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#冬

distance

distance

冬は恋が切ない季節
君の震える声が聴きたい
右手は温もりを欲して
心の叫びを何かがかき消す

会いたい、という言葉は
白い息になって消える
なんでもないふうだけど
電話の向こうでは涙を

ごめんね、ほんとごめんね
謝っても謝りきれないや
君はきっと強がるから
大丈夫って言うだろうけど

やっぱり僕は君が好きで
だから心が保つんだろうか
せめて自分のちっぽけな体で
包み込んであげられたら

浅葱

浅葱

見えるものが総てなら
見えないものに苦しまず
少し生きやすくなるかな

でも、見えない自分の気持ちが
表出されず、見向きもされず、
気づかれないんだと思うと

少しだけ
ほんの少しだけ
切ないな

鈍感な君は気づくはずないよね
朴念仁を好きになったから悪いの
私も伝えられずに
見えないものに苦しんでいて。

雪晶

雪晶

気づいたら、一面まっしろ。冬の街。

タイヤが唸るアイスバーン。

ガス灯に燈る希望と絶望。

スパイクが削るかき氷。

周囲に知らせる黄色灯。

人が漏らす紅い溜息。

乾木が爆ぜる銃声。

子供がはしゃぐ集積所。

片づけられる大衆の集積。

踏みしめられる白い泣き声。

“ぼたん”と呼ばれし者の宿命。