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糸波舎のつくる時間と空間


初めての本屋出店から半年以上が経ち、糸波舎はおかげさまで4回の出店を経た。

実は3月に車が壊れてしまい、そこから少しの間、活動をお休みしていた。
そのお休み期間に、のんびりと、これまでとこれからのことを考えてみた。


糸波舎が世の中に与えてゆきたいもの。
それは、静かで穏やかな、時間と空間。


冬、お寺さんで行われたキャンドルナイトに呼んでいただいた。

しんとしみる空気の中、ゆらゆらと揺れるあかりを安らかに眺める人々。
その片隅に本を並べたところ、多くの方が本の森を訪れてくださった。

ひとりのお母さんが、ストーブの前で一冊の本を読んでいた。
長い時間、じっと静かに、ほっと包まれてゆくように。

美しかった。

「こんなにじっくり自分と向き合えた時間は久しぶりだったよ、ありがとう」
帰り際、こんな一言をいただき、彼女はとても晴れやかな表情で家族の元へと帰っていった。

その背中を見つめながら、これだ、と思った。


その時間と空間を、いちばん大事にしてゆきたい。


たぶん、本を売りたいわけではない。
もちろん、買っていただけたらありがたい。

本というものは、多くのたましいが宿る芸術作品であると思う。
一冊の本がお客さんの元へ届くまでには、本当にたくさんの方が携わる。

そのリレーの最後、お客さんの元へ届けるという橋渡しができたことは、素直に嬉しい。

でも、そこが糸波舎の主ではないと思うのだ。


もしかしたら、糸波舎は本屋である必要がない。

本たちが育んでくれる、あの深く豊かな時間と空間さえあれば。
その時間と空間を絶妙につくりあげ、色とりどりの糸を結わえるようにして心地よい波をじんわり広げてゆくことができたなら。

糸波舎というやどりに、この世界に少し疲れた旅人がやってきたとき、あたたかさと優しさでそっと解れてゆくように。

この先、糸波舎がどんな姿でどこへたどり着くのか、店主のわたしもこそこそわくわくしている。


6月は糸波舎再開。
2回の出店がある。

とっても楽しみで、ちょっぴり不安で、不思議な気持ち。

車がないから大変だし、倉庫がないから不便だし、今はないものだらけだけれど。
きっとこのゆるやかな流れに乗っていたら、本当に必要なものは自然と集ってくる、そんな気がする。

いい予感。


こつこつ、だんだん。
ぼちぼち、てくてく。



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