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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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2020年6月の記事一覧

間違いなく踊っている埴輪【埴輪紹介所その77】

いわゆる「踊る埴輪」には、踊っているのではなく馬をひいていると言う説がある。 しかし こちらの埴輪は 明らかに踊っている。 無心に。 踊れ 踊れ 踊りこそ我が人生 没頭セヨ。 首をかしげる埴輪はめずらしい。 鋸歯紋の刻まれた長い帽子をかぶる。 手首には袖らしき表現。 上げた太い腕は中空であろう。 口は口唇裂らしい。今なら治せるが、当時は無理だったのだろう。 ほかにも口唇裂の埴輪がある。 群馬県出土の人物埴輪。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物館(旧名称は長

「踊る」にはアゴのある仲間がいる【埴輪紹介所その76】

通称「踊る埴輪」が出土したことで有名な野原古墳から、この人も出土した。 まんまるの目と口、「踊る」と似ている。 鼻筋が通っているところも共通点だが、鼻の頭がちょっと違う。まるい。 そして何より、この人にはアゴがある。 顎ありと顎なし、なぜ両方つくったのか? どういう理由で作り分けたのか? 顔の左右にあるのは耳なのか、ミズラなのか。 ミズラなら男子。 あたまに残ったもの、笠っぽい。 かぶりものなら、男子。 これは髷じゃないよね? 髷なら女子。 体は出ていないらしい。残

アゴのないウルトラアイドル【埴輪紹介所その75】

ご存じ、特徴的で目を引かれる、と言うより、目を剥いてしまう埴輪。 2体一組でご紹介。比較するとわかることがある。 最大の特徴は何でしょうね。 まん丸の目と口か。 人物埴輪では珍しい。 犬形埴輪の目は丸いことが多いかな。 眼窩のまわりがやや突き出ている。 粘土がそれほど乾いていないときに目をあけたらしい。 腕のポーズは2体で一致。 踊っている説と、馬をひいている説とがある。 今のところ、馬曳き説のほうが有力らしい。 でも埴輪研究の歴史はひっくり返ることがある。 腕の

重すぎて持てないカサ【埴輪紹介所その74】

重厚だ。差し渡し1mくらい。 カサがしっかり大きい。 三段。古墳みたい。 カサを支える円筒の台も大きい。 カサから四方に滑り降りる飾り(肋木飾りなどと呼ばれることもあるらしい)がついている。 尖っている。 もちろん、キヌガサ形埴輪の第一の特徴である立ち飾りもついている。 立ち飾りも尖る。 差し込まれている。分割成形。 國學院大學所蔵のキヌガサ形埴輪。出土地不明。 撮影は2011、2017年、國學院大學博物館にて。 反対に、カサの小さいキヌガサ形埴輪もあります

旗を振るキヌガサ【埴輪紹介所その73】

旗のよう。 4枚の立ち飾り、キヌガサ形埴輪についているものです。 キヌガサ形埴輪とは? この展示での解説は「貴人にさしかける傘の形をしたはにわ」とのこと。 下のスカート状のものが傘なんですね。 キヌガサ形埴輪の立ち飾りは少しずつ違う形のものがあります。 旗タイプは少数派かも。 佐賀県唐津市の仁田埴輪窯跡出土のキヌガサ形埴輪。 所蔵は佐賀県教育委員会。 撮影は2012年『発掘された日本列島2012』江戸東京博物館にて。 仁田埴輪窯跡には犬もいました。 またね。

犬か鹿か2【埴輪紹介所その72】

これなーんだ。 埴輪。動物埴輪。そこまでだ。 当初、犬だと思われていた。 右耳にその記録あり。 その後、鹿ではないかとの意見が出た。 このときの展示の表記は「埴輪 犬 大阪府堺市 伝仁徳陵古墳出土」(東京国立博物館サイトの2012年『動物埴輪の世界』展示作品リスト)。 書き換えるには証拠が足りないのか。 しっぽが出てこないと無理か。 2017年の、三の丸尚蔵館での『第78回展覧会 古代の造形 ―モノづくり日本の原点』の図録によれば「他の犬形埴輪と比べると首が長い

犬か鹿か1【埴輪紹介所その71】

これなーんだ。 埴輪。動物埴輪。そこまでだ。 動物埴輪の種類の特定は、なかなか大変。 埴輪時代も今も変わらぬ犬の特徴は? 性質なら、人によく馴れることかな。 犬形埴輪には、首輪をつけたものがある。 日本犬の体形なら、巻いたしっぽでしょう。 動物埴輪のしっぽが出土しておらず、復元だったら? 展示会場では「犬形埴輪」と記載されていましたが、果たしてそうか? ツノのない鹿、牝鹿では? 牝鹿にはツノがない。 牝鹿と犬の違いは? …困った。わからん。 しっぽが出てこない限り迷

2本の脚で立ち尽くす鹿【埴輪紹介所その70】

もう 泣きそう。 だって 矢が刺さっている。 痛いよう。 急いで逃げないと、とどめを刺される。 でも 前後2本の足では走れまい。 とはにこは思っていたのだが、先日前後2本の足で走る犬の映像を見た。 走れるの⁈ しかし立ち止まるのは難しそうだった。何かに寄っかからないと倒れてしまうらしい。 走れず、立ち尽くす埴輪と逆か。 いや 立ち尽くしているように見えて 痛がりながらも逃げ続けているのか。 茨城県つくば市下横場字塚原出土の鹿形埴輪。 所蔵は東京国立博物館。

共感タイムマシン【埴輪紹介所その69】

共感することで 人はやすやすとタイムトラベルできる。 ほかの出土遺物では難しい。驚きや美を感じても、共感はどうか? 埴輪は優秀なタイムマシンと言えましょう。 この哀愁は1500年前から漂っていたのである。 共に時空を漂おう。 耳環がついていたらしき丸い跡がある。 両側にある。左右とも失った。 といって、耳環がないからかなしいのではないはず。 即物的なものとは違う何か。 後ろ姿も見たいなあ。 群馬県佐波郡玉村町の小泉大塚越7号古墳出土の人面付円筒埴輪。高さ63

表面より構造で語る【埴輪紹介所その68】

静かに見ている。 そして 何かを言いかけている。 人物・動物埴輪の口はたいてい開いている。中空だからかな。 円筒埴輪の線刻や彩色を、透孔(すかしあな)が圧倒していった歴史が、人物・動物埴輪にも反映されているのか。 表面より構造。効果的な表現。 表面と言えば、たいていの人物埴輪の顔の線刻は左右対称である。 だが、この埴輪の顔の線刻は左右で違う。なぜか。 群馬県前橋市の中二子古墳出土の人面つき円筒埴輪。口径22cm。 所蔵は前橋市文化財保護課。 撮影は2017年、『東

こっそり笑う【埴輪紹介所その67】

左目が欠けている。眼帯をしているみたい。 裏から見ると、笑っているように見える。 もう一体。 お腹にくっついているワラジみたいなものは何? 側面に斜めについた綾杉紋の物体は? うるさいなあって思ってる? 笑ってる。 よかった。 小さな白い文字。つなぎ合わされる前に書き込まれた記録。 栃木県足利市の行基平(ぎょうきだいら)山頂古墳出土の人面つき円筒埴輪。2体目の高さ55.2㎝、口径28~34㎝。 所蔵は足利市。 撮影は2019年、江戸東京博物館の列島展にて。

埴輪バランス【埴輪紹介所その66】

ツノだか枝だか そんなようなものが4本ついたこれを 帽子だかスカートだか といった形のものに 乗せると こうなります。 ということらしい。 上下別々に作ってから組み合わせた。いわゆる分割成形がなされた埴輪。 少なくとも2体、というか2セットはあるもよう。 たぶんキヌガサ。 キヌガサとは? 従者が主人に差しかける日傘らしい。 この埴輪の場合、キヌガサだとすると、ツノだか枝だかの部分は立ち飾りで、帽子だかスカートだかの部分はカサ。 たぶんキヌガサだが、カサが小さ

鹿の角? 鳥の羽根? 炎?【埴輪紹介所その65】

波にも見える。 なんにせよ上へと向かう。 何がモチーフなのか。 抽象的なイメージなのか? 埴輪のモデルは、わかっている範囲では実際に存在した物だ。 この埴輪の下で広がっている部分のモデルはキヌガサらしい。 キヌガサとは? 従者が主人に差しかける日傘らしい。 漢字表記は蓋、衣蓋、絹傘などと定まっていないので、ここではキヌガサと書く。 そして上の謎の部分は立ち飾り。 飾りをつけるとき、なんとなくでつけることもあるか。 特にモチーフだのモデルだのを考えずに。気分で。 …

広い背中【埴輪紹介所その64】

前面は 腕の付け根がフィットするようにカットされている。 そして背面。 大きく広がっていて前面が見えない。 背後からの攻撃に備えたのか。 前も後ろも、四角い鋲がいくつもつけられている。 上端は革綴じらしい。 ちょうど後ろに鉄製の甲が見える。右3つは短甲、左1つは挂甲。 この埴輪の上部のモデルは短甲ということがわかる。 綾杉紋のウエストから下は草摺(くさずり)。 上部に比べあっさりと線刻のみで表現する。 草摺も広がる。バレエのチュチュみたい。 群馬県藤岡市の白