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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十一話(5) 彷徨う落とし物

第一話のスタート版 
第二十一話(1)(2)(3)(4

「契約ボードも入ってる」
 カノオ君が歓喜の声をあげた。

「どういうこと?」
「待ってる間に、かばんを取ってきてやったんだよ」
「どこから?」
「駅前公園のベンチ」
 犯人がバッグを置いた、と言った場所だ。

「レイター、お前が犯人だったのか!」
 カノオ君が怒った。

「バカか、あんたは」
「レイター、ちゃんと説明してちょうだい」

n39手を腰に@白襟長袖下目2

 わたしは腰に手を当てて、レイターをにらんだ。

「あんたらも見てただろが、モニターで携帯ナビの動きを」
「あの、赤い点?」
「そうさ。駅前公園でいったん止まっただろ。金目のもんだけ抜き取ってるなって、想像つくじゃん。携帯ナビは高く売れるが、会社の契約ボードなんて足がつくだけで、売れやしねぇんだから」

「わかってたなら、警察に伝えておけばよかったじゃないのよ」
 いくら警察が嫌いだと言っても、困った人だ。

「警察に届けてたら大変だぜ。証拠品の手続きが終わって戻ってくるまでに一ヶ月はかかる。契約やり直しだ」

 そうか。
 市販の携帯ナビも返ってこなかったのだ。
 契約ボードを警察に渡したくはない。

 レイターの行動は正しいけれど腹が立つ。
 文句を言わずにいられない。
「どうして先に教えてくれないの。あなたって、どうしてそんなに意地悪なのよ」
「ティリーさんは怒った顔もかわいいねぇ」
「・・・・・・」

 やっぱり厄病神だ。最低だ。

「あれ、アディブ先輩の契約ボードがない?」
 カノオ君の声にわたしは慌てた。
「え?」

「大丈夫だよ。俺がアディブさんに届けるから。あんたらがまた落としたら大変だからな」

n28下向き@4後ろ目にやり逆

 レイターはポケットからアディブ先輩の契約ボードを取り出し、にやりと笑った。
 そんな厄病神の顔を見たら、イライラした。

 本社に着いた時にはもう深夜だった。
 残業しないですむはずだったのに。

 厄病神のせいだ。
 営業部のフロアに、アディブ先輩が残って待っていた。

 主任である先輩は、透明なパーテイションで仕切られたブースの中で仕事をしている。
 レイターがアディブ先輩のブースへと、契約ボードを届けに行った。

 自分の席で出張の整理をしながら、つい、アディブ先輩のブースが気になる。

**

「ありがとう。レイター」
 アディブはコーヒーを淹れながら礼を言った。

 ブース内は外の音声がシャットされ静かだ。逆に中で話す会話は外に漏れない。
「ったく、あんた、これが敵の反連邦に拾われたら、どうするつもりだったんだよ」
 レイターが契約ボードを手渡した。

「まさかカノオ君が、電車に置き忘れるとは、想像もしてなかったもの。私が持って帰るより安全だと思ったのよ。

横顔ふとネックレス

「まあ、その判断は正しいけどな」
 諜報員の接触が、敵に気付かれていた時のための用心。

 アディブは肩をすくめた。
「泥棒さんも、契約ボードの中に連邦軍の三カ年機密計画が入ってるとは、思いもしなかったんでしょうけど」
「カノオのことなんて放っておきたかったが、おせっかいなティリーさんに感謝だな」

 レイターは出されたコーヒーを飲みながら、ティリーの方へ目をやった。     (6)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」