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「テレビについて」㊹NHK「あたらしいテレビ」で感じた希望。

 NHKでは、時々、そこでしか制作できないと思えるような番組を放送することがある。

 ただ、それは実際に見ないと、その重要性がわからない。

 2023年1月1日。元日に見た「あたらしいテレビ」は、本当に新しかった。

テレビ制作者たちの言葉

 この番組では「テレビ制作者」とされていたけれど、一般的にもディレクターと表現されるようになった3人と、放送作家一人と、芸人が話をするコーナーが個人的には最も興味深く見ることができた。

 企画書の弊害のようなもの。面白いから、という衝動的な動機で番組を作るのが難しくなった、という話をする竹村武司という放送作家。

 表現が難しいですが、という前置きで、人に吐き気を起こさせるような番組を作りたいと、冷静に語るテレビ東京の大森時生

 言語化できないことを映像にできたら、と言うフジテレビの原田和実

 これまでのような、テレビ的に成立しなくても、テレビを消す直前に見られるような番組にできたら、と語るテレビ朝日の小山テリハ。


 これまでのテレビ関係者といえば、その声が、写真で言えば「ビビット加工」しているような明るさを放っていて、どうしても私にとっては聞きにくくなってしまうことがほとんどだったのに、この番組での、テレビ局員の3人の声は、ひとまとまりに特徴を言えないくらいだけど、そうした、これまでの印象とは違っていた。

 冷静だったり、自信があったり、熱がこもっていたり、とそれぞれの性格のまま話しているように見えて、素直に伝わってくる響きで、さらには、その内容についても、これからに希望を感じられるような話だった。

 気がつかないうちに、テレビの制作者が変わり始めていて、それは、すべてではないのだろうけど、最近はポジティブな言葉として使いにくくなっていた「未来」が見えるようにも思えた。


 司会の佐久間宣行(テレビプロデューサー/ラジオパーソナリティ)は、もう少し年上のテレビ関係者との違いについて、この番組で話していたテレビ制作者たちは、テレビが明らかに下り坂、と言われ始めた頃に入社しているから根性が違うんだと思うと、指摘していた。
 
 それは、全体が衰退するほど突出した個人が出現しやすくなる、という法則を思い出させることだったけれど、なんだかうなずける話だった。

その制作者たちの番組

 3人のテレビ制作者の中で、その関わっていた番組をすでに見ていたのは、小山テリハ氏だった。

「あのちゃんねる」は、録画して見ていた。ただ、ゆるいだけではなく、ゲストを招いてのトークが予定調和でなく新鮮で、あのという人の能力をきちんと見せてくれる番組だった。

 だけど、そのうちに、申し訳ないのだけど、当初の集中力は薄れ、時々、見なくなった頃、最終回になった。

 さらに、「イワクラと吉住の番組」も、才能も独特の視点もあって、この2人だったら、すごく面白くなりそうだと思って、見始めて、番組内の音楽に「神聖かまってちゃん」を使っていたりもして、勝手に盛り上がっていたのだけど、そのうちに、なんとなく見なくなった。

 どうやら、もっと疲れている人が、寝る前に見るような狙いがあって、だから、録画して昼間に期待を高めて見るような番組ではないのだと、思う。ただ、自分の感覚が老いているような怖さもあった。 

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 フジテレビの原田和実氏の番組は、1月3日に放送されていた。

 最初のコーナーは、アンミカが、合成画像で5人になって「赤裸々ナイト」としてトークを繰り広げる、という企画だった。ゲストは「イケメン」の「役割」として山田裕貴が出てくる。司会は、ノンスタイル井上。
 何やっているのだろう、という番組。

 番組内の街のインタビュー映像にも、アンミカが続出し、その後に、山田裕貴が会いたい人として、さらにゲストが出てくるという設定で、視聴者は、アンミカだと思ったのに、假屋崎省吾が出てくる。

 そこで、感覚を磨くには?という真っ当な会話が行われ、山田裕貴は、1月に始まるドラマの宣伝をして、帰っていく。

 番組の後半は、広い場所で、「ポリス」と名付けられた追っ手から逃げ続ける、という「大逃亡」という企画。通常と少し違っているのは、そのロケ場所で、別の番組のロケも行われている、という設定。そして、もし、そういう企画があったら、起こりそうなハプニングが地味に展開されて、番組が終わった。


(他にも、様々な試み↓がされていたことを知り、もっと早く分かっていれば、とは思った)


島崎和歌子の悩みにカンパイ

 3人の中で、個人的には「吐き気をもよおしたりする番組」を目指しているというので、最も期待していた、テレビ東京の大森時生氏の関わった番組は、地上波しか見られないので、見逃したら、視聴できない。

 と思ったら、YouTubeにあった。

 吐き気はもよおさなかったけれど、わからないことが続く時間は長く感じ、そこで知っている有名な人が出てくると、ちょっと安心していた。ただ、どんな内容かは少し知っている上で、この映像を見ているけれど、もしも、オンエア時にリアルタイムで見ていたら、やっぱり不安になったかもしれない。

 オンエア版を視聴したあとに、修正版を見ていると、いつか、何か起こるのでは、と思いながらも、時間が過ぎていった。だから、オーソドックスなバラエティを、違う気持ちで見ることができた。ここまで大胆に変えるのはすごいと思ったし、大げさに言えば、ジョン・ケージの「4分33秒」と少し似ている感触まであった。

  やっぱり、少し希望を感じた。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




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