【ダンジョン潜り】 (5) ~ネズミ退治~
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「向こうにいる!」
ジョセフィンの警告を受けて我々は聴力を厚いドアの向こうに集中させた。
確かに、ガサガサと何かの音がする。魔物だろうか。我々の間に緊張が走った。
ガイオが静かに取っ手をつかみゆっくりと引き、ドアは低い音を出してきしんだが、鍵ががっちりと閉まっているとみえて開く気配はない。
ガイオとリドレイは鍵のようすを子細に調べ、難しい顔をしてこちらに向き直った。
「だめだな。盗賊を連れてもう一度来よう」
「盗賊?」
私は尋ねた。
「そこいらのケチなコソ泥じゃないぞ。開錠、仕掛け、その他。手の技を使うダンジョン潜りだ。この頑丈な扉では打ち割るにも骨が折れるし、あまり長く音を出すと魔物が集まってくる。残念だが今日のところは一旦戻ろう。町で開錠出来るやつを探す」
ガイオはさっさとドアに見切りをつけて、皆に後退を促した。
さて我々が後ろを向くと、少し先の闇の中でキイキイという鳴き声のような音が聞こえた。
前衛の三人がさっとそちらに向かって構え、ガイオが松明をかざした。
リドレイはすでに祈りの詠唱をはじめており、マジックライトが廊下をぼんやりと照らしていく。
そして見えた。巨大なネズミである。
よく街路の隅を徘徊しているような灰色のネズミだが、これは犬猫ほどの大きさがあり、尾が異様に太い。
巨大ネズミは真っ赤な目をぎらぎらと光らせながらまたキイキイと鳴いた。
私はブクブクと太った異様な動物を前にひどくおぞ気がしたが、他の皆は冷静だ。
マジックライトの光は今や廊下を真昼に変えたが、ネズミは逃げるどころか怒りをあらわに我々に向かって飛びかかってきた。素早い。
咄嗟にリドレイが盾を振った。床にはたきつけられた巨体が鈍い音を出す。
ネズミはすぐに起き直ったが、それが動き出すより早くガイオの剣の刃先が背に叩き落とされた。しかし巨大ネズミの毛皮はいやに丈夫らしくその一撃を逃れ、牙をむき出しにしてまたこちらに向かってきた。
リドレイがまた盾ではたく。
ガイオの剣、リドレイのメイス、盾、剣、メイス... 数発がネズミをとらえ、動きが鈍った。
そこに振り下ろされたのはジョセフィンの戦斧。
ネズミの体がつぶれ、何とも不快な奇声を伴って内臓と血が口から飛び出した。ネズミは動かなくなった。
こうして私の初めてのダンジョン潜りは太ったネズミ一匹の退治で終わり、我々は得る物もなく洞窟を後にした。
ゴーン...ゴーン...
つたの牢獄を出る。
往路と同じようにグラーアムの声が頭の中で鳴り響き、まだ明るい日の中を我ら徒党は町に戻った。
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ガイオ 戦士 ○
ジョセフィン 戦士 ○
リドレイ プリースト ○
ぼるぞい 魔法戦士 ○
テレトハ メイジ ○
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金くれ