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ドローンで、「鳥の視点」を獲得できるのだろうか。

 月に一度か二度通りかかる川のそばに、立派なカメラを抱えた中年以上の男性が何人もいて、何を狙っているのかと思ったら、カワセミだった。

 それは川の光景の中では、とても鮮やかな色でキレイで、だけど、そのカワセミは、川の流れの中の岩の上に、ずっと止まっていた。もしかしたら、獲物を狙って川に飛び込む瞬間を撮影されようとしていることを知っているのかも、と思うくらい、長い時間、じっとしていた。

 カワセミは、何を見て、とまっていたのだろう。

しらさぎ

 同じ川には、白鷺がいた。
 白くて、比較的大きくて、目立つ。
 
 上空から飛んできて、翼を自然に使って、減速して、岩の上などにとまる。
 鳥は恐竜の子孫らしい、という話を聞いてから、その目つきを見ても、ますます理解ができないような気持ちになっているが、その白さとか、白鷺にとっては生きていく上での必然に過ぎないのだろうけど、すっとまっすぐ伸びた姿は、美しく見える。

 そして、サッと羽ばたいて、移動するを繰り返すのを見ていると、川に立っていても、今度は、どこに飛ぶのだろうと、勝手に予測して見てしまうが、その時の白鷺は、川の中を歩き出した。

 その川の、その場所は、思ったよりも浅くて、だから、あれだけ細い脚でも普通に歩けるのだろうけど、鳥が川の中を歩いているのを見ると、不思議な気持ちになった。

 ただ、その川のそばには、鳩が集まる場所があって、鳩が歩いているのは普通に見えるから、それは、偏った視点だと、自分で思った。

 白鷺は、何を見て、歩き出したのだろうか。

ドローン

 今だにテレビをよく見ているのだけど、ここ数年でよく見るようになったのが、ドローンによる映像だと思う。夜中の大がかりな作りでないドラマでも、急に視界が広がって、上空からの視点にシームレスになっていく。

 以前の上からの視点は、まず上空に行き、そこから撮っていたことが多いから、そういうだんだん遠ざかる地面のような視点はあまりなかったし、逆に上空からどんどん近づいてくる地面の光景も見た記憶があまりない。

 これは、言ってみれば、「鳥の視点」のような表現をされがちで、確かにそうかもしれない、と思える説得力はあるのだけど、こういう上と下をスムーズに行ったり来たりできるような視点に、日常的に接していると、人間の感覚が少し変わってくる可能性はないだろうか、と思う。

 昔の映像と、今のものを比べると、さまざまな違いはあるとしても、圧倒的に情報量が違うから、昔の感覚のまま、今に来たとしたら、あまりにも映像の切り替わりが早く、ついていけないと感じるので、そういう映像の変化は、人間の感覚そのものに影響を与えると考えられる。

ナスカの地上絵

 ナスカの地上絵は、上空から見ないと分からないものを、地面で線で描いているのは不思議。という言われ方をされている。

 だけど、それが、本当に謎と言えるのだろうか、と思っていた。

 とても個人的な話になる。 

 サッカーの試合の前に、土のグラウンドに石灰で線を引く。それは縦100メートルくらい、横は50メートルほどで、それを長いメジャーを使って真っ直ぐに引くことになるのだけど、私は、視力が2・0あったせいか、100メートル先の目標を見て、メジャーも使わず、こんな感じかと思って、一人で引いていくと、練習試合に使ってもおかしくないほどの線はひけた。センターサークルも、ほぼ大丈夫なレベルだったと思う。

 その石灰で線をひいている時のイメージは、どこか、上空からの視点を微妙に持っていた気がして、だから、ナスカの地上絵のことを聞いた時も、もっと鋭い感覚を持った人であれば、サッカーのピッチのように四角い形だけではなく、複雑な絵でも、大きくて300メートルと言われているから、可能ではないか、と思っていた。

 ナスカの地上絵は、いろいろなサイズがあるらしいが、大きさの違いは、スキルの差で、大きいものほど、感覚が高い人が制作した、ということではないか、と思い、だから、本当にそんなに謎なのだろうかとも感じていた。

 だから、これだけドローンによって「上空からの視点」に接する機会が増えれば、地上絵のようなものを描ける人が、思った以上に増えるような気がして、もしも、そうなれば、私が石灰で線をひきながら、個人的に感じていたことが、証明されるのではないか、と秘かに思ってもいる。

鳥の視点

 は、とても視力が良くて、何百メートル上空から小さな獲物が見える、といった話を聞いたことがあって、見えているものが違うのだろうな、とも思うけれど、もっと専門的な見方だと、元々見え方そのものが違うらしい。

 紫外線まで見えるとなると、人間では想像しにくい世界なのだから、ドローンの映像がいくら出回っても、「鳥の視点」にはなれないと思う。

 さらに、素人の思いつきに過ぎないのだけど、「鳥の視点」があるとすれば、その鳥の意志と共にあるはずだから(意志というよりは欲望みたいなものなのだろうか)、見えるものが均一ではないだろうし、見たいものだけが大きく見えるような感じはないだろうか。

 それに、サッカーの一流のミッドフィルダーが小さいカメラをつけ、プレーヤーの視点を再現するような映像を見たときには、ボールを視界に入れるのは当然としても、想像以上に、左右に、ずっと頭を振って見ていて、本当に周りをよく見ているんだ、ということが改めて分かるから、「鳥の視点」も、実際には、どう動いているのかは、実は、まだ十分には分かっていないのではないだろうか。

 例えば、カワセミや白鷺、カラスやスズメといった鳥によっても違うだろうし、同じ鳥の種類でも個体によって違いがありそうだし、だから、動きも含めた「鳥の視点」には、なかなか想像が届かないように思う。

 ただ、「鳥の視点」が研究などによって、より明確になり、その動きまで分かってくるとしたら、人間では想像もつきにくい動きをしているかもしれないから、それが明らかになり、その視点に日常的に接することが多くなると、また「人間の視点の感覚」も、少しずつ変化するかもしれない。

 ちょっと楽しみだけど、その変化には、すでに自分がついていけないような怖さまである。




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