在という別の時間軸が、通信システムを起点に重なり合うような手法で制作されました。

2mを超える縦長の大型プリントから、切手が貼られ消印も刻印されたハガキサイズの小さなプリントまで、多岐にわたる郵便をテーマにした作品が約40点、ギャラリー手前から奥のさらに奥のスペースまで、1本の赤い線で繋がれて展開されます。

同上

 先ほどの写真のように、ギャラリー「WAITING ROOM」は元郵便局。

 言われてみれば「たしかに!」だ。

 そして、美しいモノクロ写真で撮影されているのは、フランス・パリの街角の風景。

 大きな作品から、小さな作品まで。

 作品のなかに、服が舞う。まるで、旅先案内人のように。

 写真家・オノデラユキの初期作品に、パリの青空を背景に、古着を、まるであたかに生きているかのように撮影した写真がある(写真集を見せていただいた)。人気を博したその写真の要素が、本作のなかにもオマージュされている。

空気郵便と伝書鳩

 ちなみに「空気郵便」(気送管)とは、

気送管(きそうかん)は、筒状の容器を管の中に入れ、圧縮空気もしくは真空圧を利用して輸送する手段である[1]

同上 

 かつてのパリに張り巡らされていた、コミュニケーションの手段。

 そして、伝書鳩。

 そうした要素も、なんらかの形で含まれている。一見ふわっとしている感じがありながら、作品として無駄なところがないのだと感じた。

 

赤い線はギャラリーの奥まで

 赤い線に導かれるように、

 ギャラリーのオフィス部分まで、空間を巡る。

 小型の作品はポートレートサイズ。実際、作家のパリのオフィスからこのギャラリーまでを、実際に旅している。そして写真に貼られた切手、押された消印までもが、作品の構成要素だ。

 注意深く観ていくと、その緻密さのようなものがどんどん現れて、作品そのものがまた違って見えてくる。


小さな空間の、大きな冒険旅行

 小さなギャラリーを、くまなく旅して。

 とても遠くに行って、戻ってきたような。



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