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「火のないところに煙は立たない」は、もう「使用期限」が切れているのではないだろうか。

 もしかしたら、これまでそういう経験がなかったのは、とても恵まれていたのかもしれないけれど、割と最近、自分にとっては、まったく身に覚えがない「悪い噂」を流された。

 その「悪い噂」が本当だったら、私自身が「人格的にかなり問題のある人物」ということになってしまう。

 だから、その出来事に対して、第三者による、取り調べのような場面で、否定をすることになったけれど、その時に、思ったよりも感情的になったのは、不意打ちだったし、不本意だったし、そういう「悪い噂」という、全くのウソを流す人への怒りもあったせいだと思う。

怒りの理由

 このドラマは、うちの中では評判がよく、妻にとっては、今期のナンバーワンかも、というような勢いがあるが、その第一回の中で、主人公のこんなセリフがあった。(記憶で書いているので、多少の間違いはあると思います。すみません)。

 笑うんですね。
 よく、ドラマの中で、無罪の人は、あなたが犯人ですね、と言われると怒って。本当は罪を犯している真犯人が、「やっただろ」と言われると、笑うけど、本当なんですね。

 ドラマの中での「メタ視点」といったものも含まれている場面でもあるのだけど、その言葉を聞いて、自分にとっては、全くの嘘である「悪い噂」を聞いた時に、冷静なつもりでも、やっぱり怒っていたのだと思った。

 そして、感情的になったことで、冷静に「悪い噂」を流した言葉の方が、もしかしたら、本当に感じられるのかのしれない。そう思いながらも、第三者から、嘘を本当の事のようにして、確かめられるように質問されると、どうしても怒りが出てきてしまう。

 どうしてなのか、と考えると、自分がやってもいないこと。そして、それは、自分にとっても許し難いこと。それを、自分が行ったかのように、嘘を固められていること。それが明らかになるたびに、抑えていた怒りが、出てきてしまった。

 それは、大げさに言えば、そのたびに、自分の存在を否定されているような気持ちになったから、かもしれない。

嘘と分かった後でも

 こういう時に怖いのは、全くの嘘であっても、それが極端なものであればあるほど、それが嘘と分かった後でも、微妙な人の疑念が、残りそうなところだ。

 確かに嘘かもしれないけれど、あの嘘まで行かなくても、似たことがあったのではないだろうか。何もなくて、そんな嘘を言われるわけはないのではないか。

 それは、嘘をつかれて貶められた側にとっては、とても許し難いことでもあるのだけど、無関係な人にとっては、そんなことを言った方が、世間を知っているような風情が漂うし、確かに本当のことが分かるのは難しいから、そう言いたくなる気持ちも分からなくはない。

 だけど、そういう言葉が伝わっていくことで、全くの嘘をつかれた側は、ずっと何かしら問題があるようになってしまうこともある。

 そうなったら、それは「2次被害」に近いのかもしれない。

フェイクニュース

 アメリカのトランプ前・大統領は、フェイクニュースという言葉を連発し、同時に、明らかにデマであると指摘されても、また、同じようにデマを繰り返したと言われている。すると、とにかく注目される現象だけは続いていた。

 その場合に、デマのどこが嘘なのかを、本当のことを調べて指摘する、というような手間はとてもかかるのは、改めて分かった。ウソをウソである、と証明するのは、本当に大変なのだと思う。そのうちに、トランプの影響なのか、ウソでも注目されればいい、といった流れに、世界中がなっているような気がする。

 こうなると、ウソでもデマでも「言ったもの勝ち」というようになってしまって、本当のことを地道に語る方が、愚かのように見えてきてしまうことまであり得る。

炎上

 全くのウソによって、自分が貶められることは、とても嫌な思いと焦りと怒りを伴うことは少し分かった。

 もし、身に覚えのない批判のために、それこそ「炎上」のような状態になったら、どれだけ深く傷つくのかは、おそらく想像できないほどだと改めて思った。

 そして、それが「冤罪」であると証明するのは、とても困難であるから、どれだけの手間ひまがかかるのか。どの程度の消耗が伴うのか。さらには、それが自分にとっては「無罪」であると証明したとしても、それが、本当の意味で、社会に理解されるのだろうか。

 最初に、そのフェイクニュースを信じた人は、それがデマであると証明されたとしても、そのことまで情報を追ってくれるだろうか。

 嘘で、おとしめられるのは、とても理不尽なことだと思う。

火のないところに煙は立たない

 現在、どこまでの世代の人が知っているか分からないとしても、「火のないところに煙は立たない」という「ことわざ」というか「言い伝え」は、かなり有名な言葉だった。

 全く根拠のない噂を立てられても、それが嘘だと証明されても、このことわざがあるかぎり、「炎上」が大きいほど、実は「火」があるのではないか、と思われる可能性が残る。

 だから、ことわざによくあるように、逆の意味の言葉も存在するようだ。

根がなくとも花は咲く
 根拠なく好き勝手な噂が飛び交うことのたとえです。
根っこがないのに花が咲いてしまったという不可解な状況から転じて、根拠や原因がないのに噂が飛び交っている様子をあらわします。
「噂が立つからには根拠があるはずだ!」という意味の「火のない所に煙は立たぬ」とは真逆の意味です。

 この言葉を、私は恥ずかしながら知らなかったけれど、確かに、「火のないところに煙は立たない」とセットで使われる言葉であるはずなのに、こちらの言葉があまり使われていない。

 まるで、「人に迷惑をかけない」だけが頻繁に強調される一方で、「困ったときはお互い様」が忘れられたようになっている状況と、似ているように思える。

積極的な否定

 もっと、積極的に、「火のないところに煙は立たない」という「ことわざ」に対して疑問を投げかける言葉もあった。

「火のない所に煙は立たない」なんて言いますが、金魚鉢が凸レンズとなって太陽光線集めて火事になった〜なんて事例もある。つまり「火のない所にも煙は立つ」。つまり、煙を立たせるのは歪んだ視線だという事ですわ。偏見はなくしたいものですね。
午後3:59 · 2018年7月12日   (諏訪部順一 Twitterより)
 諏訪部さんは、例として金魚鉢による『収れん火災』を挙げて、「火のないところにも煙は立つ」といい切りました。
 光の集中する場所に可燃物があると、火災になってしまう『収れん火災』。この例の場合、原因は太陽光を集める金魚鉢です。
 つまりウワサを立てられた本人が悪いのではなく、歪んだ視線で見ている人に原因がある…諏訪部さんはそんなことを伝えたかったのでしょう。

「火」とは何か

 とても個人的なことだったのだけど、全く根拠のないウソをたてられて、貶められることはある。その場合に「火のないところに煙は立たない」などと言われたら、それは、さらに傷付けられることにつながるはずだった。その言葉に根拠はなくても、ことわざは、数多く言われ続けることで、ある程度以上の説得力がついてしまう。

 この場合の「火」は事実とは全く関係がない。
 うそをつく人の「悪意」さえあれば、それが「火」になる。

 これだけ個人が発信できる時代になれば、まったく事実に基づかないことであっても、とても大きな煙になることはあり得る。もっと昔であれば、少しは事実が入っていないと、大きく「燃え上がらなかったこと」が、今は、参加人数が多くなれば、それだけで「炎上」する。

 その場合の多くは、「嫉妬」だったり「悪意」だけで、「事実」は全くなくても、大きく燃え広がるから、その結果だけ見ると、この元になったことに、全く「事実」がないとは考えにくい。

 だけど、今は、たった一人の「悪意」だけでも、大きな「火」になることはあるので、「火のないところに煙は立たない」ということわざの「使用期限」自体が、すでに過ぎてしまっているのだと思う。

 だから、「火のないところに煙は立たない」ということわざ自体が、すでに信憑性を失ったと考えた方が、時代に即しているし、フェイクニュースのように、誰かが、根拠のない「噂」によって傷付けられる可能性が、少しでも減るのではないだろうか。

ことわざを考えた人

 そう考えてくると、「火のないところに煙は立たない」ということわざ自体が、もともと、フェイクニュースを流す側が作ったのではないだろうか、という疑念すら湧いてくる。


 平安時代の貴族同士は、かなりとんでもない陰謀合戦をしていた、ということも、どこかで読んだ記憶がある。例えば、敵対する貴族に対して、「謀反を起こそうとしている」という根拠のない「噂」を流し、その調査のため、という名目で、その貴族の屋敷に乗り込む。

 その際、嘘を流す側が、用意していた「謀反を企てる証拠」を、その屋敷で見つかった、ということにしてしまえば、それで、その敵対する貴族は、政治的には終わるし、場合によっては命を取られることもあるかもしれない。


 そんな怖いことをする側の方が、「火のないところに煙は立たない」と言いそうな気もするのだけど、それは考え過ぎなのだろうか。





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