高野優
ルーヴ・ファタールあるいはルー・ファタール 最初の世界大戦の前、とある村で起こったこと。その手記を見つけた。
逆噴射小説大賞2019参加作品/私と彼の半径30キロ圏内のこもごもの話
オフラインで出している同人誌のサンプルです。 太平洋戦争前夜。根室孝蔵と志水桃はそれぞれの目的のために、満洲北部にあるホテルに赴く。だが、そこは未知の機構が蠢いて、暴力が蔓延している奇妙な場所だった。 はたして二人は無事に朝を迎えることが出来るのか。
オフラインで出している同人誌のサンプルです。/大正時代。当時非合法だった中絶手術を行う女性医師と、その患者の配偶者の闘争を描く『はるか昔からの花や木の根』壁に囲まれた屋敷に住む人々の復讐劇『我らの帝国へようこそ』の2編が収録
オフラインで出す同人誌のサンプルです。名刺代わりになるように基礎の短編と、応用の中編でまとめました。 【短編】死んだ妹に会うための旅路『妹たちの国』/電動クリーマーを買っただけなのに怨讐の彼方へ『幸福と涙のヴァレンタイン社製電動クリーマー』他短編3編 【書き下ろし】主人公の勤め先のホテルで集団昏倒事件が発生。事件の犯人が高校時代の先輩と知り、その動機を探っていく表題作『赤、紙を折る手』
高野優が今まで書いてきた作品を集めたポータルページ 長いやつたましい、あるいはひとつぶんのベッド 「君は前提的なものってあると思う?――吹き荒れる嵐のような祖父とその相続を巡り、惨禍を抜けたミチルと、祖父の定めた通りにミチルとの結婚を無垢に求めるノボル、そしてミチルとミチルをもとめるノボルを受け入れようとしたミチルの恋人であり夫であった恵一――の唐突な死。彷徨う祈りの果て、結ばれた指のはざまに宿るもの」 ※タイトル及びあらすじは哉村哉子(ドーナツ革命党)さんによるものです
マストドンを始めたよ。2222200055446で検索してね
どんなモノにも起源があります。物事の始まり、あれがなければ今がなかったというような。神社仏閣ならやや大仰な言葉を使って『縁起』とも呼ぶでしょう。この会社にもそういった契機が、いくつか存在します。今日は、そのうちの一つの話をさせてください。クリスマスですからね。 私が子どもだったころ。近所に、おばあさんが住んでいました。まとめた髪からほつれた、うなじの後れ毛がきれいな人でした。故国を亡くしたお姫さまが齢を重ねて生きながらえた――そのような風貌です。 そのおばあさんは日
←3‐2 宵の口がもう間近なったころ、海側の別荘では騒ぎになっている。家主である小松夫妻の子どもたちが、どこかへ出かけたまま帰ってこないのだ。これが事件事故なのか、あるいは幼さに任せた冒険のためなのか判然としなかった。 小松守安は使用人を下がらせて、夕暮れのバルコニーに妻の暁世を伴って出た。昂った神経を落ち着かせたかったのだ。また吹きすさぶ潮風が自分たちのみっともない、浅ましい部分を隠してくれると彼と彼女は信じていた。 夕焼けが赤く滲む水平線と、紺色の空を映しなが
時は九月。二百と六十年ぶりの潰滅事件で、世間は蜂の巣をつついたように姦しい。なにせ短期間に八体もの市民が再起不能にされたのだ。それも両手足の指を折り四肢切断した上でハードディスクを破壊――あるいはパートナー同士で凶器を持たせて相討ちをさせるなど、むごい方法で。こんなことが出来るのは魔法使いしかいない。とうの昔に絶滅したはずの存在が、今さら現れたのも驚きの一つだった。 でもまあ自分の身には、そう、ひどいことは起こらないだろうと高を括っていた。このときまでは。 「早よ開け
←3‐1 ※無理やり衣服を剥ぐ描写があります 世界中のすべての大地は神の死骸だと――そう信じられていた時代がある。天を突くほどの巨大な神の死体を礎に、様々な植物や生物が生まれたのだと。それはある意味では本当のことだ。 気が遠くなるような大昔、地球には原住民がいた。おそらく現代人がすればどこかで見たことのある、でも何かが違う奇妙な生き物たちだ。もったいぶらずに言ってしまえば、動物や虫たちの祖先なのだ。これらを駆逐して栄えたのが人類の先祖だ。 侵略のため、彼らは“英
←2‐2 赤江の談によれば、蘭二は二階の客室に寝かせているという。飲み物を持っていくついでにと、絢一郎(ジュンイチロウ)も一緒に部屋へ向かう。そして靴の裏で床が軋み、ときおりグラス同士がきいんと触れ合うさなか。美しく捩じれた木製の螺旋階段を昇りながら、ジュンイチロウは相手の背中に向けて口火を切る。 「すみません。休暇中に、おしかけてしまって」 「いいえ、ちっとも。どうせ暇していたんです」 「そんなに親しいんですか、弟とは」 「ええ。それは、もうね。友達です」 「彼にあな
神無月某日の朝、六時半。カメラを携えて駐車場で待ち構えていると、白とカーキの縞模様の軽トラが滑り込んできた。そうして訝し気な表情で、降車してきた久世さんに言う。お疲れ様です。 「なにごと? 会社から遠いし」 実は久世さんが担当する物件に、妙な噂があるじゃないですか。 「海際の別荘でしょ。で?」 どうにかして汚名を雪ぎたいと、家主さんと社長とで相談しまして。 「はい」そう返事をする久世さんに作業着を手渡す。 家主さんの力となるべく、我々設計士と建築士が! 現場に! 向か
←2‐1 もう少し休憩をとってから、今度は一緒に波打ち際で遊ぶ。そうして正午近くに別荘に帰る。玄関の敷居を跨ぐと迎えに出てきた母の暁世が、濡れネズミのジュンイチロウを見て眉をひそめた。シャツが若干透けていたのだ。もちろん上にタオルケットを羽織っている。けれど布の端かき合わせた合間から、わずかに肌の色が覗いていた。 「気をつけなさい。どこに人の目があるのかは、わからないんだから」 交代で汚れた脚や身体を洗い、使用人の作ったお昼ご飯を摂った。冷たいトマトスープと、チーズ
*犯罪行為(盗撮)の描写があるので閲覧注意 ←1 そうするつもりは蘭二には毛頭なかったし、けして自ら切り出しはしなかった。けれどもジュンイチロウが持つ目の不可思議さは、ほどなくして赤江に知られてしまう。言外の要求に従って渡した、ジュンイチロウのスナップショットから見抜かれた。 「幽霊を見る人の目だね」 幽霊を見る目。オウム返しでそう唱えた己の声の細さ、小ささを蘭二は今でもありありと思い出せる。相手から発せられた一言にはそうか、と信じ込んでしまいそうな力があったのだ
伊勢物語や源氏物語などで描かれるように、須磨は古い時代にはやんごとなき人々の流刑地とされていた。だが、同時に歌枕となるほどに風光明媚な土地柄でもある。在原行平など名だたる歌人が、この地に対して愛憎相半ばする名歌をいくつも残している。 そのような歴的な流れを引き継いでか、戦争前には保養地として、お金持ちたちの邸宅や別荘が軒を連ねていた。しかし戦中の空襲と戦後の改革で急激に数を減らし、近年のレジャー施設の開発でさらに淘汰されつつある。しかしまだ、前時代の匂いはいくらか残って
10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから大丈夫10月まで夏日だから
まだ暑いうちに夏らしいものを出したいなと思っているけれど、まだ、どうなるかわからない
新しい同人誌のPDFデータを公開しました。時代物か伝奇か区別がつかないものですが、かわいがってやってください。あと昨今の物価高をかんがみて他の作品を多少値下げしました 時の子どもたち/満洲の雪ホテル_PDF | 2月30日 https://feb30.booth.pm/items/3831598
こんにちは。ご機嫌はいかがですか。そうですか、よかった。 お話はすでに伺っています。いくつか物件を見て回っているとお聞きしましたが、これかなという候補はもう決まっています? わかりました。この家が、あなたのお眼鏡にかなえばといいのですが。 どうでしょう、屋根の色。壁の色。この緑色、僕は好きなんですけど、他の方からはちょっと暗いかもしれないと心配で。ありがとうございます。 じゃあ、さっそく家の内を見ていきましょうか。そこ、段差があるので気をつけて。では、こち……あっ――
前回 目が覚めたとはいえ、そのまますぐにタブノキを家に帰すわけにはいかない。きちんとダメージを受けた個所を修理しなければ、また同じ事象が起こりえる。そのためにはタブノキの機体内にある一定の領域を完全に封印しなければならない。それは修理と呼ぶよりも、もはや改修と言っていいだろう。くわえてタブノキは古い年式のバイオロイドなので、改修のためには相応の技術が必要になる。微妙で繊細な技術が。そしてすべての工程を終了するまでには長い時間がかかる。 だからタブノキが僕たちの家に帰っ