泣けなくなってるんですよ、年々一日一日 泣けなくなってるの それは材料を忘れてしまっているから もちろん声は思い出せないし、匂いも薄く お父さんお母さんと行った場所、食べたもの、覚えてないです 数え切れるくらい お父さんとお母さんと一緒に生きたかった いくらお父さんの夢を継いでも、見せられないし 最愛の人を見つけても紹介できない 成人しても お母さんの一張羅の振袖が、私で仕立てたみたいにぴったりですねって着付け師さんに言われたことも言えないし 誕生日も、あなた達に祝ってほしかった 祝ってもらいたい お父さんが庭でしゃがんでたばこを吸いながら、煙に表情を隠して当たり前にお誕生日おめでとうーって言ってくれた朝思い出した、悲しい悲しい悲しい、全然泣けるじゃん、もう、でも二度と会えない そんな幸せな記憶は薄れていくのに、集中治療室で管だらけの父は忘れない、死装束?なんだか知らないけど冷たくなったお父さんの手に、なんか白い布結んだの忘れないし、これが焼かれる前最後ですよって花に埋もれた父の顔に蓋が閉じられる数秒は忘れない こんな記憶で悲しくなって会いたくなって一緒に生きたかったって叶わない願いを込めて嗚咽するほど泣いて、それでも生きて、あの時私がどんな気持ちだったか、あの時お父さんがどんな気持ちだったか

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