すべての意味は、人と人との相互作用から生まれるー「意味のイノベーション」とは何かー
ここ数日間で、「デザイン・ドリブン・イノベーション」という本を読みました。
著者は、イタリアでデザインとイノベーションの研究をしているロベルト・ベルガンディさんという方です。
なぜ私がデザインの本なんか読んでいるのかというと、以前先生に紹介していただいたからです(なるべく先生に紹介していただいた本は、片っ端から目を通すようにしています)。
この本は333ページあるのですが、その中で一貫して訴えられていることは以下のようなことです。
意味は変えられる。
しかも根本から変えることができる。
ニーズ調査からイノベーションは生まれない。
むしろ会社はデザインでビジョンを提案して、
市場のニーズを先回りするべきである。
会社が製品の意味を刷新できるプロセスこそが、
デザインである。
たとえば、昔は暗がりに明かりを灯すためのものだったロウソクは、現代ではLEDライトに形を変えて明かりの“色”を楽しむためのものになっていたり、“アロマ”として香りを楽しむためのものとなっています。
これがベルガンディのいう、
意味のイノベーションです。
最近なんだか、この「意味」という概念がすごく気になってきています。
たとえばこの本の中にも「デザイン・ディスコース」という言葉が出てきますが、そうした言葉による相互作用を分析する「ディスコース分析」や、意味や文化は人々の対話から生まれるものだとする「社会構成主義」、そして意味を紡ぎ出す個人の語りを分析する「ナラティブ・アプローチ」など、意味が創造されるプロセスに、なんとなく興味があります。
そして、この本において意味が創造されるプロセスーーすなわちイノベーションとは、一人のデザイナーの頭の中にあるアイデアから創造されるのではなく、研究者、建築家、デザイナー、芸術家など、異なる専門性を持つ人たちがいる集団でのコラボレーションから生まれるとされています。
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デザイン・ドリブン・イノベーションのプロセスでは、様々な視点を持つ解釈者たちが、解釈に解釈を重ねて、最終的に最も適切な意味を再定義します。
![](https://assets.st-note.com/img/1681108595369-DizlCbBpGJ.jpg?width=1200)
以前こちらのnoteに、「“意味づけ“とは人間だけができる行為である」ということを書きました。
だからこそ、意味が創造されるプロセスって非常に興味深いなと思います。
なぜなら同じ一つの状況下でも、それをどう意味づけるかによって、人は幸にも不幸にもなり得ると考えられるからです。
たとえその状況自体を変えることは難しくても、意味づけの仕方を変えることで意識は変えられる。
そこにすごくポジティブな可能性を感じます。
一方でそれは、言葉の受け取り方次第で言葉の意味が変わってしまうという、ネガティブな可能性にもなり得ると思います。
最近、「なぜ人と人とのつながりが大切なのか」ということを考えていたのですが、なんとなくその答えも、「意味の創造」という観点から結論を出すことができるのではないでしょうか。
先ほどのデザイン・ドリブン・イノベーションのプロセスから考えると、たとえば「今度行ってみたいカフェ」という小さなスケールから、「私が生きる意味」という大きなスケールに至るまで、個人で物事の意味を見出すことは不可能で、すべての意味は人と人との相互作用を通して生まれるといえます。
だからそれぞれの意味を紡ぎ出していくためには、一人でいるのではなく、誰かとつながることが必要です。
最後に、人と意味との関係性を示す一文を引用して、今日は締めたいと思います。
結局、私たちは人間である。
私たちは全人生を、意味を探すことに費やす。
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