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10年前のあの日-東日本大震災の記憶-

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#地震

10年前のあの日の記憶9

10年前のあの日の記憶9

太陽は真上に登り、春を感じさせるあたたかな日差しが差し込む。

掃除や家具の移動などの力仕事をしていると汗ばむほどのあたたかさだった。

午後は『非常用の水源』と指定されていた近所の公園へ行き、水を汲んだ。

自宅に水汲み用のポリタンクなどは無く、家にあったペットボトルをかき集めてリュックに背負う。

お風呂に残り湯があった為、トイレを流すことは出来たが、料理に使う水は非常用のものがほんの少しあっ

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10年前のあの日の記憶8

地震発生当日から一夜明けて、父は職場へ向かい、私は母と姉と共に自宅へ向かう。

玄関には傘と靴が散乱し、普段使わないからと上の棚に片付けていたものもドカドカと落ちてきていた。

昨日中へ入った母から破片が多いと聞き、靴は履いたままで家の中へ入る。

母は綺麗好きで毎日掃除をしてくれていた。

そんな家の中が廃墟のごとく荒れていて、ぬかるんだ泥で汚れたブーツで入ることへ、複雑な気持ちを抱いた。

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10年前のあの日の記憶3

10年前のあの日の記憶3

ビルから避難し、寒空の下10分程指示を待ち、ようやく近くの学校へ移動することが決まった。

徒歩5分の場所にある学校へ、ぞろぞろと歩いて向かう。

校舎や体育館は生徒や地域住民の避難所となるらしく、グラウンドに誘導された。

点呼を取り、またしばらくガヤガヤと指示を待つ。

気がつくと、雪がちらちらと降り始めた。

みるみるグラウンドは湿っていき、空気もぐっと冷え込んだように感じた。

各部署の代

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10年前のあの日の記憶2

10年前のあの日の記憶2

少しずつ、少しずつ揺れが収まり、シーン…と静まり返った。

その段階で初めて机から出るために動き出した。

長い揺れで感覚が鈍っていたのか、身体をうまく動かせないほど恐怖を感じていたのか。

ふらふらと覚束ない足取りで、机の外に這い出ながらどうにか立ち上がる。

立ち上がった瞬間視界に入ってきたのは、数分前とは全く別の光景だった。

横に置いてあったキャビネットが倒れ、私の机に直撃していた。

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