10年前のあの日の記憶8

地震発生当日から一夜明けて、父は職場へ向かい、私は母と姉と共に自宅へ向かう。

玄関には傘と靴が散乱し、普段使わないからと上の棚に片付けていたものもドカドカと落ちてきていた。

昨日中へ入った母から破片が多いと聞き、靴は履いたままで家の中へ入る。

母は綺麗好きで毎日掃除をしてくれていた。

そんな家の中が廃墟のごとく荒れていて、ぬかるんだ泥で汚れたブーツで入ることへ、複雑な気持ちを抱いた。

この日はとても良い天気で、陽の光が家の中に差し込み、前日は暗くてよく見えなかった部分が目に入る。

姉の部屋では、学習机の上の部分が崩れてドアの前に落ち、ドアが半分しか開かなかった。

母の嫁入り道具だった2段重ねの重たい箪笥が崩れ落ち、室内干し用の物干しスタンドに直撃し金属製のパイプが折れている。

食器棚の中身は半分以上が床の上で粉々になり、台所は床が見えないほど様々なものが落ちては割れ、積み重なっていた。

家中の家具がずりずりと動いていて、一つも元の位置に無い。

なにより、自宅がなんとなく傾いているように感じた。

余震がくると、重要な梁や柱、あるいは土台がずれているのか?と思うほど今までよりも気持ちの悪いゆったりとした揺れが続くようになった。

電気は相変わらず止まったままで、水を汲み上げることも出来なかった。

冷蔵庫の中はまだひんやりとしていた。

真夏じゃなくてよかったな、とぼんやり思った。

一番落ち着けるはずの自宅が、全く違う場所に感じ、現実感が無かった。

それでも、陽があるうちに片付けを終え無ければと3人で協力して動く。

軍手をはめた手で片付け、箒ではく。

家具は元の位置に戻した。

床を全て雑巾で拭き、やっと安心して土足を止めることができた。

半日かけて台所、リビング、ダイニングはなんとかゆっくりと過ごせる空間へと戻った。











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