立つ練習をお願いしたい

介護老人保健施設では、在宅に帰る事を目標としているためリハビリに力を入れています。

リハビリ職員を配置していますが利用者さんが多いと、利用者さんや家族が望むリハビリを提供できない事があります。

そんな時は大抵自分でやるか、家族が一緒に訓練をする姿をよく見かけます。

しかし、入所者が高齢だと家族も高齢のことが多く、一緒にやるから安全と言う訳にはいきません。


Oさんは70代の女性

脳梗塞の後遺症により左半身に麻痺と拘縮が見られ、下肢の筋力低下もあるため車椅子を使用しています。

歩くのは難しいのですが、掴まれば立つことは可能なためトイレを使用。

しかし、週に2回のリハビリでは徐々に立ち上がるのが難しくなってきていました。

立てなくなっては家に帰るのは更に困難になってしまうため、ご主人が面会の際に廊下で立つ訓練をしています。

ご主人も高齢のため支える介助は足腰に負担がかかります。

リハビリの日数を増やしてほしいとリハビリ職員にお願いをしましたが特別扱いをする訳にもいかず、家族の願いは聞き入れてもらえませんでした。

そんな悩みを打ち明けられ、時間のある時に一緒にやってもらえないかと今度は私に依頼して来ました。

毎日は出来ませんが、時間のある時にならと承諾。

夜勤では難しいため、日勤の空いた時間にステーションのカウンターと手すりを使って行うことにしました。

Oさんだけやるのは目立ちすぎるため、車椅子を使用していても自分で立てる人や、ドキがムネムネさんなどお気に入りの利用者さんも一緒に行うようにしました。

カウンターに車椅子の利用者さんを数名並べ

「 今から立つ訓練をします。車椅子のブレーキを確認し、足台を退けて下さい 」

自分でやってもらいながらもきちんと出来ているか確認に回ります。

「 では、手すりに掴まり立って下さい 」

自分で立ち上がれる人は見守り、難しい人は介助します。

Oさんは立ち上がるのも立ち続けるのも難しいため支え続けます。

「 10数えまーす。せーの。いーち、にーい、さーん・・・ 」

ゆっくりと10数えて座らせ、また立ち上がらせて10数えてを繰り返します。

発声練習も兼ねようと利用者さんに数えることをお願いします。

もちろんゆっくりと数えるためきちんとした10秒ではありません。

また、まじめに数えるわけもなく

「 いーち、にーい、さーん、よーーーーーーーーーーん、ごーーーーーーーーーお・・・ 」

たまに長く数えることにより利用者さんからツッコミを入れられながらも単調にならないようにして行います。

最初は導入のため10数えるのを5セットくらいで終わりにしましたが、次第に10、15、20と長く立ち続けるようにしていきました。

1ヶ月程続けると100数えても立っていられるようになる利用者さんも出てきました。

もちろん支え続ける私は汗だく。
白衣を脱いでTシャツで頑張ります。

数分で終わっていた訓練が10分くらいかかるようになっていました。

Oさんの家族は決まった時間に面会に来ていましたが、立つ練習をやっているいつもより早い時間に現れました。

自分の目で訓練している姿を見て満足したようで「 前よりも立ち続けられるようになって良かった。忙しいのにありがとう 」と感謝を述べてくれました。


数分で良いので空いた時間を利用者さんのために活用してみてはどうでしょうか。

よろしければサポートお願いします。この費用は看護や介護が必要な人達へ有効に活用していこうと思います