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小説

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#創作童話

【短編小説】スティール。

【短編小説】スティール。

生まれた瞬間から名前が自動的に決まり、意味を表す世界。

スティールちゃんは、「ス」が頭、「テ」が上胴体、「ィ」が下胴体、「ー」が両腕、ル」が両足の女の子で、祖母の遺伝から、頬に「 ゛」が付いているのが特徴でした。

スティールとしてただ生まれたその子の意味は「盗む」です。
そのため、周囲からは忌み嫌われた女の子でした。

確かに、その文字の意味合いを強く能力として持ち、彼女はモノや人を盗むのが得

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【短編小説】寂しいブロッコリー。

【短編小説】寂しいブロッコリー。

私はブロッコリーとして生まれ、育てられました。

ですが、今日ほどその人生を後悔したことはありません。

私はてっきり、サラダとか洋風の料理として調理されると思っていたのですが、なんとカレーに入れられることになったからです。

カレーには、玉ねぎ・人参・じゃがいもが当たり前だと思われており、実際カレー煮込みの中には、仲良く3人組で並ぶ玉ねぎさんたちがいます。

適度な大きさに切られた私は、まな板の

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【短編小説】6と9の苦悩。

【短編小説】6と9の苦悩。

この世の見た目は、数字で構成されています。
ある人は2という形で。ある人は、7という形で。

その中でも、ある6は、勉強、運動、人付き合い全般が苦手で、いつも劣等感を抱いている少年でした。どんなに練習しても、努力しても、みんなに追いつけないので、いつもいつも、自分を責めては他人を羨んでいました。

一方で、その幼馴染の9は勉強も運動もでき、周囲からも好かれ、いつも生き生きとしている、世にいう優等生

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【短編小説】愛のクスリ。

【短編小説】愛のクスリ。

とある山奥に、ある少年がいました。

その少年には他に、3人の家族がいました。

しかしながら、青年が物心つく前に両親は病死し、物心ついた頃には、兄は病に伏せ、布団の上で残りの寿命を全うするしかない状態でした。 

更に兄は心も病に蝕まれ、誰かが少しでも兄に近づこうとすると、狂気めいたことを大声で口にし、門前払いする者と化しており、少年は、兄を見守ることしかできませんでした。 

その時の少年の心

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【短編小説】ロボット。

【短編小説】ロボット。

ロボットの僕は、燃料が切れると動けなくなる。 

他のロボットたちもそうだ。

働きすぎると、機器が熱を帯びて、パンクする。

状況によっては働きながら充電することだってあるけど、そうすると、そのロボットの寿命は短くなる。

部品を直しても、充電しても、動けなくなる。

ふふっ、まるで人間のようだろう?

眠眠打破を飲みながら、24時間365日働き続けることには限界がある。

つまり、何事にも、誰

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【短編小説】幸せのお店。

【短編小説】幸せのお店。

ここには、沢山の人が並ぶお店が数多くあります。

その中でも私は、幸せのお店で順番を待つことにしました。

こんな簡単に幸せになれるなんて、そんな奇跡あるのだろうか…。

そわそわそわそわ…。
きっと、世間の言い方としてはそう表現するのでしょう。

次は私の番かな、それとも、次の次かな。

暫く待ったけど一向に呼ばれる気配はありません。 

受付の番号の順番を見に行きましたが、私の番はまだです。

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【短編小説】桜物語。

【短編小説】桜物語。

4月も中旬にさしかかるある日、公園で遊んでいたら、桜に声を掛けられた。

「もうそろそろ春が終わってしまうから、今年の僕が死ぬ前に、願いを叶えてくれないか?」

どうやら、桜は毎年、別人に生まれ変わるらしい。

来年生きられないならしょうがない、そう思って、協力することにした。

1つ目の願いは、「お店の中に入ってみたい」だった。

木である桜が、どうやったら動けるのか聞くと、花びらを1枚持ってい

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