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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十五話(3) 正しい出張帰りの過ごし方

第一話のスタート版 
第二十五話(1)(2
第二十五話 まとめ読み版

 いつも、この船でS1を観戦しているけれど、きょう初めて気がついた。

 ジョン先輩もレイターも、エースの画面を見たいわけじゃなかったんだ。わたしに気を使ってくれていたのか。

 少し、気分が落ち込む。

 その時、わたしの目の前にサブ画面が開き、エースの横顔が映った。

n63エース横顔む@カラー

 かっこいい。 

 サブ画面だけど、目の前で見れば十分に大迫力だ。
 レイターは、わたしのためにサブ画面を切り替えてくれた。

「ありがとう」
 隣に座るレイターにお礼を言った。
「あん? レース全体の状況を知るにゃ、先頭カメラの映像が一番だからな」

逆振り向き

 わかっている。

 わたしに気を使ってくれたこと。
 レイターはよく気が利く。
 でも、あまりにさりげなくて、気をつけていないとすぐ見逃してしまう。最近、そのことに気が付いた。

 レースがスタートした。

 わたし以外の三人は大画面を見ているけれど、もうわたしは目の前のサブ画面に釘付けだ。

 うっ、きょうもエースは素敵だ。
 ポールポジションからトップを独走だわ。

 ジョン先輩が、サブリナに話しかける。
「ティリーさんはエース専務の大ファンなんだ」
「へえ。愛社精神に溢れてるんですね」
「というか、専務に憧れて入社したんだそうだよ」
「レイターさん、妬けますね」
「ったくだぜ」
 ちょちょっと、その会話止めて欲しい。

 レイターたちが応援しているスチュワートの船は、調子がよくなかった。
「バカ野郎! 冷却装置が悪いのにふかすな!」
 いつもと同じ様にレイターが罵倒している。
「ったく、俺ならもっとうまく攻めるぞ」

 そんなレイターの様子を、ジョン先輩とサブリナが見て笑っている。
「面白いだろ?」
「面白いわね」
 二人は楽しそうだ。

S51プーとサブリナ2

 胸がキュンとした。いいな、付き合ってるって。

 お互いがお互いを一番大切な人、とわかっている状態。
 満たされて、安定している関係。

 わたしにも学生時代に付き合ってる彼氏がいた。
 嫌いになって別れた訳じゃない。遠距離の果ての自然消滅。

 サブリナがうらやましい。
 彼氏が近くにいて、一緒に時を過ごして、二人で共有するものを積み重ねていく、って素敵なことだと思う。

 好きな人と一緒にレースを見るなんて最高だ。

「おっと、面白れぇ展開になってきたな」
 レイターの声で画面に集中する。いやだ、エースのタイムが落ちてる。
「右の補助エンジンがうまく回ってねぇな。直線でエースが気がつかなきゃ、楽しいぞ。二位のオクダが追いつく」
 レイターがうれしそうに言った。

 むかつくことに、この人は『無敗の貴公子』のエースが負けるのを楽しみにしている。
「エース! 右の補助エンジンよ!」

t23@2色@2白襟長袖力こもる

 わたしは叫んだ。

 わたしの声がエースに届きますように。
 直線に入った。
 息を飲んで見守る。

 握りしめる手に力がこもる。

 エースの船が加速した。
 迫ってきた二位の船との差が開きだした。
「ちっ、気づいたか。つまんねぇの」

「やったぁ」
 わたしはほっとした。

 そして気が付いた。

握る手

 隣にいたレイターの手を、思いっきり握りしめていたことに。      (4)へ続く

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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」