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【ダンジョン潜り:追補編】 ~スライムについて~

 スライムとは、不定形・半液状の肉体を持つ生物、魔物の総称である。

 肉体の質、大きさ、能力や知能などの面で多種多様なスライムが存在するが、往々にして厄介で御し難い魔物として認識されている。

 ダンジョンの低階層においても棲息し、比較的緩慢な動きで獲物を待ち伏せし襲いかかる。そして自らの半液状の肉体で獲物を覆って窒息死させたり、強い溶解液で獲物を溶かして消化するといった仕方で捕食を行う。

 知能の高いある種のスライムのうちでは獲物や死骸から奪った武具で武装したり、それらを巧みに使いこなすものまで確認されている。ただし綿密な戦術を構築したり術を行使するような知性を持ちあわせたスライムはいないといわれる。

 また、他の生物や魔物、あるいは無機物に擬態したり、そのために肉体の色を変えるものも存在するようだ。

 ほとんどの場合スライムの動きは遅いので、逃走は容易であることが多い。

 しかしいざ対峙するにおいては、物理的な殴打や切断が無力であり、恐怖の感情も持たないことから、術の行使をもってしなければ撃退は困難だ。

 単独でのダンジョン潜りの敢行は何がしかの術を習得しなければほぼ不可能とされている理由の一つが、このスライムの存在なのである。

 スライムの中には大量に群生するものや、ダンジョンの床から天井まですっぽりふさぐほど巨大な個体も存在するため、それらはまた特別な脅威となり得る。

 スライムの起源に関しては、暗闇の大戦とそれにつづく反乱の中で、アーマバの子らに反逆した神エンシが自らの手駒として生み出した兵の一つであるとも言われているが、本来エンシが創造しようとした魔物とは別のものであり単なる失敗作であるとの説もある。

 またエンシだけでなく、相対するアーマバの子らのうちのある者もこういった不定形の生物を創造したともされ、スライムの明確な起源ははっきりとはわからない。

 いずれにしろ暗闇の大戦においてこれらの奇妙な生物が果たした役割はあったとしても微々たるものであり、何者に顧みられることもなかったが、はるかな時を経た時代にダンジョン潜りを行う闘士たちにとっては決して侮ることのできない存在となったのである。

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金くれ