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最近の記事

カーテンの先

透はゆっくりと目を開く。透けた瞳は由香に引き寄せられた。寝ていても、視線を感じたのだろう。 その前の数秒間、由香の瞳は透の寝顔を映していた。透の、笑いじわや、いや、閉じている横長な目を見ていた。意味はなかったが、寝息も聞こえないほどに、見入っていた。 端正な顔立ち。由香は好きになった人の顔を、きまって綺麗な顔だと思う。透の寝顔に真剣にみとれながら、由香はふかい心のなかで波打つ表面だけで、好きになりたくないと思った。波が激しくなるのがわかる。本当はすでに、透のすべてに波打ってい

    • ストーリー全部流し見るお前へ

      見てないでしょ。 見てたら、見ててもいいか、違うね 見てたらいいなと思って書いてる書いてます私はもうあなたに素直になることはないと思ってましたそれが私の魅力になりうると思っていましたから、でもあなたの中ではいつまで経っても私はどこにも行きませんよね。それはね、本当はそうだから、それが正解だから、正解はひとつしかありません。あなたと私の間にはね。

      • これはゴミ箱。 頑張れなくてつらい。今じゃ足りない、普通に届いていない。普通に届かない。どうやっても普通に届かない。でも言われる。頑張れ。期待してるから。上にもっと分からせなきゃ。もう本当の精一杯。本当の精一杯だよ。涙が出そう。思うようにできない、普通に届かなくて迷惑をかける、周りに、自分に。自分のことを責める。何回もやっている。どれだけ薬を変えても変わらない。甘えだと思う。追い込みすぎだとも思う。私はキャパが浅い。ひとりひとり違う。それもわかる。わかるけど、社会では通用し

        • 人生最高の日には

          生きたい。 紫、青、緑のレーザーが、客席の中央をめがけて落ちる、動線の光を見ながら思った。 生きたい。 初めて、心底、本気で思った。 サカナクションのボーカル、山口一郎さんはうつ病を告白している。 特集記事のインタビューで、休養中は朝から晩までベットから出られなかったと言っていた。 でも食べないと死んでしまうから、必死で携帯を持ちUberEATSを頼んでみるが、取りに行くのすらままならず、玄関先に頼んだ置き配が溜まる日々が続いた。重力が普通に生きていた時の200倍になった

          読まなくて大丈夫

          どうしようもない。ひとりで黙っている。 全員に、どう立ち振る舞えばいいのかわからなくなった。これも症状だと思う。これも甘えだと思う。 全員に肩身が狭い。全員に会うのが怖い。誰に借りを作ったわけではない。 自分を指名してくれるお客様。ありがとう。私は毎回、指名してくださるお客様に会えることを楽しみにしている。仕事を馬鹿真面目に、馬鹿みたいに(お客様に)誠実にやるのは私の美学で、でもそれを遂行できない。内部で。病気の症状が出るたびに謝らなければいけない。いや、ほんとうに申し訳ない

          無題

          はじめて雨音が心地よいと思った。 最近はじめて手紙を貰った。大好きなお友達から。 「香純を産んでくれた香純のお父さんとお母さんありがとー!」 そう書いてあった。大好きな友達が、そう書いてくれた。 雨粒がトタン屋根にぶつかる音がする。 粒が大きな雨は、牡丹雨って言うんだよ。 字が合っているかはわからない。 雨音が弱くなってきた。不安になる。 まだ帰らないで。

          リタイア

          呼び出し音を5回鳴らす。 緑色のふきだしに囲まれた 📞 キャンセル が溜まっていくだけのトーク履歴。これは私が、毎度生死についての助けを求めた数で、こんなことを言ったら本当に病人みたいだ 日に日に鬱がひどくなる。 今日は起き抜けに全部のことに不安を感じた。仕事、お金、家族、友人、人間関係、恋愛。一通り不安を見つけて、そしてそれから地下に潜って逃げるように寝た。一日中寝た。日が暮れてからは間接照明をつけるのがやっとで、今も陰虚な部屋で、明るい画面を見つめながらこれを書いている

          タイトル

          毎日泣きながら職場を行ったり来たりしている。やっぱりおめでたい日が近づくと鬱が深く、そして冷たくなるのは変わらない。 昨日はいとこ夫婦の子どものお誕生日で、1階は賑やかだった(私はおばあちゃん家に住んでいる)。賑やかなお誕生日会場の上で、今日も仕事に行く支度をする。家を出るタイミングで台所に降りると、茶の間にいるいとこの真由と目が合った。 「どっか出かけるの?」 「仕事」 目の次に口角に明るさを付ける。 「お誕生日おめでとうねーー」 「いや、まーくんな笑」 真由は恥ずかしそ

          元気してるかい

          今日まで、生きていてくれてありがとうね。 「香純ちゃんは香純ちゃんのことを大事にしてれば大丈夫だから!」最近見かけない友達にそれとなくLINEを送ったら、こんな特別なお守りが返ってきた。私は助けたい人に助けられてばかりで、あー本当に、私として生まれてこれたこと、私が今日まで生きてきてくれたこと全部をこの言葉が温めてくれて、ちょっと泣いた。 最近好きな人に告白したら、「うまく生きようとしてるのにうまく生きられない人を見ると勿体ないなと思う」「自分で選べない運命は変えられない

          会いたい人がいる

          会えるってすごい。 何か月か前に会ったきりの顔が、ずいぶん大人びた様に感じる。久しぶりにあなたを見つめて、瞳の奥の懐かしい温度に安心した。さりげない匂いが、心の奥を優しく包む。心臓がジャンプする感覚が嬉しい。大好きなあなただ。 電波を通さないあなたの声が聞けて、タイムラグがないあなたの表情が、口角の上がり方が見える。あなたに触れられる。普段こんな表情で、こんな体温で喋っていたんだ。私は、何枚まぶたでシャッターを切っても足りないと思った。 身体の中で心臓がスキップしているのを

          またね

          聞きたいことは忘れるほどたくさんあったよ。でもいいの。今、今この瞬間に、生きて会えてること。これ以上の幸せはないから。年末忙しいと思うけど、またね。元気なあなたに会えますように。

          こちとらはち切れそうなくらい

          明日からがんばってね、いよいよだね、楽しみだね 今日は背中を押す言葉を、叩く言葉を、心がほぐされる言葉を、柔らかい笑顔をたくさん貰った。 今日はデビュー前日だ。マッサージのセラピストとしての、ひとり立ち前日。 明日からは1人で、お客様に気持ちいいを、今日までがんばってよかったを、あわよくば、また来たいなをプレゼントする。私に当たったからには眠るより心地よい時間を過ごしてほしい。筋肉がからっぽになったかと思うくらい身体を軽くしたい。あたたかい余韻を仕込みたい。そして、お店のド

          あなたへ

          すこやかでいてね。温かくして眠って、好きなものを食べて、できるだけ好きなことやものに触れて、そうして、生きていてね。 すこやかじゃない日があってもいいよ。あなたがすこやかでいられない日も、私は、すこやかじゃないあなたを愛しているよ。これは忘れないでね。 愚痴だって泣き声だって、もちろん嬉しい報告でも、なんでもない話でも、酔っぱらっていても、私はいつでもあなたの声が聞けたら嬉しいからね。気が向いたら、安心して電話でも掛けてきてね。 SNSであなたの生活を見れるのは嬉しいよ。た

          戻れなくなっちゃった

          どうか正夢 君と会えたら なにから話そう 笑ってほしい これ大好きな曲なんです 叶うかな 翌朝です。1階から聞こえるおばあちゃんの生活音を聞くだけで開きもしない腫れ上がったまぶたから涙が出そう きのうは結局安い13度のお酒を飲んで、もう無理やり寝ようと思って、睡眠薬を飲んでベッドに入ったはいいけどまたもうどうにもならないくらい泣き出しちゃって眠れなくなったところで慣れないお酒に吐き気がしてきて、それからは覚えてなくて、薄い眠りの中で、もう階段から落ちちゃおうかと思った ベラン

          おわり

          泣けなくなってるんですよ、年々一日一日 泣けなくなってるの それは材料を忘れてしまっているから もちろん声は思い出せないし、匂いも薄く お父さんお母さんと行った場所、食べたもの、覚えてないです 数え切れるくらい お父さんとお母さんと一緒に生きたかった いくらお父さんの夢を継いでも、見せられないし 最愛の人を見つけても紹介できない 成人しても お母さんの一張羅の振袖が、私で仕立てたみたいにぴったりですねって着付け師さんに言われたことも言えないし 誕生日も、あなた達に祝ってほしか

          もう耐えられない 遺書になにを書こうかな 本当の本当に、ほんとうのことを言ってしまうと、私は本当はお父さんとお母さんに会いたいです お父さんとお母さんと会話したいけどできないからもう無理です 耐えてきました、14年だか15年 耐えたの、生き残ったの、こんな悲しすぎる世界で生き残ったから、もう充分です あとはお父さんとお母さんに会いたいです どうでもいい お父さんとお母さんに会いたい これ禁句なんですよ、言っちゃいけないし、思っちゃいけない。決壊しちゃうから、生きていけなくなっ