そんな自分を忘れたくなかったの
貴方のこと、忘れなければいけないなと思うよ。
人を好きになるって難しくて、どこまで好きになればいいのか、姿だけじゃあなんだか足りないような気がして、言葉も思想も食べて骨まで愛して、月並みに嫉妬なんかしちゃって、勝手に永遠を捜して、宇宙の中で迷子になった。
貴方が作った世界はいつしか宇宙になった。貴方が宇宙だと言ったから、宇宙になった。正気も理性も要らなくてそのうち自我さえ要らないような気がしてきて、記憶も感情も本能も勝手に生成されて、貴方に会えなきゃ生活のやり方も呼吸の仕方も忘れるくらいなのに、いつからこんなに苦しかったのか判らない。
心がね、ちゃんと壊されて、みるみる狂って、楽しくって悲しくって、あまりに幸福が輝くものだから、不幸も濃く黒く深くなって。花火みたいだね。夏も冬も春も秋も輝く花火。太陽でも月でもなくて、もっと動的で力強く、すぐに消えてしまう。ありがとうって泣き喚くことも馬鹿って殴ることもできない。
忘れた方がいいと思った。その方が幸せになれるのかもしれないと思ったのかもしれないし、何より今なら離れられるかも、と思った自分を否定できなくて、だけど離れられても忘れられるわけではなくて、貴方と出逢う前の世界には戻れなくて、じゃあ遺るのは繕えない埋められない心の穴だけだから、一旦のお別れを言葉にしたくせに何もできずに変わらず貴方のこと愛してる。
貴方を忘れたい、忘れたくない、愛していたい、こんな自分のことも忘れたくて、忘れたくなかったの。
何も知らずに見ずに考えずに愛していくには今度は私はもう一度自我とお別れしなきゃなって、自分のこと愛してなくても貴方のこと丸ごと愛する不健康。それさえも好きだったよ。もう少し強くなれたらさ、私は私を愛して乗り越えて、貴方のこと想っていられる?
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