園絵琉々

OLとして勤めながらタロットマスターとして数々の著名人から依頼を受ける琉々の物語。たま…

園絵琉々

OLとして勤めながらタロットマスターとして数々の著名人から依頼を受ける琉々の物語。たまに短編物語も。

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ホシノスナハマ

ぷかぷかと浮かんでいるのか、ゆらゆらと揺れているのか。 もうずっと、ずいぶんと長いこと、こうしている気がする。 真っ暗で心地よくて、まるでお母さんのお腹の中のようだ。 前にいたところは、どんなだったか思い出せないけれど、今みたいにゆったりしていなかった気がする。 たくさんの人がいて、ざわざわと騒がしくて、ずっとせわしなくしていた。 ずっとここにいてもいいれけど、誰かに呼ばれている気がする。 さっきから肩や背中をちょんちょんと、誰かが引っ張っているんだ。 『でも、もう

    • Blue Ribbon

      艶やかなブロンドヘアが風になびく。深い臙脂色のプリーツスカートを翻して、彼女は眩い笑顔を振りまいた。 いつもの通学路、友人たちと楽しそうに話しながら彼女が歩いていく。その金色の髪の毛には、いつものように青いリボンが綺麗に巻き付けられている。緩やかにカールした髪の毛に、鮮やかな青がとてもよく映えていた。 薔薇色の頬、桜の花びらのような唇、整った瞳には、長いまつ毛がくるりとカールしていて、キラキラと輝いている。 僕は、その姿を無意識に目で追っていた。 「ロディ!なにしてんだよ。置

      • 連載小説•タロットマスターRuRu

        【第七話・深夜の散歩】 ほろ酔いで店を出た丘咲は、大きく伸びをして駅とは違う方向へ歩きだした。酔い覚ましも兼ねて、来たことのないこの周辺を、散歩してみることにする。この辺りの飲食店はガラス張りでテラス席のある店が多く、どの店も賑わっているのが見える。幸い、会社の知り合いは見当たらなかった。 裏通りを奥へ進むと、店がまばらになり、徐々にひっそりとした雰囲気になっていく。街灯だけが道を照らしていた。 T字路に突き当たった丘咲は、そろそろ引き返そうと、くるりと方向転換をする。

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          【第六話・路地裏にて】 「お待たせしました!グラスワインです」 愛想のいい女性店員が、テキパキとした動きで丘咲のテーブルにサッとグラスを置いて行った。カウンター席に座っている丘咲は、そのワインを一口飲んで味わう。 『よくわかんねぇな』 普段は会社の同期と、居酒屋でビールやハイボールを飲むことが多い。しかし、よく行くお店では会社の人間に会うかも知れないと考えて、今日はいつも行くエリアとは違う場所で、珍しくイタリアンの店を選んだ。ワインなど、まともに飲んだことがない。

        ホシノスナハマ

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          【第五話・丘咲リョウ】 「んだよ…」 丘咲リョウは、ボソッと呟いて歩道の植え込み沿いに設置されているベンチに乱暴に座った。両手で長い前髪をグシャッと掴むと、セットした髪型が崩れたが、そんなことはどうでもよかった。それよりも、今、自分が置かれている状況を整理しようと、必死に思考を巡らせた。 彼は、数時間前に会社から解雇宣告を受けたのだ。いわゆるリストラである。今の社会情勢で会社の業績が落ちていることもあり、大規模な人員整理が行われたのだ。 しかし、丘咲の仕事っぷりに、特

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          【第四話・占いの夜】 部屋に戻った琉々は、冷えたスイカを、キッチンで一口大にカットして、お皿に盛りつけた。リーディングで使う部屋とは別に、小さなダイニングスペースがある。簡単な料理なら、ここできるのだ。幼い頃は、祖母がよくお菓子を振る舞ってくれた。 使いこまれたダイニングテーブルに着いて、スイカを口に運んだ。みずみずしく甘いスイカが口の中に広がり、身体に染み込んでいく。先程の外の暑さがスッと溶けていくようだ。ゆっくりと味わい、身体の熱を冷ます。 「さてと…」 食べ終わっ

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          【第三話・夕暮れ時】 しばらくの間、琉々がウトウトの心地よさを楽しんでいると、ノックの音がした。しかし、客が来るにはまだ早い時間である。 「はぁーい!」琉々は入口に向かって大きく返事する。インターフォンなどないこの屋敷では、こんな風に、アナログな対応を続けているのだ。琉々は、立ち上がって小走りで入口へ向かう。 『安川のおばあちゃまかしら?』そう推理してガチャリと扉を開けた。 「こんにちは!琉々ちゃん」 「あら、安川のおばあちゃま!こんにちは。お久しぶりです」琉々は笑

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          【第二話・屋敷】 駅を通り過ぎ、少し歩いたところで、角を曲がり細い路地へと入って行く。駅前は賑わっているが、一本道を逸れると静かで落ち着いた通りになる。 裏通りには、服やアクセサリーのお店、オシャレな飲食店がポツポツとある。休日は若者で賑わう通りだ。 それらの店の前を通り過ぎ、通りの先のT字路を曲がった先に大きな木が茂った屋敷がひっそりと佇んでいる。古い外観だが、外壁も庭も丁寧に手入れされている。まるで、魔法使いが住んでいそうな、可愛らしい外観である。アイアンでできた門扉

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          第一話 園絵琉々 「お疲れ様でーす!」 夕刻、オフィスでは女子社員たちの華やかな挨拶が飛び交う。 「お疲れ様でした〜!」 笑顔で挨拶を交わした園絵琉々(そのえるる)は、颯爽と更衣室へ向かう。 金曜日の仕事終わり、更衣室では女子社員達がウキウキと身支度を整えながら、この後の予定や週末の過ごし方について話が盛り上がっている。 「ねえ、琉々はどう?今日もダメ?」 隣にいた同期が、琉々に話しかけた。この後、グループで食事に行くので、その誘いのようだ。 「うん。今日も直帰です

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