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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十五話(1) 正しい出張帰りの過ごし方

第一話のスタート版
第一話から連載をまとめたマガジン 
第二十四話「ようこそ展覧会へ」
第二十五話 まとめ読み版

 わたしが浅はかだったのは間違いない。

 フェニックス号で二泊三日の出張が終わって、ソラ系へ戻ってきた。週末の明日は宇宙船レースの最高峰S1グランプリがある。

 今晩は前夜祭だ。
  
 どうせフェニックス号で見るのだから、と、深く考えもせずにレイターに提案した。
「もう一泊してもいい?」

n12正面色その2にこ

「あんたがよけりゃ、構わねぇよ」
 ということで、フェニックス号に延泊した。

 この船、自宅と同じぐらいのんびりできるし、ご飯もおいしい。

 そして、レイターの解説を聞きながら、夜はS1の前夜祭番組を楽しんだ。
 フェニックス号の4D映像システムは素晴らしい。

 インタビューに答えるS1レーサー『無敗の貴公子』ことエース・ギリアムが、わたしの目の前で語りかけてくる。

n62エース正面線画@微笑カラー

 かっこよすぎる。
 憧れのエースを思いっきり堪能する。


 翌朝、遅めの朝ご飯を食べている時にレイターが言った。
「そうだ、ジョン・プーが彼女を連れてくるってさ」
「あら、そうなんだ」
 好きな人がいると言っていたジョン先輩。うまくいったんだ。知らなかった。

 S1レースをフェニックス号の4D映像システムで見る、という楽しみをわたしに教えてくれたのは研究所のジョン先輩だった

n50カラー微笑む

「じゃあ、レイターの部屋、少し掃除した方がいいんじゃないの?」

 レイターの部屋は,足の踏み場がほとんどない。
 ジョン先輩が彼女と来るなら、座る場所をつくった方がいい。

「そおだなぁ」
 気乗りしていない返事だ。めんどくさがっている。
「じゃあ、わたしが片づけるわよ」
「ふがっ」
 レイターは他人に部屋のモノを動かされるのが嫌いなのだ。

 レイターの部屋に足を踏み入れる。

 一見、めちゃくちゃに散らかっているように見える。
 でも、わかってきた。レイターの頭の中では散らかってるわけじゃなくて、それなりに順序立てて置かれている。

 レースのたびにこの部屋へ来ているうちに、何となくその法則がわかってきた。

 机の上や近くにあるプラモデルや本は最新理論の検証。
 これには絶対触ってはいけない。

 ベッドの上にあるガラクタは修理に使う道具。
 ソファー脇の床にあるディスクなどは趣味。趣味のモノは場所を動かしても平気。

 わたしが片づけ始めた。

 レイターはベッドに寝っころがりながら、チラチラ様子を見ている。

n37ベッド柄シャツちらり見カラー

 気になるのなら手伝えばいいのに、と思いながら、趣味のモノからまとめていく。
 レイターは何にも言わない。

 それにしても危ないなあ、刃が剥き出しのままナイフが床に落ちてるし。
 ソファーに座る場所を確保し、床にできた空間にクッションを置く。

 そして、ジョン先輩は予定より早くやってきた。
「いらっしゃい」
 わたしが玄関でジョン先輩を迎えた。

「ティリーさん、随分早く来たんだね」
「きのうまで出張だったんで、そのまま泊まっちゃいました」
「えーっ!」

 わたしの返事を聞いて、ジョン先輩の後ろから女性の声が聞こえた。ジョン先輩の彼女。
 その声に聞き覚えがある。
「ティリー先輩。やっぱりレイターさんとつきあっていたんですか?」

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「サ、サブリナ!」
 ひょっこり顔を出したのは、営業部の後輩サブリナだった。
    (2)へ続く

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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」