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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十五話(2) 正しい出張帰りの過ごし方

第一話のスタート版 
第二十五話(1)(2
第二十五話 まとめ読み版

 しっかり者のサブリナと、のんびり屋のジョン先輩。ちょっと意外な組み合わせだ。 

「そっかぁ、サブリナとティリーさんは同じ営業だから二人が知り合いでも不思議じゃないね」
 ジョン先輩が笑顔でおっとりと言った。

横顔にっこり逆カラー

「というか、ジョン。ティリー先輩はわたしのメンターなんだから」
「え? そうなの」 

「サブリナの入社当時の話ですけどね」
「いえ、ティリー先輩は、今もわたしのメンターです」
 サブリナが営業部に配属された際、わたしはメンターと呼ばれる育成係に指名され、彼女に社内のことを教えた。
 今では、サブリナは隣の法人営業課でアディブ先輩の次に営業成績がいい。わたしが教えることは何もない。

「ジョンったら、ティリー先輩のこと知っていたなら、教えてくれればいいのに」
「いやあ、いつも三人で見るのが普通だから、気にしてなかった」

 サブリナが頭を下げた。
「ごめんなさい。先輩。噂が本当だなんて知らなかったんです。お二人の邪魔をするつもりは無くて・・・」

 噂? 
 お二人の邪魔? 

 わたしは慌ててさえぎった。
「ちょ、ちょっと待って。わたしとレイターはつきあってるわけでも何でもないから」
「え? だって、先輩、昨日ここに泊まったんですよね」
「それはそうだけど」
「ここ、レイターさんの家ですよね」
「そうとも言えるけれど・・・」

「先輩、照れなくてもいいですよ」
 サブリナがウインクした。

n250サブリナウインク@逆カラー

「だから、違うんだってば」

「何してんだい?」
 レイターが中から出てきた。
 レイターはサブリナを見ても驚きもしない。ジョン先輩の彼女だと知っていたようだ。

 サブリナが謝った。
「レイター、ごめんなさい。ジョンがいい穴場があるって言うから来たんですけど。この人、気が利かなくて。ティリー先輩と二人でレース見るはずだったんでしょ」

「あん? 元々、ジョン・プーがティリーさんを連れてきてくれたんだから構やしねぇよ。なあ、ティリーさん」

下から見上げる 青年にやり

「え、ええ」
 何だか話がうやむやになっている。

「あれ、きょうは片づいてるなぁ」
 レイターの部屋に入ったジョン先輩が驚いた。
「ああ、ティリーさんが片づけてくれた」

「いつもは僕が部屋のモノを触るだけで怒るのに」
 研究所勤めのジョン先輩は、レイターが一番触れられたくない宇宙船の改造部品をいじっては怒鳴られているのだ。

 サブリナが納得したようにうなずいている。
 いやな予感がした。彼女、勘違いしてるんじゃないだろうか。わたしが泊まり込んで部屋の掃除までしてるって・・・。

「誰がどこに座る?」
 レイターが聞いた。
 聞くまでもないことだ。
「お客さんがソファーに決まってるでしょ!」

n39手を腰に@白襟長袖下目2

 そう言って二人をソファーに座らせてから気づいた。

 二人をお客さん、って呼んだけど、ここはわたしの船じゃない。わたしもお客さんだったことに・・・。

 レイターが4D映像システムのスイッチを入れた。
 宇宙空間が広がる。
「うわぁ、ほんとにすごいですね」
 サブリナが感動している。
「ここ、いいだろ」
 彼女といるからか、ジョン先輩の雰囲気が少し違う。浮かれている感じ。

 わたしは床のクッションに座った。
 レイターが隣に座って映像を操作する。
「ジョン、画面どうする?」

「サブリナは、プライベーターが好きなんだよね」
「ええ、チーム・スチュワートを応援してるんです」
「へぇ、俺と一緒じゃん」
 わたし以外の三人がスチュワートの話で盛り上がる。

 チーム・スチュワートは、ベンチャー企業の社長ライネッツ・スチュワート氏がオーナーの個人チームだ。 

n65スチュワートスーツ

 S1レースはうちのクロノスみたいにメーカーによるワークスのチームが多い中、よくがんばって入賞している。
 ただ、表彰台には届かなくて『万年六位』と呼ばれている。

 話の流れから、自然と大画面がスチュワートの船の映像になった。

 みんなクロノス社の関係者なのに、誰もうちのチームのことを話題にしない。
 いつもは専務のエースが大画面なのに・・・。    (3)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
イラスト集のマガジン

ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」