在るがままの命
生き物の命は本能的に生きようとするみたいです。
生きようと意識をせずとも身体に問題が無く健康体であれば、心臓が拍動をし、血管が脈打ち、肺が呼吸をします。
これは人間に限らずでしょう。
もし何かしらの異常が体内で起これば、身体が危険信号として、身体に何か症状を訴えます。
例えばなにかの感染症に罹った場合、発熱したり、吐き気を催したり、どこかの臓器に痛みを感じたりなどなど。
医療という技術があるおかげでそれに対処をすることができます。
薬を飲んだり、点滴を打ったり、或いは身体にメスを入れて異常である箇所を取り出したり。
人工的に命を健康的に保とうとすることができるはずです。
もし仮に医療というものが今のように存在もしくは発展していなければ、ここまで生き物は生きながらえることは無かったのでは、と思います。
先述した通り、生き物は勝手に生きようとしてくれます。
ですが、「心」は勝手に生きようとしている、と言うには少し本能的なものとは訳が違う気がするのです。
心はなにかの細菌などによる感染症には罹りません。心が痛みを感じても痛み止めは無いし、心に傷がついても血は流れません。
心がSOSの叫び声をあげた時、最も素早く処置を行えるのは「言葉」であると僕は思うのです。
言葉をもって、その痛みに痛み止め代わりの言葉という塗り薬を塗って。
言葉をもって、傷ついたその傷口に消毒液とガーゼの代わりの言葉で傷の手当てをして。
もしも心臓ではなく、「心」が生きることを止めようとしている時は言葉でその心に"延命措置"を施して。
本能的に生きようとする、実体のある身体とは違って心には実体がありません。
もしも心が何か悪いものに蝕まれてしまった時、本能などでは生きようとしてくれない時が時折心に訪れる時があります。
なんとも難儀なものです。
心と身体が一致しない時があるのです。
心。ここで言い換えれば「脳」が必要な指示を出しても、その通りに身体が言うことを聞いてくれない時もあるのです。
脳は言います。「身体を起き上がらせなさい」
ですが身体が言うことを聞きません。
脳がまたこう言います。「必要な睡眠が足りないから眠りなさい」
ですが、なのにどうして身体は眠れないのです。
脳があれこれと身体に指示を出すのですが、それを実行できなかったりします。
そんな時に、"脳"であり、同時に"心"に薬が処方されたりするのです。
意欲が出やすくなるようにする薬。
睡眠を促す薬。
心の興奮状態を落ち着けるための薬もあります。
時には、それは誰かからの言葉という薬であったりも。
実際に僕はこれまでにいずれもの薬を精神科で処方箋をもらって服用したことがあります。
その薬は効いたり、効かなかったり。
言葉という薬も効いたり、効かなかったり。
どうやら話で聞くには、精神科の薬の効き目は個人差が大きかったりするようです。
熱が出た時、市販の物でも下熱剤を飲めば熱は大抵下がるでしょう。
しかし心の病気、いわゆる「精神疾患」という言い方をしたりしますが同じような患者でもそこまでに至る経緯は様々です。
例えば、インフルエンザに感染したら、原因となるインフルエンザウイルスというもの自体に直接効く薬があります。
ですが、原因となるウイルスなどが存在しない、精神的な病気を数日で治せるような薬はまだ無いようです。
薬は症状を抑えるためのものですが、少なからず身体の臓器には負担がかかります。
出来ることなら薬を必要としないことが本来命の在るがままとして理想的なのでしょう。
「身体」「病気」「心」「脳」「精神疾患」「薬」──── ────
なんだか似ているような似ていないような文字ばかりで。
やっぱり、なんとも難儀なものです。
僕の抱える精神疾患も、時間はかかったとしてもいつかは寛解すると思っています
本来、生き物として在るがままの命。
「良寛さん」という江戸時代のお坊さんのお言葉をお借りしながら。
ーー災難に逢う時節には災難に逢うがよく候
死ぬ時節には死ぬがよく候
これはこれ災難をのがるる妙法にて候ーー
災難が降りかかってくる時は、その災難に遭いなさい。
死ぬべき時が来たら、そのまま死になさい。
と、解釈するようです。
何事も受け入れることが必要だと説いたそうです。
確かに在るがままでいるのなら。
今はとにかく最も確からしい一番身近で目の前のことを積み重ねることが良いのでしょう。
朝日が昇れば翌朝を迎える。
そしてその日を生き延びること。
そしてまたその翌朝を迎えること。
その繰り返しが命となるのではないでしょうか。
春が来たら春にいよう。
夏が来たら夏にいよう。
秋が来たら秋にいよう。
冬が来たら冬にいよう。
少なくとも僕はそうありたいと思っていますし、そうであれるようにと自分のことを信じています。
それまで僕は僕で言葉を綴っていきたいと思うのです。
ひろき
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