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「訪問窃盗」だったかも、という怖さ。

 夜の7時ごろ、ちょうど夕食を食べ始めようとしている時に、チャイムが鳴った。

 あわてて、玄関を開けると、わりとそばに、若い男性が作業着を着て、立っていた。

 こんばんは。

 蛙亭・中野に顔が少し似ていて、声の感じも、近かった。

 マスクはしていなかった。

停電

 似ていることで、油断したわけでもないのだけど、何しろ、相手は話を始めた。

「今日、この辺りのお宅を回ったんですけど、お留守のようだったので、夜分に、来ました」。

 確か、一日、家にいたはずだけど、と思いながらも、時々、チャイムを聞き落とすこともあるから、などと思っているうちに話が進んだ。

 なんでしょうか?

「このあたりの電気工事をしていて、国の方なんですが、来週の月曜日に工事をさせてもらうんです。それで、午前10時から11時の間の10分くらい停電する予定です」。

 少しでも停電すると、家のテレビ録画の記録が全部飛んで、もう一回設定し直さないといけなくなるかも、というような考えが頭に浮かび、面倒くさくて嫌だな、などと思っているうちに、さらに話を重ねてきた。

電話番号

「それで、停電をする前に、一度、連絡をしようと思います。
 固定電話の番号を教えてもらえますか」。

 基本的に失礼でないように話をしているのは伝わってきて、それで、停電が嫌だという気持ちもあって、番号は教えようとした。

 そうしたら、さらに、言葉を重ねる。

「あ、何かいらない紙ありませんか」。

 その言葉は少し無視して、そこは庭だったので、また玄関の中に戻り、靴箱の上にあるメモに電話番号を書いていたら、すぐそばにその若い男性が来ていた。

 こんなに、断りもなく、そばにくるのは珍しいので、ちょっと違和感があった。

 それでも、再び、外へ出て、メモを渡す。

 ここに電話をください。と伝える。

「わかりました。ところで、月曜日の10時から11時までは、家にいらっしゃいますか?」

 そんなことを聞かれるのも変だったのだけど、答えた。

 ええ、いますよ。

いるんですか?」みたいなことを、再び聞かれたと思う。

名刺

 そういえば、会社の名前とか、まだ聞いてなかったので、名刺をくださいといったら、一枚渡してくれた。

  それを、玄関に入って、名刺を入れる小さい箱に入れようとしていたら、またそばに来ていて「その名刺を返してもらえませんか」と続けた。

 なんだか変だったのけど、その男性は、さらに笑顔で、「それ僕の名刺じゃないんです、すみません。来週の月曜日に、ピンポンと押してから、名刺を渡しますから」と続けるので、そういうものか、と思って、返してしまった。

 そのあたりで、話が長くなったことに、心配になったと思われる妻が、1階まで降りてきていて、そのやりとりを聞いていたようだ。

 そして、そのあとに、その男性は去っていった。

不安

 それから、部屋に戻って、夕食を食べ始めて、その前にカレンダーの月曜日のところに、「10〜11」とメモってから、不安がふくらんできた。

 おかしなところが多かったからだ。

 そういえば、具体的な会社名を名乗ることはなかった。名刺は、老眼で細かいところまで見えなかったけれど、すぐに取り返そうとするのも怪しい。

 やたらと、家の中を見ようとするように、玄関のそばまで来ていた。このところは、宅配便の人なども、門の中に入ってこようとしないのに、考えたら、最初から門を開けて、入ってきていた。電話番号を、固定電話、という言い方もなんだか変だった。

 そんな人間に電話番号を教えてしまった。うかつだった。

 訪問詐欺。工事。そういった言葉を検索したら、代金を請求された、というような例が出ていて、まだお金を渡しても、要求もされていなかったと思い、ただ、他に、こんなページも見つけた。

最近、首都圏では昼間帯にガス、電気、消防の点検などを装い、家に入って現金などを奪う事案が発生しています。

 ちょっと怖くなった。

 そんな話を妻に少ししてしまったためか、夜まで妻の方が不安を引きずってしまったようで、申し訳なかった。

 何しろ、明日、確認するから、と言って、少しでも安心してもらおうとした。

確認

 わりと最近、近所で電気工事をしていた関電工という会社のチラシを、妻が保管しておいてくれた。

 翌日、それを見て、そこに電話をかけ、昨日の夜に、怪しい人物が電気工事のことを伝えてきたことと、次の月曜日に、このあたりで工事がある予定があるかどうかを聞いたら、そのチラシの左上にある「管理番号」というのを問われ、それを伝えたら、担当が調べて、かけ直します、と言われる。

 そろそろ、忘れる頃に、電話が鳴った。

「そうした工事の予定はない」と言われ、かなり怪しさが増した。


 次は、東京電力に電話をする。

 やはり、同じような手順で、担当からかけ直します。と言われる。

 電話がかかってきて、また、その工事の予定はないと言われる。じゃあ、詐欺のようなものでしょうか?と聞くと、電話の向こうで、微妙にためらって、「その工事の予定はありません」といった言葉を繰り返された。

 おそらくは、詐欺か何かで、確定したと思った。

警察

 念のために、警察にも、そうした相談窓口があるらしいので、初めて電話をした。

 今回の概要を伝えると、最初に電話に出た女性は「ご心配ですよね。生活安全課におつなぎします」といったことを言われ、少し待ったら、今度は、若い男性の声にかわった。

 こちらの名前や住所や仕事なども聞かれたので、少しためらう気持ちになったが、それでも、犯罪に関わってくると怖いので、今回のことを話をしたら「それは、かなり怪しいですね。どんな人でしたか?」とも聞かれる。

 その時に、若い男性でした。あと、蛙亭って知ってますか?「ええ、なんとなく」と答えてくれたので、その男性の方に似ています、とも伝えたのだけど、反応が悪いのは分かった。

 さらに、そのあとに、こうした情報も教えてくれた。

 ……最近の、そうした犯罪は、とても幅広くなっているので、正直、今回のことで、何をするつもりなのかは、わかりません。ただ、とにかく情報を集めているのだとは思います。

 今度の月曜日に来ることはないと思いますが、とにかく、戸締りに気をつけてください。それから、門があるのでしたら、そこからは中に入れないように、してください。場合によっては、宅配便を装うこともあるので、できたら、会社や名前を聞いたりした方がいいと思います。

 そして、何かあったら、とにかく110番をしてください……。


 そんな話を聞いたら、あの若い男性は、何をしようとしていのか。なんだか、家の中の様子を見たかったのか。それとも、電話番号を聞いて、何をしたいのか。それも、よくわからないから、怖さもあるけれど、これからは、より気をつけるしかない。

 私が家にいる時はいいのだけど、妻だけが家にいる時は、すぐに玄関のドアを開けないで、できたら、窓から様子を見て、怪しかったら、開けないようにする。

 そんなことを確認した。

月曜日

 そして、月曜日になった。

 気がついたら、午前11時になっていて、一応、外へ出たら、当たり前だけど、誰もいなかった。

 もしかしたら、うそでも名刺が入っているのかもしれない、などと思って、ポストをのぞいたら、区からのハザードマップが入っていた。

 そのまま、夜になった。

 彼は、ウソをついた。いろいろとあって、仕方がないのだと思うけれど、どうしてウソをつくのだろう。そんな生活は、きついだろうに、などと思った。




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