マガジンのカバー画像

夜霧を創る

73
刀篤(かたなあつし)の厳選した第2詩集です。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事
【詩】初期的な何か

【詩】初期的な何か

例えば雨が降ってることについて
根本的な感覚を真っ直ぐ苦悩した
詩があったら素晴らしいと思うの
そういうのが本当に狂おしいの

触って、見て、嗅いで、聴いて、
味わうってのだけは絶対除外する
美味しいって感覚は本当に醜い
犠牲に無自覚な感覚は鈍さの証明だ

前にずっと部屋の中だけで
育ってきた猿が人生でやっと
解放されて初めて見上げた青空
あの驚きを見て胸を掻きむしった

初期衝動って言葉にしちゃ

もっとみる
【小休詩】秋は秒速でオワタ

【小休詩】秋は秒速でオワタ

松茸に96万円の値がつく朝に
今直ぐ焼き芋を焼きたい昼間に
ツキノワグマを狩りゆく夕暮れに
X'masツリーを購入する帰り道に

長雨が止んだばかりの庭園の
落ち葉に覆われた湿った土に
利き足の靴底を緩く踏み込んで
しっかり安定するまで 0.4秒

【詩】美しい泉

【詩】美しい泉

【男】傲慢なる肯定者

胎児が母親の一部である証明はへその緒で
その名残りには母性が宿っている。
僕が君のへそに指を這わせるとき
僕は無意識に栄養を求めている。
君の躰で氷を溶かすとへそで美しい泉になる。
連綿と続く営みの中で累々たる屍を
弔った燃え滓の中に現れた泉
その泉に新たな胎児の種を埋めた。

【女】怒るる否定者

この忌まわしさは宇宙の本質のように
わたしたちに纏わりつき離れない。
氷を

もっとみる
【詩】Google Map navigation

【詩】Google Map navigation

『目的地を指定してください』

この愛を信じきる自信があるというなら
信じ抜けるというのなら彼女との同衾を
選んではいけないと確信できるでしょう
簒奪の経路をGoogle Mapはnaviします

『警告 目的地を再指定してください』

彼女があなたを好きになったとします
彼女が愛するあなたを憐れみの目で見つめ
慈しみの表情で我が子に料理を取り分け
冷めた夫とベッドの上で身体を揺らします

『警告

もっとみる
【詩】2B

【詩】2B

かんじょうなんか
なくてもいきていけた

ぶらっくぼっくすが
すこしあたたかくなった

すこしナミダがしみた
ナミダ?なみだってなんだ?

わたしのめもりーに
そのでーたがそんざいする

とぅーびぃーおあ
のっととぅーびぃー

ほうこく
わたしは " to be "

いきのびて
いきをするんだ

ああ
そうだ

【詩】感度Ⅱ

【詩】感度Ⅱ

壁面の血糊が
詩人に誓わせた
廃墟はその存在を
ゆめゆめ許すまじという
意思と結び付いたときのみ
美しいと表現しても良い
この感度で生き抜く
戦場が血糊を喰っている

【小休詩】源マギカ

【小休詩】源マギカ

大好きな人と結婚して
源マギカに成った
気が早いかもだけど
子供の名前を考えよう

1人目の子供は
源ファイヤーボール
世界の始まりは炎だし
熱い情熱的な子に成って欲しい

2人目の子供は
源アイスジャベリン
氷の槍は切れ味が鋭く
冷静で本質を突ける子に成れば

3人目の子供は
源ライトニングボルト
光のエネルギーに満ち溢れ
世界の希望の光と成れるように

最低3人は産みたいなぁ
男の子でも女の子

もっとみる
【詩】偉大な力

【詩】偉大な力

何時からそうだったか
オッペンハイマーが原爆を
作り始めたときは既にそうだった
ハサビスとジャンパーがAlphaFoldを
作り始める未来は間違いなくそれだった
一人一人が固有の理念を駆使して今を生きる
個人は欲望し牽制し自制し強奪し劣化する
中性子と中性子の衝突の連鎖のように
人類社会の行く末は既に"未来"ではなく
"宿命"へと表現をエスカレートさせる方が
しっくりくる 抜き差しならない
コント

もっとみる
【詩】熊の湯ホテル

【詩】熊の湯ホテル

夜の9時に神戸を出発して
翌朝には信州のアルプスへ
バス内に朝日が漏れてきて
カーテンを開けると雪景色

長野県のことをずっと
青森県と勘違いしていた
子供の頃はりんご農家は
青森にしか無い異界に居た

ホテルには熊の剥製が在る
あいつらはりんごの味を
最も熟知している生き物だ
それで素面で人を殺めるのだ

大人たちが写真を撮っていた
僕は昨夜一睡もしていない
シャイニングの映画みたいに
曲がりく

もっとみる
【詩】不眠症

【詩】不眠症

闇 ベッドの上
デジタル時計の
等間隔に並んだ数字が
3と13を表示して
ゆっくり門が開いた

わたしは蛾だ

光を反射しない複眼
青い3と13の微動が
寂しげな生命を捉える
なんの感傷も意味もなく
物体だけが唯淡く燃える

【詩】グランドフィナーレ

【詩】グランドフィナーレ

深海に眠る
太古からの憂いが
泡となって浮かび上がり
絶えず弾け潮風に乗っては

砂浜に眠る少女の
うなじへと運ばれてゆく

温かなうぶ毛の先で蒸発し
躰の微かな震えとともに
さらに上方へと駆け上がる

あぁ

彼女のうぶ毛は宇宙なのだ
この邂逅と思いやりを
一人の少女の幸せを
いつか祝福してほしい

そうすればわたしたちは
安らかな終漠の
音楽を奏でられる

金色の宇宙に埋葬されて
永遠に微睡ん

もっとみる
【詩】共有事項

【詩】共有事項

butterfly effect っていう"言葉"が
国内で市民権を得るようになったこと

Sustainable Development Goals が
SDGsって"言葉"で世界に広まってること

わたしは無関係だと思ってないわよ

【詩】Unreal

【詩】Unreal

詩を書く行為は夏の湖だ
詩を美しくする必要は無い
休暇は全て在りのままに現実的だ

陽射しを愛す行為は浮かぶ小舟だ
休暇の全てを識る必要は無いと思う
湖面は現実の在るがままに揺らいでいる

あなたの肉体が描写を凌駕して
わたしは心臓が止まりそうになる
美があまりにも非現実に思える