園絵琉々

OLとして勤めながらタロットマスターとして数々の著名人から依頼を受ける琉々の物語。たま…

園絵琉々

OLとして勤めながらタロットマスターとして数々の著名人から依頼を受ける琉々の物語。たまに短編物語も。

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ホシノスナハマ

ぷかぷかと浮かんでいるのか、ゆらゆらと揺れているのか。 もうずっと、ずいぶんと長いこと、こうしている気がする。 真っ暗で心地よくて、まるでお母さんのお腹の中のようだ。 前にいたところは、どんなだったか思い出せないけれど、今みたいにゆったりしていなかった気がする。 たくさんの人がいて、ざわざわと騒がしくて、ずっとせわしなくしていた。 ずっとここにいてもいいれけど、誰かに呼ばれている気がする。 さっきから肩や背中をちょんちょんと、誰かが引っ張っているんだ。 『でも、もう

    • Blue Ribbon

      艶やかなブロンドヘアが風になびく。深い臙脂色のプリーツスカートを翻して、彼女は眩い笑顔を振りまいた。 いつもの通学路、友人たちと楽しそうに話しながら彼女が歩いていく。その金色の髪の毛には、いつものように青いリボンが綺麗に巻き付けられている。緩やかにカールした髪の毛に、鮮やかな青がとてもよく映えていた。 薔薇色の頬、桜の花びらのような唇、整った瞳には、長いまつ毛がくるりとカールしていて、キラキラと輝いている。 僕は、その姿を無意識に目で追っていた。 「ロディ!なにしてんだよ。置

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        【第十六話・変化】 その後も悪くなっている葉の手入れや、雑草を抜いたりと、一時間ほど作業は続いた。体力仕事など久しぶりの丘咲は、明らかに疲れている。最後の方は琉々の動きと指示に、ノロノロとついて行くだけになっていた。 「だらしないわね!暑いのはわかるけど、もう少し素早く動けない?」 琉々は呆れた表情だ。二人が同じ太陽の下にいるとは思えないほど涼しげである。 「はぁ…だって琉々さん…」 しゃがんで作業をしていた丘咲が、ヌルっと立ち上がりながら喋り続ける。 「庭仕事がこ

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          【第十五話・空白の日】 月曜日の昼の休憩時間、琉々は食後のコーヒーを、日陰のベンチで楽しんでいる。駅地下にある、お気に入りの店のものだ。時間に余裕がある日は、食後の散歩がてら、駅前まで買いに行くことがある。カップの蓋を外してコーヒーの薫りを楽しみながら、ゆっくりと口をつける。 「琉々!お疲れ様」 通りかかった奈都子が隣に座った。手にはコンビニのアイスコーヒーを持っている。 「お疲れ様〜」 そう言いながら琉々が小さくあくびをする。 「あれ?疲れてる?寝不足?」 「

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          【第十四話・決断】 「何か行動をしないと落ち着かない?現状を見ると、そうなるのもわかるけど、カードでも見たように、道は必ず拓けるわ。私からのアドバイスはさっきカードで出した通りよ。まぁ、どうするかはあなた次第だから、好きにしていいのよ。あなたの人生なんだから、自由にしていいの。今日の私のリーディングを無視することさえ、自由に決めていいの」 琉々の言葉を聞いて、今後は丘咲が空間を見つめたまま、じっと固まってしまった。それもそのはずだ。現状、彼は無職になってしまったのだから、

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          【第十三話・本音と導き】 「あら、言えたじゃない」 分かっていたかのように、サラリと琉々が言ったので、丘咲は不思議そうな表情で、琉々の顔を見た。 「言ったでしょ?転機だって。この機会に、自分の気持ち、願望に素直になってみてもいいんじゃない?人生まだまだこれからなんだから」 トントンと、人差し指で真ん中のカードと指しながら、琉々が優しい口調で導く。 「ここね、現在のカード。ピッタリのが出ているわ【THE FOOL】愚者って意味だけど、カードをちゃんと見てね」 琉々が

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          【第十二話・タロットマスター琉々】 「お待たせ。こっちへどうぞ」 彼は、この空間にまだ慣れていないのか、ぎこちない動きでそちらへ移動する。カーテンを手で避けて中へ入ると、そこは応接スペース以上の別世界が広がっていた。 壁一面の本棚の中は、全て魔法の書のように見えたし、足元の絨毯は、赤を基調としたデザインで、今にも動き出しそうだ。部屋の真ん中には丸いテーブルが設置され、可愛らしいテーブルクロスがかけられており、沢山のタロットカードの箱が積み重なっている。琉々に言われて、丘

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          【第十一話・占いの館】 琉々が表参道駅に着くと、一時半前であった。駅から屋敷までは、歩いて十分ほどで着く。 琉々はゆったりとした足取りで屋敷まで向かった。賑わっている駅前のメインストリートを逸れて、裏通りへ入る。人通りは少なくなるが、休日のため、買い物に来ている若者たちでいつもより賑わいを見せている。 T字路に突き当たり、屋敷のある左へ曲がろうとした所で後ろから声がした。 「琉々さん?」 呼ばれて琉々は声の方向へ振り返る。 「やっぱり琉々さんだ!」 声の主は、丘

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          【第十話・女子トーク】 「いただきま〜す」 二人が同時に料理に手をつける。 奈都子のスープランチは、野菜がたっぷりのミネストローネに副菜とパンが付いている。プレートの上は、色とりどりの野菜で華やかだ。琉々の選んだ本日のランチは、小さなオムライスの横にエビフライが添えてあり、上にはソースがかかっている。その横にはサラダと副菜が付いているワンプレートランチだ。女性が好きそうなメニューが、この店のランチのラインナップである。 「奈都子、相変わらずダイエット中?」 琉々は、好

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          【第九話・休日】 日曜日、三根奈都子は、昼の十一時半前に外苑前駅に到着した。地下鉄の階段を下走りで駆け上がる。地上に出ると、暑さと湿気でむせ返りそうになったが、奈都子は足早に歩き続けた。ヒールの低いサンダルにして良かった、と思う。 駅から歩いてすぐの商業用ビル、その一階にあるダイニングカフェで待ち合わせをしているのだ。チラリと時計を見ると既に約束の十一時半を少し過ぎている。 小さく息を切らして店に到着した奈都子は、入口で店員に待ち合わせの旨を伝えるとすぐに席へと案内してく

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          【第八話・予定外の訪問者】 「ごめんなさい。もう閉店なの」 丘咲の姿を確認しながら、女は言った。丘咲の想像していた主とは全く違い、かなり若く、女にしては背が高かった。実際、丘咲と目線が同じくらいの高さであった。 「あ…そ、そうですか」予想外の人物の登場に、丘咲は少し面食らって言葉に詰まったが、気になる事が沢山ある。ゆっくりと扉を閉めようとする女に話しかけて、引き止める。 「え…ここって占いの館?」頭の整理がついていない丘咲は、思い付いたことを、そのまま口にした。 「占

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          【第七話・深夜の散歩】 ほろ酔いで店を出た丘咲は、大きく伸びをして駅とは違う方向へ歩きだした。酔い覚ましも兼ねて、来たことのないこの周辺を、散歩してみることにする。この辺りの飲食店はガラス張りでテラス席のある店が多く、どの店も賑わっているのが見える。幸い、会社の知り合いは見当たらなかった。 裏通りを奥へ進むと、店がまばらになり、徐々にひっそりとした雰囲気になっていく。街灯だけが道を照らしていた。 T字路に突き当たった丘咲は、そろそろ引き返そうと、くるりと方向転換をする。

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          【第六話・路地裏にて】 「お待たせしました!グラスワインです」 愛想のいい女性店員が、テキパキとした動きで丘咲のテーブルにサッとグラスを置いて行った。カウンター席に座っている丘咲は、そのワインを一口飲んで味わう。 『よくわかんねぇな』 普段は会社の同期と、居酒屋でビールやハイボールを飲むことが多い。しかし、よく行くお店では会社の人間に会うかも知れないと考えて、今日はいつも行くエリアとは違う場所で、珍しくイタリアンの店を選んだ。ワインなど、まともに飲んだことがない。

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          【第五話・丘咲リョウ】 「んだよ…」 丘咲リョウは、ボソッと呟いて歩道の植え込み沿いに設置されているベンチに乱暴に座った。両手で長い前髪をグシャッと掴むと、セットした髪型が崩れたが、そんなことはどうでもよかった。それよりも、今、自分が置かれている状況を整理しようと、必死に思考を巡らせた。 彼は、数時間前に会社から解雇宣告を受けたのだ。いわゆるリストラである。今の社会情勢で会社の業績が落ちていることもあり、大規模な人員整理が行われたのだ。 しかし、丘咲の仕事っぷりに、特

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          【第四話・占いの夜】 部屋に戻った琉々は、冷えたスイカを、キッチンで一口大にカットして、お皿に盛りつけた。リーディングで使う部屋とは別に、小さなダイニングスペースがある。簡単な料理なら、ここできるのだ。幼い頃は、祖母がよくお菓子を振る舞ってくれた。 使いこまれたダイニングテーブルに着いて、スイカを口に運んだ。みずみずしく甘いスイカが口の中に広がり、身体に染み込んでいく。先程の外の暑さがスッと溶けていくようだ。ゆっくりと味わい、身体の熱を冷ます。 「さてと…」 食べ終わっ

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          【第三話・夕暮れ時】 しばらくの間、琉々がウトウトの心地よさを楽しんでいると、ノックの音がした。しかし、客が来るにはまだ早い時間である。 「はぁーい!」琉々は入口に向かって大きく返事する。インターフォンなどないこの屋敷では、こんな風に、アナログな対応を続けているのだ。琉々は、立ち上がって小走りで入口へ向かう。 『安川のおばあちゃまかしら?』そう推理してガチャリと扉を開けた。 「こんにちは!琉々ちゃん」 「あら、安川のおばあちゃま!こんにちは。お久しぶりです」琉々は笑

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