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アートの周辺

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美術雑誌の編集のかたわらで気づいたことを書き留めていきます。
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クラウドファンディングと詐欺

クラウドファンディングと詐欺

「パリ・ルーブル美術館で開催されるアートフェアに出展したい」「ロンドンのジャパンエキスポの出展費用として」などの謳い文句で、資金を募る人をクラウドファンディングのサイトでたびたび見かけます。
その多くは、駆け出しの画家やハンドメイド系の作り手のようです。作品を見たという業者から出展の誘いのメールが届き、アーティストとしての夢を実現するためにその資金をクラウドファンディングで募るというパターンです。

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銀座の画廊地図

銀座の画廊地図

いまどきの人たちはどこかに行こうとするとスマホでGoogle Mapなどを見ていきます。目的地が一箇所ならそれでいいでのですが、複数あったり、近隣の画廊を数軒回りたいときには紙の地図のほうが効率的です。

銀座の画廊を記した紙の地図というと多くの人が某画廊情報誌の巻末の地図を参照しがちですが、あの地図はおよそ10年くらい更新されていないため、使い物になりません。

もっとも使えるのは、銀座ギャラリ

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新しいアートサービス

新しいアートサービス

備忘録として、新しいアート系販売サービスを列挙しておきます。

NOMAL ART COMPANY
https://nomalartcompany.jp

Bulldozer

アート思考(アートシンキング)専門のコンサルタント。

アートアンドロジック

アート思考を身につける集中講座を提供する。

sonae 備絵

絵画のフレームに「災害時トイレキット」30 回分を収納した、アートとして楽し

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【アートの周辺】台北の4つのアートフェア

台北の4つのアートフェアはそれぞれターゲットというか、目的が違います。投資としての美術品販売、身近なアートの提供、若手作家の支援など、様々です。

一方で、共通するのは、美術品を集めて展示し、広く見にきてもらいたいという1人の人の情熱で始まっていることです。

ディレクターと呼ばれる人物が、ほぼ自分の個人的な人脈を駆使して参加画廊と来場者を集めで開催しています。したがって、ディレクターの個性が会場

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ケインズの巻 前半

 美術品も商品ですから、消費されると同時に投資の対象ともなり、さらに投機の材ともなります。どうやら現在は、この投資と投機に魅力を感じてアートに近づく人たちが多くなっているようです。先月の「週刊東洋経済」の論調、アートフェア東京に現れた前澤チルドレンのような人々、アートオークションに参入してきたビジネスマンなどが具体例であり、その背景には数年前からブームとなっているビジネスマン向けアート本の存在がか

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ケインズの巻 後半

 ケインズの美術品コレクションですが、具体的にどんな作品を集めていたかというと、セザンヌ、ブラック、マティス、ルノアール、スーラといった巨匠やダンカン・グラント、ヴァネッサ・ベルといった仲間の作品です。
セザンヌを1点もっているだけでも相当の価格上昇が見込めるのですが、こうしたラインナップを見るとますますケインズのコレクションが巨匠クラスの高騰しそうな作品、つまり資産性を重視して集められたとみなさ

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損しないアートの買い方

人が美術品を購入する動機はさまざまあっていいとは思いますが、「その作品が好きである」という気持ちがないと結局「損」をすることになります。
業者は若手作家の作品などはまだ数万円と安くて買い得とか、投資になってあとから取り戻せるからとあえて高額作品の方が銘柄として期待がもてるとか、もし仮に値段が上がらなくても美術的な価値は変わらないから損はないとか、いろんな言い方で、美術品を売ろうとします。しかし高度

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美術品とは、周囲の反対を押し切って買うもの

最近、美術品の所有権の分散所有によって少額から投資できると謳うウェブサービスが増えてきました。これらは運営者が従来の美術の業者ではない、名称がカタカナである、運営者の顔がみえない、という特徴があります。

バブル時代にも、金融系の企業が同様のサービスを打ち出して資金を集め、アートの専門家と称する人物によって選定された作品を購入して運用する業者が現れました。しかしご存知のように最後にはバブル崩壊で価

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美術記事の3段階

雑誌ではインタビュー、対談、座談会などの形で発言内容を記事にすることがあります。そうした記事には大きく3つの段階があります。

第1段階は発言内容を忠実に文字にするものです。これはだれが記事をまとめても大差ありません。新人でもできるし、将来的にはAIでも可能でしょう。そして私が見るに多くの雑誌(ウェブメディアを含む)の記事は第1段階にとどまっています。

第2段階は発言者が言おうとして言葉にできな

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高解像度の画像を用意すると得をする

昨日、画廊で話したこと。
作品写真や画家の顔写真は、映りのいい写真をしかも高解像度で用意しておくと得をします。
作品写真が高解像度だと、例えば雑誌に載せる場合でも、単に作品紹介のページだけでなく、目次や扉ページといったデザイン上挿入される余剰ページに使用されるチャンスがあるからです。何十という掲載作品のなかからピックアップする際、絵柄はよくても解像度が大きくないと引き伸ばせません。
また顔写真はそ

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世界に通用する

世界に通用する

 日本の美術界で活躍したい人は日本のコンクールに出品すればいいです。しかし国際的に活躍したい人は当たり前ですが海外とのコネクションを作ることのできるコンクールに出品した方がいいと思います。主催者が海外に支店をもっているとか、アートフェアに出しているとか、審査員の中に海外の美術関係者がいるとかしないと海外進出は始まりません。

 最近、日本から世界に通用するアーティストを発掘すると謳うコンクールが増

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meceloが終了して分かったこと

 芸術家支援プラットフォーム「mecelo」が3年足らずで終了していることをさきほど知りました。残念。

 画家をクラウドファンディングのように手軽に資金応援するサービスでした。弊社でも「月刊美術プラス」という若手応援サイトを立ち上げたのと同じタイミングのスタートでした。記録では2018年10月18日、私は青山学院大学を挟んでちょうど反対側のオフィスで行われた記者発表に行って取材しています。スター

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衝撃を受けた美大の先生の話

 画家で大学でも教えている方が語ったことに衝撃を受けました。さまざまな大学で絵を教えたけど、アーティストとして才能がある学生が多かったのは東京大学。10年間で20人以上いた。一方、美大には今までのところ1人もいないとのこと。

 才能とはものの見方、洞察力、発想力である。デッサンなどは修練でどうにでもなり、それは才能ではないらしい。

 美大教育を考え直さないといけない、と聞いた誰もが思ったに違い

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編集部に届いた嬉しい手紙

 編集部に手紙が届きました。年に一度コンクールの説明会でお邪魔している美大の先生から。去年はコロナで行けなかったことを個人的に今でも残念に思っている大学です。

 手紙には、今年卒業する教え子の一人が私に卒業制作を見てほしいと願っている旨が書かれ、その学生からの手紙が同封されていました。2年前の春、私はコンクールの説明会で訪れ、自分の作品を言葉で伝える方法を「プレゼンの仕方」と「ステートメントの書

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