【ダンジョン潜り】 (8) ~革外套~
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私にとってか野盗にとってか、いずれにしろ厄介な災難を終え私は町に戻ったが、まだ日も明るくすぐに酒場に籠ることもないので市場の様子を見に行った。
昼も一度食料を調達しに来たが、改めて回ってみると市場はこの規模の都市としては驚くほどの賑わいを見せており、たくさんの商人や客が大声で物品をやり取りしている。
まるで港町のような活気である。
色々の品を眺めながらうろついていたが、これからのダンジョン潜りに役立つ何がしかを探してみようと思い立ち、それらしき店はないかと見まわした。
すると凝った細工の籠を売る露店の向こうに、一軒の年季の入った店を見つけた。
店の玄関には「ドラゴン殺し」の屋号と武具の絵を彫った看板がかかっており、ドアの装飾が妙に派手だ。
店に入ると背の高い白髪の老婆が金属の小盾を磨いているところであった。
「鑑定かね」
老婆が私を見て、言った。
昨日ここに到着してダンジョン潜りを始めることにしたといきさつを説明すると、老婆は私の顔をじっと見て頷いた。
「そうかい。じゃあまずは外套を着ていくといい。今あんたの着けてるようなぺらぺらなのじゃあ駄目だ、溶かされちまう。魔物は変な汁を浴びせてくるもんだよ」
「汁を」
私が頷くと老婆は慣れた手つきで奥の棚から厚手の革外套を出してきた。ずいぶんと埃をかぶっている。
古い物だというので大分まけてもらい、私は革外套をかついで店を出た。
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金くれ