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「コロナ禍」での「支援グッズ」を購入してみて、思ったこと。

 今年(2020年)になり、コロナ禍という言葉が一般的になってからは、すっかり世界は変わってしまいました。それについては、何度考えても、まだちょっと信じられないくらいの変わり方ですが、そんなことを言っていられるのは、おそらくは自分は恵まれていて、どこか余裕があるからで、緊急事態宣言のあとは、特に飲食店や施設の、閉店や閉鎖のニュースを聞くことが多くなったと思います。

 この「コロナ禍」という、戦後初(もうこの言い方の有効性もかなり減っている気もしますが)の出来事なのは間違いありません。今生きている人たちにとっては、スペイン風邪の流行は100年前のことなので、誰もが初めての経験になるのかもしれませんので、本当に異例のことばかりだとも思います。

 これまでは、「支援」に関しては、災害時の募金などの経験はありますが、「支援グッズ」を購入する、という初めてのことをしてみました。それで、やっぱりいろいろなことを思ったので、書いておきたいと考えました。(今回、3カ所の支援グッズを購入しました)。

「ゲンロンカフェ」

 最初は、「ゲンロン 」という会社の「支援グッズ」です。

 ここは、東浩紀という批評家・哲学者が創業した企業で、これだけ書くと知らない方には、とても怪しげですが、私にとっては、特に「ゲンロン」の運営する「ゲンロンカフェ 」というスペースはなくなってほしくない場所です。

 東京・五反田のビルの中にあるのですが、そこで行われるトークショーは、これまでありそうでなかったシステムでした。

「ゲンロンカフェ 」は、本来は「カフェ」の場所に観客の人数によって、イスの並べ方が変わってくるのですが、最も多くて100人の時は、びっしりと人で埋まっています。

 トークショーは、午後7時開始、というスケジュールが多いのですが、最初に場内に登壇者の紹介の音声が流れ、そのあとに、登壇者が入場してきて、話を始めます。こういうシンプルな構成は、話す時間を少しでも長くするという意味でも理にかなっていますが、意外と他で見たことがありません。

 そして、画期的だったのは、基本的に時間制限がないことです。
 トーク時間が4時間くらいになることも、それほど珍しくなく、でも、その時間は、登壇者が話したくて話をしているので、波はあっても、濃度の高い時間が続きます。

 その時間の中で、刺激を受けたり、気持ちが動いたりする瞬間は数限りなくあることも多く、ここで、東浩紀の頭の良さや、小林よしのりのタフさや、五木寛之のすごさを、初めて実感として分かった場所でもあったのですが、今年(2020年)の、弓指寛治というアーティストと東浩紀の対談は、本当に充実していました。

 「ゲンロンカフェ 」は、2013年から始まっているのですが、個人的には、中年を過ぎて、2度目の就職活動が苦戦をしていて、今から振り返ると、思った以上に気持ちがやられていたとわかる時期でした。その頃に出来た「ゲンロンカフェ 」に行き、もともと人が話すのを聞いているのが好きだった自分を思い出せるような場所で、その年に、何度か行って、実はかなり気持ちを支えられていたと思っています。

 コロナ禍により、トークショーに観客を集めることもできず、苦境にあることを知り、さらに支援グッズがあるので、自分にとっては、なくなってしまったら困る場所なので、微力ですが、購入しました。

 本当でしたら、募金だけするのが支援の本筋とは思いながらも、恥ずかしながら、貧乏なため、最初は、この支援の1000円コースを選びました。ステッカーと礼状が送られてきました。少額なのに、わざわざ礼状まであったので、なんだか申し訳なかったので、次は1万円の支援グッズを購入しました。それは、外出自粛の期間で、図書館まで閉まってしまったので本も読みたい気持ちもあり、サイン本2冊であり、あとはトークショーの入場券が2枚と、ステッカーが10枚ということでした。

 本は2冊で、元の価格はセットでも4200円。トークショーは1回あたり2600円だったはずなので、これだけで、9400円になり、ステッカーもついたら、ほぼ1万円に近づいてしまうので、支援になるのだろうか、という後ろめたい思いもしますが、それでも購入した満足感はありました。ただ、支援をした、と大声で言えない感じはあるものの、それでも、ほんの少しでも支援した、という気持ちになれますし、単純に商品を購入したのと価格的には変わらないので、買い物としてのお得感は強いと思います。


「J-WAVE   #音楽を止めるな  プロジェクト」

 コロナ禍が始まり、クラスターという言葉を、感染症の拡大や予防という観点の中で聞いたのは初めてでしたが、ほどなく、その使い方にも慣れていきました。

 その中で、事実として感染者が出てしまったので、仕方がないと思いましたが、当初「ライブハウス」が、あまりにも「悪者」扱いをされていて、それは、不当な感じまでしました。


 ささやかな体験ですが、個人的には、ライブハウスは大事な場所になっていたので、よけいにそう思ってしまったのかもしれません。

 中年になってから、初めてライブハウスへ行き、そこで「神聖かまってちゃん」のライブを見ました。それは、本当にかけがえない経験になり、体力的には厳しかったり、体を動かす恥ずかしさもあったものの、その後、ライブハウスに行けるようになりました。自分にとっては、あまりにも縁がなく、敷居が高かったのですが、一度行き始めると、抵抗感は減りました。

 そこでしか見られない音楽があるのではないか、などと数回しか行っていない人間が言えるわけもないのですが、貴重な空間であるのも少しは分かりました。1990年代には行けなかった小沢健二のライブにも誘われて行く機会ができ、そこで20年くらいの時間の流れを、いい意味で確認ができたりもしました。

 2020年になって、神聖かまってちゃんのメンバーが一人抜ける、ということで久々にライブに行き、終了後に、近くを歩く若い男性が、マジ、きて良かった、みたいなことを言っていて、本当に同意する気持ちになれたのも、ライブハウスでした。それから、ほどなくしてコロナ禍になってしまいました。

 外出自粛を意識して、家にいた時に、J-waveのラジオを聴いていて、「音楽を止めるな」というプロジェクトのことを聞き、それがライブハウスの支援ということを知り、珍しくサイトを確認し、そこでTシャツも販売しているのを知りました。

 ファッションそのものには基本的には縁がないのですが、いつの頃からか、Tシャツだけは、いいな、と思うと、つい買ってしまうようになっていました。

 それも、とてもミーハーな話なのですが、ビームスとのコラボと知り、普段はあまり買えないブランドでもあるので、そこで得したような気持ちになり、「ライブハウスの支援」のため、ということを自分で言い聞かせるようにして、購入しました。Tシャツそのものは、約4000円なのですが、手数料や送料を含めると5000円くらいになり、だけど、普段、Tシャツには、そのくらいの値段でも気に入れば買ってしまうので、『チョークボーイ from WHW!(チョークグラフィックアーティスト)』を購入しました。

 完全注文制なので、それから時間がかかり、少し忘れた頃に届きました。

 ビームスのTシャツは初めて買ったと思います。デザインも気に入って、着心地もよく、サイズ感もぴったりでした。「音楽を止めるな」という文字も入っているのは、支援グッズのはずなので当然のことです。

 ただ、自分としては、これからも出かける時にも着ていけるTシャツが増えるから買ってよかった、みたいな気持ちに過ぎなくて、だから、そんなに大きい声で「支援しました」といえるほどではないので、この「音楽を止めるな」といった言葉は、後ろめたいとか、荷が重いとか、という気持ちもあります。

 だけど、最近、外出自体が減っていたので、まずは自宅で着てみました。妻にも好評でした。新しいTシャツは気持ちもよく、それまで知らなかったアーティストも知って、お得な気持ちにはなれました。

 さらには、このTシャツは、約3000枚の売り上げがあったことも知りました。第一弾で、10人の人がデザインに協力していたので、とても単純に計算すれば、1種類あたり、300枚程度、ということになります。支援ということからは、邪道な考えだとも思うのですが、それだけの枚数しか世の中にないかと思うと、よりお得感が高まるかと思います。

 今回、Tシャツのことを紹介しておいて、申し訳ないのですが、現在、「#音楽をとめるな」は、申し訳ないのですが、すでにTシャツ販売は終了してしまっています。今は、有料オンラインライブが行われていて、それが支援にもつながる、というシステムが始まっているようです。


「scool」

 三鷹の駅を降りて、まっすぐ歩き、本当にあるのだろうか、と思うくらいの距離になり、目標の「おもちゃ屋」を見つけ、それでも、ここにイベントスペースがあるのか、という疑いが消えないような小さいエレベーターに乗り、目的の階で扉が開くと、いきなり違う世界に来た感じがします。

 そんなに広くはないと思います。そこに数十人も入ればいっぱいのはずで、だけど、まだ2回しか行っていないので、語る資格はないとしても、なぜか、やけに広く感じ、登壇者は床に机とイスがセットされ、話しているだけなのに、遠くで話しているような感覚になります。

 2020年の年明けに行った、この音楽の企画↑が、とても印象に残っています。
 音楽のことに関しては、全く詳しくなく、登壇者の方は、失礼ながら知らない方ばかりでしたが、一度足を運んだ時の不思議な別世界感が他にはないところだったのと、主宰の佐々木敦の著書を読むようになり、時々、難解だと思いながらも、独特の視点を提示してくれるので、イベントも面白いのではないか、という気持ちがありました。

 何より、音楽のことで、トークを中心にして、この「(J)POP2020 」という7時間のイベントを行うということに、興味が持てて、そうなると2500円は、とても安いと思ってしまっていましたし、出入り自由という言葉も安心感がありました。

 2020年の年明けの、その7時間はとても充実していました。
 その後、CDを買ったり、本を読んだりするくらい、興味が持てました。

 イベントの最中、これだけ長いと寝ている人も多いのですが、熱心にメモをとっている人が多く、休憩中に名刺交換をしている人も目立ち、あとになって、音楽関係者がかなり多かったことを知り、私のように無関係者は少なかったようでした。
 次は「ジャズ」でやりたいです、と主宰の佐々木氏が話していて、できたら来たいと、すでに思っていましたが、それは、コロナ禍で延期になったままのようです。

 こうした人を集める場所はどこも大変そうで、それは、そういう仕事をしていない人間には想像もできないような苦境だと思うのですが、この「SCOOL」でも、支援グッズ↑があることを知りました。

   私には、 音楽的な教養もないので、全く知らない人たちばかりの「コンピレーション・アルバム」でした。
 ただ、このスペースの存続は、そんなに行っていない場所とはいえ、やっぱりこれからも、ずっとあってほしい、と願うような貴重さを感じているので、少しは協力できれば、と思い、購入しました。ただ、約2000円なので、支援としては、とても微力ですが、でも、逆にいえば、このCDRがそれほど興味が持てない場合でも、あきらめられるという金額でもあると思いました。(データでも購入可能のようです)。

 CDRが届いて、家にいる時間が長く、作業をしながら聴いていて、それは確かに、自分では知らない音楽が流れてきて、そこには新しさもあるし、購入してよかったと思いました。こういう機会がなければ、買わなかったと思います。

 支援という言葉のおかげで、これまでに接する機会がない音楽を聴くことができたのは、ありがたく、ちょっとうれしいことでした。

支援グッズを購入して思ったこと

 今回は、3カ所だけですが、初めて支援も目的として購入をしてみました。

 緊急事態宣言以降、特に家にいることが多くなり、今まで(そんなに熱心でないにしても)出かけていた美術館やギャラリーや映画館やライブハウスなども行けなくなり、その上、図書館まで閉まってしまい、そういう場所が閉鎖されてしまうのは、思った以上にショックで、しかも息苦しい気持ちになりました。

 そういった不要不急かもしれませんが、人が生きていく上では必要な場所を運営されているような方々が、何よりも追い詰められているのでは、と思いました。その大変さを、想像するしかできず、いい歳をして、自分の微力も本当に恥ずかしいですが、これまでの恩返しみたいな気持ちもあって、だから、ささやかですが、普段は購入しないであろう支援グッズも買いました。

 ただ、そのことで、ずっと外出自粛を続けていた私にとっても、ただモノを買っただけですが、世の中とつながっているような感覚もありましたし、小さな力すぎる恥ずかしさと共に、やはり自分が応援したい誰かを応援するのは、微妙でもうれしい気持ちにもなれて、金額以上に得るものが大きいと思いました。

 これからも、コロナ禍は長く続くと思っています。
 何かを買う時に、支援につながるかどうか、という視点が、新たに加わって、おおげさに言えば、思考がほんの少し広がった気もするので、改めて「買ってよかった」と思います。とても個人的な小さい決意ですが、今後も、複数の選択肢があった場合は、支援につながるモノを購入したいと考えています。



(他にもいろいろと書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしく思います)。

ラジオの記憶②「あるミュージシャンの言葉」

読書感想 『ゆるく考える』 東浩紀 「知性の力の、重要性」

コロナ禍で、モノを買うということ



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