見出し画像

銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十一話(2) 彷徨う落とし物

第一話のスタート版 
第二十一話(1)(2

 二人して方向音痴とはどうしたものか。

 ビル街なのに人通りも少ない。
 角まで行けば、大通りの雰囲気がつかめるかもしれない。
 とりあえず、カノオ君と歩きだす。

 その時、レイターのエアカーが横に止まった。
「ったくよう」
 運転席でレイターがあきれた顔をしていた。

n205レイター横顔@2後ろ目あきれる

「電車にせよ車にせよ、普通は大通りへ出るもんだぜ」
「わかってるわよ」
「じゃ、何で反対方向に向かってんだ」
「反対?」

「もういい、乗れよ。割増料金だからな」
「ありがとう」
 お礼を言って、後部座席にカノオ君と一緒に座った。

「警察署へ行きたいんだけれど」
 と、いうわたしを無視して、レイターはカノオ君に話しかけた。
「あんた、携帯ナビどうした?」
「カバンと一緒に無くした」
「そりゃ良かった」

「レイターったら。どうしてそう言うことを言うのよ」

n36@3白襟長袖口開けて怒る

 この人はほんとに失礼だ。

 レイターが、エアカーのナビーゲションシステムを開く。
 そうよ、最初から警察署を入力すればいいのよ。と思ったのだけれど、レイターは見たことのない、複雑な操作をはじめた。

「カノオ、あんた、電車ん中でかばん忘れたな」
 レイターが検索をかけたのは警察署ではなかった。ナビの地図を見ると、線路に沿って赤い点滅が動いている。

「そういえば、網棚の上に置いたんだった」
 カノオ君がバッグの場所を思い出した。

「この赤い点に、カノオ君のバッグがあるってこと?」
「ああ、カノオの携帯ナビに、逆探知をかけたんだ」
 それって違法行為じゃないのかしら?
 でもとりあえず、見つかってよかった。
「バッグは今、どこなの?」

 わたしの問いに、レイターはおどけて答えた。
「はい、ここで問題です。高速特急で一時間揺られると、どこまで行けるでしょうか?」
 カノオ君の真っ青な顔が、さらに青くなったように見えた。

n230カノオ青ざめ

 レイターは車内アナウンスの真似をした。
「まもなく特急は、第二都市のキリランに到着しまぁす。駅に連絡入れて、かばんをお引き取りくださぁい」

「ああ、そうする。ティリー、通信機を貸してくれ」
 カノオ君が通信を架け始めた。

「ねえ、レイター。キリランってここからどのくらいかかるの?」
「エアカーで二時間ってところだ」
 往復で四時間。さすがに遠い。
 レイターをつきあわせる訳にはいかない。

「ま、後はカノオが何とかするだろ。カネなら、俺が利子付けて貸してやるよ」
「いいです。わたしが立て替えますから」
「あんたのことだ、無利子って言い出すんじゃねぇの」
「当たり前でしょ。同僚が困ってるのに」
「っつうか、こいつの自業自得だぜ」

 カノオ君は通信機で一生懸命バッグの説明をしている。その声がどんどん焦ってきた。
「B4サイズの黒いカバンです。ええ、五号車です。網棚の上に置いたんですよ。見つからないですか?」     (3)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
イラスト集のマガジン

ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」