読書感想 『HI,HOW ARE YOU?』 綾部祐二 「ポジティブの本物のすごさ」。
「ピース」の綾部として、知っていた。
ただ、それはごく普通のテレビ視聴者レベルで、どちらかと言えば、小説も書くということで、その相方の又吉の方に注目もしていたし、「火花」も読んだ。そして、気がついたら、綾部祐二は、ハリウッドスターを目指してアメリカに行っていて、あまり目にすることがなくなっていた。だから、勝手なものだけど、意識すること自体がほぼなかった。
それが、あるとき、オードーリーの若林が、綾部の著作に触れて、確か、できたら大勢の人に読んでほしい、といったことを、少しシリアスなトーンで話していたのを、どこかで聞いた。
そのことがなければ、『HI,HOW ARE YOU?』と大きく書かれ、バイクにまたがる綾部祐二が表紙に写っている書籍は読まなかったと思う。
『HI,HOW ARE YOU?』 綾部祐二
アメリカへ行った。ニューヨークに住んでいる。
そのことの描写が、想像以上に曇りなく伝わってくる。
例えば、フードバトルの番組の仕事について。
これは、その時の場面の一部なのだけど、自慢話のようなのに嫌味が少なく、アメリカのエンターテイメントのすごさが、でしょ?といった明るい声と共に聞こえてくるし、かなり透明な目を通して伝わってくる気がするので、素直に、こちらもすごいと思える。
冒頭から、不思議な感触がある文章だと思った。
ニューヨーク
まず住居の探し方が、さりげなく書いてあるのだけど、実はかなり特殊だった。
ここで、部屋に対して、自然に「この」という指示代名詞を使っている。
だから、当然、セントラルパークの話も自然につながるように出てくる。
5年経って、この感覚を保ち続けていることに、通常だったら、それは嘘ではないか、とも思えるのだけど、読んでいると、どうしてだか素直に読める。
他にも、ニューヨークに住んでいて、ボランティアでのことや、医療事情について、さらにはコロナ禍での様子などが、まるで隣町の出来事のように、とても近くに感じる。
印象派のモネの絵は、とても明るく見える。近くで注意してみても、技巧的な部分というよりも、ナチュラルに光を感じる。大げさかもしれないが、この綾部祐二の言葉も、そんなふうに自然に明るく感じた。
それは実は、珍しいことだと思う。
ナルシスト
日本での学生時代から、芸人になって、アメリカに行くまでのことも書かれていて、その明るい印象は変わらないが、嫌味があったり、意外にも、軽薄すぎるような感覚も少ない。
同時に、本当にイメージ通りの部分もある。
そして、ナルシスト、という言葉も自然に出てくる。正確にいえば、ナルシシストなのだけど、ここで、そうした表現だったら、おそらくは、逆にそれがウソくさく思えてしまうような文章だと思う。
もしかしたら、特定の場所では常識なのかもしれないけれど、ナルシストにも陽性と陰性があるのを初めて知った。そうした人だからこそ、「自分が嫌い」という悩みへの答えもできるのだろう、と思わせる。
ナルシストも、ポジティブな本物は、まっすぐな視線を持っているので、さまざまなものがクリアに見えているし、清々しく感じられることを初めて教えられた、と思った。
おすすめしたい人
大きな不満はないけれど、なんとなく気持ちが少し沈みがちな人。
自分が何を望んでいたか、分からなくなってきたように感じている人。
すごく楽しいことは、もうないかもしれない、といった薄い不安を感じている人。
大きく落ち込んでいる場合には、もしかしたら読むのは、難しいかもしれませんが、なんとなく気分が乗らない時には、視界が少しクリアになるかもしれません。
そして、私のようにイメージだけで、読むのを避けていた人に、いちばん、おすすめできるように思いました。
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(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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