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SUMIYU
2018年4月29日 14:48
† スライムとは、不定形・半液状の肉体を持つ生物、魔物の総称である。 肉体の質、大きさ、能力や知能などの面で多種多様なスライムが存在するが、往々にして厄介で御し難い魔物として認識されている。 ダンジョンの低階層においても棲息し、比較的緩慢な動きで獲物を待ち伏せし襲いかかる。そして自らの半液状の肉体で獲物を覆って窒息死させたり、強い溶解液で獲物を溶かして消化するといった仕方で捕食を行
2018年4月29日 00:55
~つづかれる~† キザシの長い指先が踊るように動き、手にした細い鉄鉤が古びた鍵穴を舐める。 カチリ。 昨夜ガイオが徒党に引き入れた手練れの盗賊はフードの下で、無精ひげに覆われた口元をほころばせ、合図した。ガイオが笑って頷き、前衛の三人がしっかりと武具を構えた。 鉄で補強された頑丈なドアがゆっくりと開かれ、暗闇と共に饐えた悪臭が漏れ出した。 盾と斧で壁を作り、私たちは目を凝らし耳
2018年4月26日 23:48
~つづかれる~† 手に入れた革外套を宿屋に置いて、私は酒場に向かった。 大川の水を引き込んでいる水路などを見て回っていたので日も暮れ出し、町のあちこちで灯がともりはじめている。 私は乾いた冷たい風を浴びながら酒場へ急いだ。 酒場にはすでに客がちらほら入っており、早くも酔いが回った職人風の男が前衛的な姿勢で椅子にもたれながら上機嫌で歌っていた。 ビールを一杯と、大皿で芋と肉をもら
2018年4月25日 23:24
~つづかれる~† 私にとってか野盗にとってか、いずれにしろ厄介な災難を終え私は町に戻ったが、まだ日も明るくすぐに酒場に籠ることもないので市場の様子を見に行った。 昼も一度食料を調達しに来たが、改めて回ってみると市場はこの規模の都市としては驚くほどの賑わいを見せており、たくさんの商人や客が大声で物品をやり取りしている。 まるで港町のような活気である。 色々の品を眺めながらうろついて
2018年4月25日 00:42
~つづかれる~† 私が後ろを振り返ると、石を投げれば当たるほどの距離に一人の若い男が立っていた。厚手の服をまとい丈夫そうな毛皮の靴を履いて、右腕には短剣をしっかと握っている。 私をじっと見据える彼の眼は殺気立っており、無言でこちらににじり寄ってきた。 初対面のこの男が私とあたたかい友好関係を築く意図を持っていないことはすぐにわかったので、私は慎重に行動することにし、辺りを確認した。
2018年4月24日 00:13
~つづかれる~† 我ら徒党は町に戻ると門のところで一度解散した。 件のドア開錠のための盗賊を探しに、ガイオとテレトハは町中心部の広場に向かった。人探しや情報交換など、夜は酒場で昼は広場でという習慣のようだ。 他の二人も別々の用向きがあるらしくそれぞれ雑踏に消えた。 私はというと、貴殿は昨日着いたばかりであるしダンジョン潜りも初めてでさぞ疲れているだろうから自由にしてゆっくり休むと
2018年4月22日 23:05
~つづかれる~† 「向こうにいる!」 ジョセフィンの警告を受けて我々は聴力を厚いドアの向こうに集中させた。 確かに、ガサガサと何かの音がする。魔物だろうか。我々の間に緊張が走った。 ガイオが静かに取っ手をつかみゆっくりと引き、ドアは低い音を出してきしんだが、鍵ががっちりと閉まっているとみえて開く気配はない。 ガイオとリドレイは鍵のようすを子細に調べ、難しい顔をしてこちらに向き直っ
2018年4月22日 00:55
~つづかれる~† 隊列を組んで洞窟をしばらく進むと、ガイオが松明を振りながら注意を促した。足元に歪な階段がある。 階段はしばらく下り、また平らな地面になった。ちょうど地下1階といったところだろう。地面とは言ってもところどころ石床が作られており、明らかに人工の建造物であることがわかる。 洞窟の道は三人が横並びに歩けるほどの幅があり、右に左に迷宮のように折れ曲がっている。ダンジョン内部の
2018年4月20日 22:43
~つづかれる~† 翌朝。 気持ちのよい青空が広がっていた昨日とは打って変わり、雲が厚く窓から差し込む日も弱々しい。 簡易な朝食を済ませて宿屋を出、昨夜酒場で取り決めた待ち合わせ場所へ向かった。町を出てすぐの見晴らしの良い丘である。 旅外套で身を覆って冷たい風を避けながら、揺れる穂草を踏みしめ踏みしめ丘を登るとダンジョン潜りのうち三人が既に着いて座り込んでいた。 「よく眠れたかな
2018年4月20日 00:21
~つづかれる~† 衛兵の番小屋を出て、町をしばらく散策するとあっという間に日が沈んでゆく。山脈から吹き降ろす風が冷たい。 取り急ぎ宿屋の場所だけを覚え、酒場に駆け込んだ。 あかあかと灯火のもれる酒場には「樫の盾」と木の看板がかかり、ドアをくぐるとすでに大勢の客で賑わいを見せていた。 衛兵によればダンジョン潜りをする連中はここで情報を交換し、仲間を探し、徒党を組んで出かけるのが常
2018年4月19日 19:39
†ブチブチという不快な音と共に粘液をまき散らし、人の腕ほどの巨大イモムシの群れがのたうちながら突進してくる。さらにもう一塊のイモムシ群が岩の天井からドサッと落ちてきた。仲間たちが私に目配せする。私は頷き、一呼吸おいてゆっくりと詠唱した。ファイアボール。イモムシと粘液が焼け、悪臭が通路に充満する。炎に包まれながらもいまだ転がり回る数匹の巨大イモムシをじっと見据え、私はもう一度詠唱